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検察庁法改正の原点、黒川検事長定年延長の問題点  海渡雄一|2020年5月11日3:05PM  週刊金曜日オンライン

2020年05月16日 17時40分01秒 | 時事問題(日本)
政治・国際
       
【タグ】安倍晋三|森雅子|検察庁法|黒川弘務
       
       
海渡雄一|2020年5月11日3:05PM  週刊金曜日オンライン

首相官邸が前代未聞の暴挙に出た。東京高検の黒川弘務検事長の定年を半年延長したのだ。なぜなのか。黒川氏とも面識がある元日弁連事務総長が問題点を指摘する。(編注:検察庁法改正案の問題が急浮上したため、その原点である黒川氏の定年延長問題を批判する2月14日記事を無料公開します)

1日31日付で、東京高検検事長の黒川弘務氏(62歳)が閣議決定によって半年間任期が延長されることになった。黒川氏は2月7日で定年退官する予定だった。法務省は認証官である検事長が検察官の定年(63歳)を超えて勤務を続けた前例は承知しないとしている(2月4日付、社民党福島みずほ参議院議員への法務省の回答)。

この人事は、稲田伸夫検事総長(63歳)の後任に充てる目的と想定された。黒川氏は、かねてから菅義偉官房長官と懇意であり、政権の中枢に腐敗事件の捜査が及ばなくするための人事ではないかとの批判が強まった。

2月4日の衆議院予算委員会では、立憲民主党の本多平直議員は、黒川氏が報道等で「官邸の門番、官邸の代理人、官邸の用心棒」などと評価されており、
(1)小渕優子元経済産業大臣の政治資金規制法違反問題、
(2)甘利明元経済再生担当大臣のUR(都市再生機構)への口利き疑惑、
(3)下村博文元文科大臣の加計学園からパーティー費用として200万円を受け取った政治資金収支報告書不記載容疑、
(4)森友学園問題における佐川宣寿元国税庁長官などの不起訴処分と、
法務省の官房長や事務次官を務めていた黒川氏との関連を糺した。

森雅子法相は同氏の評判については「承知していない」、検察の仕事については「大臣として評価は控える」と答弁を避けた。
 
検事の定年延長は違法

検察庁法の22条は、検事総長は65歳、他の検事は63歳の誕生日に退官することを定めている。

森法相は1月31日午前の閣議後の会見で、黒川氏について「検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、引き続き勤務させることを決定した」と述べた。その法的な根拠は国家公務員法81条の3で、「その職員の職務(略)の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずる」場合にあたり、定年を延長したと説明した。

国家公務員にはもともと定年制度がなく、1985年に定年制が導入された。国家公務員法の定年制度は、他の「法律に別段の定めのある場合を除き」適用できると定められている(同法81条の2)。

この「別段の定め」の一つが検察庁法22条だ。検察官の定年は、誕生日に定年になり退官すると定めている。国家公務員法では「定年に達した日以後における最初の3月31日に」退職するとしている。

両者は全く違う制度なのである。検察官の定年については「検察庁法22条」だけが適用され、国家公務員法の定年の定めは適用されず、国家公務員法によって任期を延長することは明らかに違法である。

この法理は、元検察官である郷原信郎弁護士が指摘し、日本労働弁護団の常任幹事を務める渡辺輝人弁護士が、政府の有権解釈をまとめたと考えられる『逐条国家公務員法』にこれを裏付ける記載を発見した。この本には、「一般職の国家公務員については、原則的には本法に定める定年制度が適用されるが、従来から他の法律により定年制度が定められているものについては、その経緯等に鑑み、それぞれの法律による定年制度を適用しようとするものである。このようなものとしては、検察庁法第二二条による検事総長(六五歳)及び検察官(六三歳)の定年、(略)がある」とされている(692ページ)。
  
衆議院予算委員会で国民民主党渡辺周議員の質問に対して森法相は「検察官は、一般職の国家公務員であり、国家公務員法の勤務延長に関する規定が適用され」るという解釈を示した。

しかし、このような解釈が成り立たないことはこの逐条解説から明らかだ。
     
検察内部からも異論

雑誌『FACTA』1月号によれば、稲田氏は法務事務次官だった16年夏、刑事局長の林真琴氏を自分の後任に、官房長の黒川氏を地方の検事長へ異動させる人事案を官邸に上げたが黒川氏を事務次官にするよう強く求められ、押し切られた。官邸は1年後にも林氏を事務次官とする人事を潰し、黒川氏を留任させたそうだ。

検察庁は行政機関であり、国家公務員法の規定に基づいて、その最高の長である法務大臣は、検察官に対して指揮命令ができる。しかし、検察庁法14条は、法務大臣の検察官への一般的指揮権は認めているが、具体的事件については、検事総長のみを指揮することができると定めている。

『FACTA』が述べているとおり、次期検事総長に関する検察庁と稲田検事総長の意見が林氏に固まっていたことは明らかだ。検事総長の任命権者は内閣ではあるが、歴代の自民党政権は、検察庁とりわけ前任の検事総長の意見を尊重し、これに介入するようなことは厳に慎んできた。その秩序が壊されようとしているのだ。

『週刊朝日オンライン限定記事』の「事実上、安倍政権の指揮権発動、法曹界が黒川検事長の定年延長に反発」(今西憲之氏、2月4日)は、黒川氏の任期延長について、自民党のベテラン議員、元高検検事長経験者の弁護士、検察庁内部の現職検事から異論が出ていることを生々しく報告している。

〈黒川氏の先輩にあたる高検検事長経験者の弁護士は怒りをあらわにする。
「定年を延長して、検事総長でしょう。こんなこと聞いたことがない、前例もない。そこまで、政治権力と黒川君は癒着しているのか。見苦しい」
 「これは安倍政権の指揮権発動と同等だよ。官邸が黒川氏を検事総長にしろと命令しているようなものだ。官邸、政治権力が検察の人事に口出しすることは本来ならあり得ない」〉

〈ある現役検事も驚きを隠せなかった。
「青天の霹靂ですよ。(中略)延長の理由は逃亡した日産自動車のカルロス・ゴーン被告の対応と説明しています。しかし、ゴーン被告は東京地検特捜部の担当で、東京高検は関係ない。レバノン政府など海外の交渉は、法務省が対応。東京高検が一体、これまで何をしてきたのかと非難轟々です」
「検察内では、官邸のあまりにひどいやり口に、稲田検事総長に頑張れという声が高まっている。官邸に逆襲するためにバンバン、事件をやって検察の威信を見せつけるべきだという人も多い〉
 状況だ。

このように、検察と司法の危機は白日の下にさらされ、検察と与党の内部からまで異論が続出している。黒川氏が検事総長に任命されても、その職務を全うすることはむつかしいだろう。それでも、官邸はこのまま黒川氏の検事総長任命まで突き進むのだろうか。

内閣が違法な定年延長を撤回するか、黒川氏が当初の定年のとおり辞職する解決策が最も穏当だろう。この問題は、日本の司法と民主主義の未来がかかった闘いだ。もし、政権も、黒川氏もこのような解決に応じないとすれば、検察の独立を守るために、心ある検察官、与野党の政治家、メディアとともに一大国民運動を作り上げる以外にないだろう。
(海渡雄一・弁護士。2020年2月14日号)

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