蛇口屋がまだこの世界に入り立ての頃、やはり周りには第一線級の現場でバリバリで働く先輩達がいました。
この辺は、どのような仕事の社会でも当たり前の事ですが、蛇口屋もまたそんな先輩達から、仕事を教えて貰ったり、覚えたり、またある時は盗んだりしていました。
もちろん、先輩の中にはいい人もいれば悪い人もいて、今も付き合って人もいれば、ほんの僅かな出会いの人もいます。
良くにつけ悪くにつけ、今の蛇口屋があるのは、そんなかつての先輩達のおかげだと今更ながら思う今日この頃です。
そんなエピソードの中から、今を持っても答えのでない一つの出来事を、ここで書いてみようと思いました。
皆さんはどう思われます?
一つのパッキンが産んだ出来事です。
かつて蛇口屋は大きな水道屋さんで働いていました。
その時の仕事は、各お宅を回って、水道メーターの交換の手伝いで、一人の先輩についていました。
当然、住宅内へ入り込む水の元の元を止めてしまうのですから、家の中は短い時間とはいえ断水になります。事前に告知して、さらに交換する際には住人の方に声をかけて、仕事を進めていました。
すると、水道屋さんがやって来たと、ついでにと仕事を頼む方もいます。
水道メーターの交換は、水道局の依頼で行う工事です。なので、少しだけと頼まれる仕事は、その範疇からはみ出てしまいます。だから、水道局を通さずに、個別に頼まれた仕事として会社で請け負ってゆきます。
混合栓の交換や、簡単な配管の修理。
会社にとって良い稼ぎになります。
でも、中には、こんな事でお金は貰えないよな、っていう物もあります。
少しだけ水が漏れている蛇口の頭を、モンキーで少し回すだけ、とか、ロータンクの浮き球の角度を直したり、なんて、ほんの数秒もあれば終わってしまうことですので、お金を頂かずに、サービスしていました。
そんな中、一件のお宅で、蛇口を閉めても、ポタ、ポタ…と水が出てしまう、しまりの悪い蛇口を直してと言われました。
当時の蛇口屋は、簡単にパッキン交換だという認識がありました。
パッキンとはいえ、材料がかかる以上は、会社としてもも利益をとらないといけません、有料ですよ、と、蛇口屋はお客さんに言いました。
もちろんお客さんも、タダでとは思っていませんでした。
すると、その時、一緒にいた先輩は、「良い方法がある」
と、なんと、材料も使わずに、その蛇口を修理してしまいました。
種明かしをすれば、パッキンを裏返しにして使ったんです。
その箇所は、コマパッキンと言われる箇所で、漏れの原因となっていた箇所は、丁度、水を出し、水を止める、の働きをする箇所が、金属と接している箇所がすり減っていたんです。
だから、ひっくり返せば、その箇所は表面的には新品同様です。
その時も、直ぐに水は止まりました。
凄い技術があるなぁ…と当時の蛇口屋はただ関心するばかりでした。
それから何年かたって、蛇口屋も、その先輩と同じ事をする機会に恵まれました。もちろん試してみました。
新品同様の効果を上げて、蛇口は水が止まるようになりました。
お客さんも喜んで、蛇口屋も覚えた知識の効果に自慢げでした。
しかし、その効果を試してから数日後、お客さんから会社に電話が入りました。
蛇口から水が止まらなくなった!
蛇口屋が、その蛇口を分解すると、コマパッキンがちぎれていて、パッキンの役割を果たしていませんでした。
どうして?
数日前にはあれほど自慢げにひけらかした、先輩から貰った技術が、今は蛇口屋を窮地に追い込んでいます。
そしてよく考えたのです。
裏返したパッキンは、表面的には新品同様ですが、すり減ってパッキンとしての効果がない箇所が、残った皮一枚のパッキンとして、蛇口の金属に触れていることを思い出しました。
ハンドルを回して押しつけられるゴムパッキンの裏側は、使い込まれ、すり減っていて、いつちぎれても不思議はない状況だったんです。
止められない水は怖い物です。
その場では良いかもしれないけど、長いスパンで考えた場合、多少お金がかかっても、新しい部品を使って行うべきだったんです。
先輩の行った処置は、応急処置。
お客さんの求めていた物は修理。
応急処置と、修理。
似ているようで、全く処置としては種類は異なります。
応急処置は、緊急を要する、ひとまず型式を整える物であって、永久性はないもので、修理はその逆で、お客さんが安心をするために行われる物である、と蛇口屋は思うんです。
でもだからといって、その時に先輩の行った行為自体が浅はかで、配慮の足りない物だと決めつけるには至りません。
タダの修理としては相応しいんじゃあないかって、考えもあるからです。
一円には一円の、一万円には一万円の修理があって、あのとき、蛇口屋が「有料です」と行った方向も示しているから、結局選ぶのはお客さんなんだと、そういう風にも考えられるからです。
正直言って、今も答えのでない事件の一つです。
今では、まるで娯楽のように、記憶の隅から引っ張り出しては考えて見る蛇口屋です。
もっと沢山の現場や状況を経験して、これからもじっくりと考えて行こうかと思います。
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この辺は、どのような仕事の社会でも当たり前の事ですが、蛇口屋もまたそんな先輩達から、仕事を教えて貰ったり、覚えたり、またある時は盗んだりしていました。
もちろん、先輩の中にはいい人もいれば悪い人もいて、今も付き合って人もいれば、ほんの僅かな出会いの人もいます。
良くにつけ悪くにつけ、今の蛇口屋があるのは、そんなかつての先輩達のおかげだと今更ながら思う今日この頃です。
そんなエピソードの中から、今を持っても答えのでない一つの出来事を、ここで書いてみようと思いました。
皆さんはどう思われます?
一つのパッキンが産んだ出来事です。
かつて蛇口屋は大きな水道屋さんで働いていました。
その時の仕事は、各お宅を回って、水道メーターの交換の手伝いで、一人の先輩についていました。
当然、住宅内へ入り込む水の元の元を止めてしまうのですから、家の中は短い時間とはいえ断水になります。事前に告知して、さらに交換する際には住人の方に声をかけて、仕事を進めていました。
すると、水道屋さんがやって来たと、ついでにと仕事を頼む方もいます。
水道メーターの交換は、水道局の依頼で行う工事です。なので、少しだけと頼まれる仕事は、その範疇からはみ出てしまいます。だから、水道局を通さずに、個別に頼まれた仕事として会社で請け負ってゆきます。
混合栓の交換や、簡単な配管の修理。
会社にとって良い稼ぎになります。
でも、中には、こんな事でお金は貰えないよな、っていう物もあります。
少しだけ水が漏れている蛇口の頭を、モンキーで少し回すだけ、とか、ロータンクの浮き球の角度を直したり、なんて、ほんの数秒もあれば終わってしまうことですので、お金を頂かずに、サービスしていました。
そんな中、一件のお宅で、蛇口を閉めても、ポタ、ポタ…と水が出てしまう、しまりの悪い蛇口を直してと言われました。
当時の蛇口屋は、簡単にパッキン交換だという認識がありました。
パッキンとはいえ、材料がかかる以上は、会社としてもも利益をとらないといけません、有料ですよ、と、蛇口屋はお客さんに言いました。
もちろんお客さんも、タダでとは思っていませんでした。
すると、その時、一緒にいた先輩は、「良い方法がある」
と、なんと、材料も使わずに、その蛇口を修理してしまいました。
種明かしをすれば、パッキンを裏返しにして使ったんです。
その箇所は、コマパッキンと言われる箇所で、漏れの原因となっていた箇所は、丁度、水を出し、水を止める、の働きをする箇所が、金属と接している箇所がすり減っていたんです。
だから、ひっくり返せば、その箇所は表面的には新品同様です。
その時も、直ぐに水は止まりました。
凄い技術があるなぁ…と当時の蛇口屋はただ関心するばかりでした。
それから何年かたって、蛇口屋も、その先輩と同じ事をする機会に恵まれました。もちろん試してみました。
新品同様の効果を上げて、蛇口は水が止まるようになりました。
お客さんも喜んで、蛇口屋も覚えた知識の効果に自慢げでした。
しかし、その効果を試してから数日後、お客さんから会社に電話が入りました。
蛇口から水が止まらなくなった!
蛇口屋が、その蛇口を分解すると、コマパッキンがちぎれていて、パッキンの役割を果たしていませんでした。
どうして?
数日前にはあれほど自慢げにひけらかした、先輩から貰った技術が、今は蛇口屋を窮地に追い込んでいます。
そしてよく考えたのです。
裏返したパッキンは、表面的には新品同様ですが、すり減ってパッキンとしての効果がない箇所が、残った皮一枚のパッキンとして、蛇口の金属に触れていることを思い出しました。
ハンドルを回して押しつけられるゴムパッキンの裏側は、使い込まれ、すり減っていて、いつちぎれても不思議はない状況だったんです。
止められない水は怖い物です。
その場では良いかもしれないけど、長いスパンで考えた場合、多少お金がかかっても、新しい部品を使って行うべきだったんです。
先輩の行った処置は、応急処置。
お客さんの求めていた物は修理。
応急処置と、修理。
似ているようで、全く処置としては種類は異なります。
応急処置は、緊急を要する、ひとまず型式を整える物であって、永久性はないもので、修理はその逆で、お客さんが安心をするために行われる物である、と蛇口屋は思うんです。
でもだからといって、その時に先輩の行った行為自体が浅はかで、配慮の足りない物だと決めつけるには至りません。
タダの修理としては相応しいんじゃあないかって、考えもあるからです。
一円には一円の、一万円には一万円の修理があって、あのとき、蛇口屋が「有料です」と行った方向も示しているから、結局選ぶのはお客さんなんだと、そういう風にも考えられるからです。
正直言って、今も答えのでない事件の一つです。
今では、まるで娯楽のように、記憶の隅から引っ張り出しては考えて見る蛇口屋です。
もっと沢山の現場や状況を経験して、これからもじっくりと考えて行こうかと思います。
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ご自分でパッキン交換出来るなんて凄いですね。
そうですか、ボロッと行ってしまいましたか。
あの箇所、パッキンを固定しているナット(メーカーによってはプラスのネジもあります)を外すのは、蛇口屋のような、なれている人間でも緊張はしてますよ、脱亜鉛現象というよりは、あの部品自体が、水には強いんですが、力に対してはそんなに強くは作られていなくて、ネジの頭を潰したりもいでしまったり、なんてしょっちゅうです。
蛇口屋も駆け出しの頃はよくやってました。
もうこうなると、蛇口を交換するしかないですね。
スピンドルがメーカから到着する時間を待ってくれるお客さんってあまりいませんから。