安倍元首相を撃った山上容疑者の母親は統一教会への高額献金で破産…それでも脱会しないワケ
「破綻されたこの家庭の諸事情は私どもも知りません。ただ、破綻されたことは知っています」
11日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長がこう話したのは、8日、近鉄大和西大寺駅前で応援演説中の安倍晋三元首相(享年67)を、自作の銃で殺害した山上徹也容疑者(41)の母親について。 山上容疑者は、1998年ごろ教団の正会員になった母親が多額の献金をしたことで02年に自己破産、これにより一家が離散したと供述。 《統一教会を日本に招き入れたのが岸信介元首相。だから(孫の)安倍氏を殺した》 山上容疑者は犯行動機についてもこのように供述しているが、当初は教団幹部を狙っていた。だが、目的達成が困難だったことから標的を安倍氏に切り替え、つけ狙っていたという。
■生活破綻しても、なぜ信仰続ける?
安倍氏と教団の関係は、祖父の岸伸介元首相の代までさかのぼる。安倍氏自身も教団の政治組織「国際勝共連合」の機関誌「世界思想」の表紙をたびたび飾っているほか、内閣官房長官時代の06年には、教団の関連団体「天宙平和連合(UPF)」の大会に祝電を送付。
昨年行われたUPFのオンライン集会ではトランプ前米大統領とともに演説を行い、教団創設者の故・文鮮明氏の後継教祖となった妻の韓鶴子氏に対して「敬意を評します」と発言している。
田中会長は安倍氏について、「会員として登録されたことも顧問になったこともない」と話すものの、教団との強いつながりが指摘されている。
山上容疑者の母親は02年に奈良地裁に自己破産を申し立てた後、しばらく教団から離れていた。だが、2~3年前から教団関係者と連絡をとるようになり、半年前から月に一度教団の行事に参加していたという。 不可解なのが、高額献金による破産で家族がバラバラになったにもかかわらず、母親が再び教団に復帰していた点だ。これについて、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士はこう言う。
「献金は破産するまでやるべきと教え込まれているので、破産してもなおやめないケースは多々確認できています」
90年代に社会問題化も本質はそのまま
90年代に、高額な壺や印鑑などを購入させるといった霊感商法の被害や、教団主催の合同結婚式で有名芸能人をはじめ多くの日本人が祝福結婚(マッチング)した問題が大きくクローズアップされた。世界基督教統一神霊協会(通称・統一教会)から教団名を変えた現在も、その本質は変わっていないと言う。
「かつては統一教会であることを明かさずに壺や印鑑を販売していましたが、今はそうではなく、信者に向けてこの世の悪い因縁を入れておくという天運石という壺などを販売していたりと、本質的には変わっていません」(渡辺弁護士)
教団は11日の会見で、「その後、このご家庭に高額献金を要求したかどうかという事実は、記録上一切残っておりません」と、破産後に山上容疑者の母親に高額献金を要求した形跡はないと話している。だが、渡辺弁護士によると、「破産した場合でも、親族からお金を借りたり、年金から献金させているケースもある」という。
かつて信者の中には、元新体操日本代表の山崎浩子さんや、タレント・作家の飯干景子さんなど、周囲の働きかけなどによって教団から脱会したケースもあるが……。事件後、山上容疑者の母親の消息は不明だが、破産や一家離散という事態に陥っても信仰をやめない信者は少なくないという。