山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
ファイザー社製のワクチンは安全でしょうか?
2021/3/10
2月12日のアメリカ医師会誌の論文(査読後)では、12月14日から1月18日までに行われたファイザー社製ワクチン約1000万回、モデルナ社製ワクチン約750万回の接種において、アナフィラキシーと呼ばれる強いアレルギー反応はファイザー社製が100万回に4.7回、モデルナ社製は100万回に2.5回と、非常に少ない頻度で報告されています。アナフィラキシーが起こった人の94%は女性、77%は過去にアレルギー反応の既往がありました。76%は接種後15分以内、89%は30分以内に発症しています。そして、全例とも適切な治療により速やかに回復されています。この報告ではアメリカ疾患対策センター(CDC)に報告があったケースのみが報告されています。
一方、3月8日に報告された別の論文
Acute Allergic Reactions to mRNA COVID-19 Vaccines | Allergy and Clinical Immunology | JAMA | JAMA Network
ではアメリカボストンの2つの有力病院(マサチューセッツ総合病院およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院)の医療従事者約6万5千人に対して行われた1回目の接種(6割がファイザー社製、4割がモデルナ社製)において、接種3日後において副反応の有無を調査しています。これによると接種部位以外の発赤、痒み、蕁麻疹といったアレルギー反応は約2%で認められ、全身性の蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下といったアナフィラキシーは16名に発生しました。このうち15名は女性、10名はアレルギーの既往、5名はアナフィラキシーの既往がありました。接種からアナフィラキシー発生までの時間は1から120分で、平均17分でした。9名はエピネフリンの投与を受け、1名はICUに入院しました。全員が回復しました。
本報告におけるアナフィラキシーの発生頻度は1万回に2.47人回と、上記のCDCの報告よりも高い頻度で発生しています。しかし、この頻度は他の薬剤、例えば造影剤に対するアナフィラキシー発生頻度(Anaphylaxis to Iodinated Contrast Media: Clinical Characteristics Related with Development of Anaphylactic Shock (plos.org))と同程度で、稀な現象であるとしています。
このようにアナフィラキシーは稀に起こりますが、治療法が確立しています。接種後に15分から30分程度、緊急対応の出来る場所で経過観察を行えば、安心です。
より軽微な副反応の頻度については臨床試験の結果(New England Journal of Medicine誌の査読後論文)によると、接種部位の疼痛が66~83%に、倦怠感が34~59%に、頭痛が25~52%に、筋肉痛が14~37%に、関節痛が9~22%に、悪寒が6~35%に、発熱が1~16%に報告されています。年齢でみると55歳以下が56歳以上より、接種回数で見ると2回目が1回目より、それぞれ副反応の頻度が高い傾向にありました。
実際に接種を開始したアメリカで、最初の1か月の副反応をまとめたCDCの報告(査読無し)でも同様の結果が報告されています。同報告によると、軽微な副反応は接種の翌日に最も頻度が多く、1回目接種においては、接種部位の疼痛が約70%、倦怠感、頭痛、筋肉痛が約20%に、悪寒が約5%に報告されています。2回目接種においては、接種部位の疼痛は約80%に、倦怠感、頭痛、筋肉痛が約50%に、悪寒が約30%に報告されています。ほとんどの場合、1週間以内に消失しています。