柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

雨と頭痛で目を覚ます。

2014年10月22日 10時19分06秒 | 日記
それにしても、『創』篠田博之編集長から昨日届いたメールの言い草は、ひどい。ひど過ぎて、一夜明けた今朝も頭がくらくらする。

「柳さん、全てのケースにおいて400字詰め何枚という言い方をするということ今は常識ではないと思います。特に文芸誌以外では原稿用紙に原稿を書く人はほぼ皆無で、400字云々という言い方自体、あまりしなくなっています。ですから『3枚5万円』とは言っていないと思いますが、私がどういう状況でどんなふうに言ったということなのでしょうか」「『創』だけが出版界の常識からずれているということはないと思います」

って、さぁ--、篠田さん、『マスコミ就職読本』とかいう本を毎年出してるのに、マスコミ(紙メディア)の実情、知らなさ過ぎ!

わたしは25年間文芸誌以外の様々な媒体で原稿を書き、物書きとしては、たぶん書いた媒体は多い方だと思うけど(今日のできごと:2014年10月21日 23時15分55秒に投稿したブログに柳美里が原稿を書いた掲載紙・誌を列挙しました)、支払は400字詰め原稿用紙1枚いくらとして振り込まれています。

「原稿用紙に原稿を書く人はほぼ皆無で」って、当たり前じゃないですか!

わたしだって、手書きで書いて原稿用紙を編集者に手渡しする、なんてしたことありませんよ!
なに時代の話ですか!

(文学館から展示原稿として、原稿用紙に手書きで書いてほしい、と依頼されて書いたことは何度かあります。あと、筆跡も含めて掲載する原稿を依頼されたときも、書いたっけ……)

しかし、依頼は25年間変わらず、400字詰め原稿用紙何枚(あるいは、文字数。□□字×△△行という依頼もある)で来るし、支払いは原稿用紙1枚いくらの計算なのです。
ですから、パソコンで原稿を書く場合にワードの設定を「縦書き」「20字×20行」にしているのですよ。

わたしは、1ページいくら、とか、1本いくら、で原稿を依頼されたことは一度もないし、篠田さんもそんな「非常識な依頼」はしませんでした。

今になって、原稿用紙換算で未払金を算出すると金額が高くなるなぁ、と無い知恵を絞って、苦し紛れに「原稿用紙に原稿を書く人はほぼ皆無」なんて意味不明なことを言い出し、未払金を値切ろうとしているんですよね?
10月16日のメールに書いてあった「柳さんとは長いおつきあいだし、表現者として尊敬している人なので、誠意をもって対応するつもりです」って、いったい、どの対応に「誠意」があると言うんですか、篠田さん!

もはや、篠田さんのケチは、芸の域に達していて、笑いすらこみあげてきます。

篠田さん、映画としての出来はイマイチだけど、『大阪物語』を、是非、観てみてください。
(クランクイン間近まで至りながら、溝口健二の急逝により、吉村公三郎監督によって撮られた井原西鶴原作の映画。貧しい農家の男が一代で商人として財を成すが、ケチによって発狂する物語。出演は、中村鴈治郎、浪花千栄子、市川雷蔵、香川京子、勝新太郎、中村玉緒、三益愛子)

落語の「大工調べ」や「黄金餅」なんかも、篠田さん、聴いてみてください。

「倹約と吝嗇とは違いますな。吝嗇を倹約と間違えちゃう人がある。こういう人はッてえと、もう、何かほしくッてしょうがない。もう出すてえことは絶対にいやなン、入ることばかり考えてる。だからこういう人は棘なんぞさしたって抜かない。(略)出さないことは夥しい、『もう出すのはいやですよ。本当ならもう、息を出すのもいやなんだけども、出さなきゃ苦しいから少ゥし出しとこう』……ひどいのがあるもんですな」(古今亭志ん生「黄金餅」)

自分に対するケチは「倹約」と言い換えることもできるけれど、他人に対する「吝嗇」は人間関係だけではなく、身を滅ぼしますよ。

もゥ、篠田さぁん……
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