東京新聞 2022年12月31日付社説
「おおみそかに考える 「戦」のない年にしたい」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/222983?rct=editorial
大みそかを迎えました。
読者の皆さんは、どんな一年を過ごされたことでしょう。
約3年前に始まった新型コロナウイルス感染拡大の勢いは収まるところを知らず、
私たちの暮らしに暗い影を落とし続けています。
世界を見渡すと、ロシアのウクライナ侵攻が続き、
多くの人が犠牲となったり、今も苦しんだりしています。
侵攻はエネルギー価格を高騰させ、
日本では円安とともに物価や光熱費の上昇を招き、私たちの暮らしを苦しめています。
安倍晋三元首相が7月の参院選の街頭演説中に銃撃され、亡くなったことも衝撃でした。
日本漢字能力検定協会が毎年公募している一年の世相を表す「今年の漢字」で、
今年一番多かったのが「戦」(いくさ)です。
日本代表が強豪国のドイツやスペインを破って16強に進んだサッカーのワールドカップ(W杯)や、
大谷翔平、村上宗隆両選手ら野球界での記録挑戦など、
明るい話題の「戦」もありました。
しかし「戦」からはやはり、ウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐミサイル発射、
円安や原油価格高騰に伴う物価高との「戦」いを思い浮かべます。
新型コロナとも、長く苦しい「戦」いでしょうか。
◆ウクライナ侵攻の余波
さて、今年のはじめに掲載した「論説特集」を覚えている読者もいらっしゃると思います。
日々の社説を執筆する論説委員を顔写真付きで紹介したものですが、
今年は昨年までとは趣向を変えて、漢字一文字に思いを込め、自己紹介してもらいました。
その漢字を順不同で紹介すると
「波」「信」「主」「変」
「上」「縁」「人」「光」
「癒」「解」「触」「声」
「選」「創」「究」「話」
「戻」「志」「再」「投」
「命」「考」「働」。
このうち「今年の漢字」の二十位以内に「命」と「変」が入っていました。
論説委員は、上位に入りそうな漢字を予測したわけではありませんでしたが、
「戦」がちまたにあふれ、
人々の「命」の大切さや「変」化を胸に刻む一年だったのかもしれません。
多くの人が「戦」を選んだように、
今年はやはり、ロシアのウクライナ侵攻に代表される戦争の年でした。
その余波は、日本に住む私たちにも襲いかかります。
敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増など
安全保障政策の抜本的な見直しです。
戦後日本は戦争放棄と戦力不保持の憲法9条に基づく専守防衛に徹し、
他国に軍事的脅威を与えるような軍事大国になることを厳しく戒めてきました。
戦争の反省に基づく平和国家の歩みです。
敵基地攻撃能力についても、敵のミサイル発射を阻止するため、
発射基地などへの攻撃自体は憲法が認める自衛の範囲内としつつ、
そうした攻撃が可能な兵器を平素から備えることは「憲法の趣旨ではない」と否定してきました。
敵基地攻撃能力の保有論は、自民党を中心に以前からありましたが、
一気に進んだのはウクライナ侵攻の影響にほかなりません。
ウクライナのように侵略されないためには、
日本攻撃を思いとどまらせる抑止力が必要で、敵の基地を攻撃できる長距離巡航ミサイルなどを保有することがその抑止力になり得る、と。
それだけではありません。
岸田文雄政権は、防衛費を関連予算と合わせて
2027年度に国内総生産(GDP)比2%に引き上げることを決めました。
2022年度防衛費の5兆4,000億円は約1%ですからほぼ倍増。
2027年度には約11兆円になる見通しです。
財源は実施時期は未定ながら所得税や法人税、たばこ税の増税。
暮らしへの影響は必至です。
◆角突き合わせていると
こうした日本の動きに周辺国から懸念が示されています。
中国の軍備増強はもちろん看過できませんが、
そもそも敵基地攻撃能力保有による抑止効果は不透明で、
防衛力の増強は逆に緊張を高め、軍拡競争が加速する「安全保障のジレンマ」に陥りかねません。
お互いが角を突き合わせていれば、何かのきっかけで本格的な軍事衝突に発展する恐れもあります。
「戦争の足音が聞こえる」は決して誇張ではないのです。
さて来年の「今年の漢字」には何が選ばれるのでしょうか。
ウクライナをはじめとする紛争の地で停戦が実現し、
すべての人々に平穏な暮らしが訪れる。
そう願わずにはいられない年の暮れです。
----------------------------
「「結局また焼け野原にならんとわからんのかな」が口癖だった戦争体験者の老父が、
最近は「今度焼け野原になったら、
前の戦争の時みたいに立ち直ることは不可能ってことがなんでわからんのかな」
と言う様になった。
本当にその通りだよ。
#新しい戦前にしないことは私たちの責任
はな さんのツイートより。(2023年1月1日付)
激しく賛同いたします。
1945年の敗戦はアメリカだったから
まだ民主主義で多くの犠牲者のうえに「日本国憲法」が生まれた。
もし今度敵に回す国を想定すると、たぶん北朝鮮か?
大ヒットした映画「トップガン マーヴェリック」を観たが、
感想は正直「良くも悪くも“アメリカ映画”だな」という事。
物語後半は敵国基地を攻撃するのだが、
かの国にも「民」が存在することや、
攻撃された国がアメリカ本土へ報復攻撃することは想像できないのか?
・・・ものすごく複雑な気分になった。
おそらくこれを見た日本人の官民の多くが
“自分たちもこれと同じように展開できる”
なんて思っているのだろう。
だが、北朝鮮の後ろにいるのは、あの中国とロシア。
「日本にやられた、助けてくれ」となった途端、
当然黙っていないだろう。
そうなれば「真珠湾攻撃から敗戦」のルートは必至だ。
しかも、今度の占領がかの国なら、まちがいなく復興は不可能だ。
「シベリア抑留」や今なお続く「チベット自治区・新疆ウイグル自治区」の民族問題のように
徹底的な弾圧と子供への思想教育の餌食となるだろう。
まるで“日本人”なんて無くなるまでに。
そんなこともわからないのか?
あの地獄を見てきたからこそ
何百万人が犠牲になったからこそ
二度と戦争をしてはならないと誓った「日本国憲法」が生まれたのだ。
それを活かす気のない人間は、
為政者・評論家・教員なんかになってはいけないのだ。
「おおみそかに考える 「戦」のない年にしたい」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/222983?rct=editorial
大みそかを迎えました。
読者の皆さんは、どんな一年を過ごされたことでしょう。
約3年前に始まった新型コロナウイルス感染拡大の勢いは収まるところを知らず、
私たちの暮らしに暗い影を落とし続けています。
世界を見渡すと、ロシアのウクライナ侵攻が続き、
多くの人が犠牲となったり、今も苦しんだりしています。
侵攻はエネルギー価格を高騰させ、
日本では円安とともに物価や光熱費の上昇を招き、私たちの暮らしを苦しめています。
安倍晋三元首相が7月の参院選の街頭演説中に銃撃され、亡くなったことも衝撃でした。
日本漢字能力検定協会が毎年公募している一年の世相を表す「今年の漢字」で、
今年一番多かったのが「戦」(いくさ)です。
日本代表が強豪国のドイツやスペインを破って16強に進んだサッカーのワールドカップ(W杯)や、
大谷翔平、村上宗隆両選手ら野球界での記録挑戦など、
明るい話題の「戦」もありました。
しかし「戦」からはやはり、ウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐミサイル発射、
円安や原油価格高騰に伴う物価高との「戦」いを思い浮かべます。
新型コロナとも、長く苦しい「戦」いでしょうか。
◆ウクライナ侵攻の余波
さて、今年のはじめに掲載した「論説特集」を覚えている読者もいらっしゃると思います。
日々の社説を執筆する論説委員を顔写真付きで紹介したものですが、
今年は昨年までとは趣向を変えて、漢字一文字に思いを込め、自己紹介してもらいました。
その漢字を順不同で紹介すると
「波」「信」「主」「変」
「上」「縁」「人」「光」
「癒」「解」「触」「声」
「選」「創」「究」「話」
「戻」「志」「再」「投」
「命」「考」「働」。
このうち「今年の漢字」の二十位以内に「命」と「変」が入っていました。
論説委員は、上位に入りそうな漢字を予測したわけではありませんでしたが、
「戦」がちまたにあふれ、
人々の「命」の大切さや「変」化を胸に刻む一年だったのかもしれません。
多くの人が「戦」を選んだように、
今年はやはり、ロシアのウクライナ侵攻に代表される戦争の年でした。
その余波は、日本に住む私たちにも襲いかかります。
敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増など
安全保障政策の抜本的な見直しです。
戦後日本は戦争放棄と戦力不保持の憲法9条に基づく専守防衛に徹し、
他国に軍事的脅威を与えるような軍事大国になることを厳しく戒めてきました。
戦争の反省に基づく平和国家の歩みです。
敵基地攻撃能力についても、敵のミサイル発射を阻止するため、
発射基地などへの攻撃自体は憲法が認める自衛の範囲内としつつ、
そうした攻撃が可能な兵器を平素から備えることは「憲法の趣旨ではない」と否定してきました。
敵基地攻撃能力の保有論は、自民党を中心に以前からありましたが、
一気に進んだのはウクライナ侵攻の影響にほかなりません。
ウクライナのように侵略されないためには、
日本攻撃を思いとどまらせる抑止力が必要で、敵の基地を攻撃できる長距離巡航ミサイルなどを保有することがその抑止力になり得る、と。
それだけではありません。
岸田文雄政権は、防衛費を関連予算と合わせて
2027年度に国内総生産(GDP)比2%に引き上げることを決めました。
2022年度防衛費の5兆4,000億円は約1%ですからほぼ倍増。
2027年度には約11兆円になる見通しです。
財源は実施時期は未定ながら所得税や法人税、たばこ税の増税。
暮らしへの影響は必至です。
◆角突き合わせていると
こうした日本の動きに周辺国から懸念が示されています。
中国の軍備増強はもちろん看過できませんが、
そもそも敵基地攻撃能力保有による抑止効果は不透明で、
防衛力の増強は逆に緊張を高め、軍拡競争が加速する「安全保障のジレンマ」に陥りかねません。
お互いが角を突き合わせていれば、何かのきっかけで本格的な軍事衝突に発展する恐れもあります。
「戦争の足音が聞こえる」は決して誇張ではないのです。
さて来年の「今年の漢字」には何が選ばれるのでしょうか。
ウクライナをはじめとする紛争の地で停戦が実現し、
すべての人々に平穏な暮らしが訪れる。
そう願わずにはいられない年の暮れです。
----------------------------
「「結局また焼け野原にならんとわからんのかな」が口癖だった戦争体験者の老父が、
最近は「今度焼け野原になったら、
前の戦争の時みたいに立ち直ることは不可能ってことがなんでわからんのかな」
と言う様になった。
本当にその通りだよ。
#新しい戦前にしないことは私たちの責任
はな さんのツイートより。(2023年1月1日付)
激しく賛同いたします。
1945年の敗戦はアメリカだったから
まだ民主主義で多くの犠牲者のうえに「日本国憲法」が生まれた。
もし今度敵に回す国を想定すると、たぶん北朝鮮か?
大ヒットした映画「トップガン マーヴェリック」を観たが、
感想は正直「良くも悪くも“アメリカ映画”だな」という事。
物語後半は敵国基地を攻撃するのだが、
かの国にも「民」が存在することや、
攻撃された国がアメリカ本土へ報復攻撃することは想像できないのか?
・・・ものすごく複雑な気分になった。
おそらくこれを見た日本人の官民の多くが
“自分たちもこれと同じように展開できる”
なんて思っているのだろう。
だが、北朝鮮の後ろにいるのは、あの中国とロシア。
「日本にやられた、助けてくれ」となった途端、
当然黙っていないだろう。
そうなれば「真珠湾攻撃から敗戦」のルートは必至だ。
しかも、今度の占領がかの国なら、まちがいなく復興は不可能だ。
「シベリア抑留」や今なお続く「チベット自治区・新疆ウイグル自治区」の民族問題のように
徹底的な弾圧と子供への思想教育の餌食となるだろう。
まるで“日本人”なんて無くなるまでに。
そんなこともわからないのか?
あの地獄を見てきたからこそ
何百万人が犠牲になったからこそ
二度と戦争をしてはならないと誓った「日本国憲法」が生まれたのだ。
それを活かす気のない人間は、
為政者・評論家・教員なんかになってはいけないのだ。