「手編みのマフラー」
外出の際にネックウォーマーに首を通す度に思い出す体験が有ります。
大学三年の晩秋、私は学園祭の野外ステージのメインスタッフとして、舞台設営や照明機器の設営を担当していました。設営日の野外はかなり冷え込み、汗が直ぐに冷たく体を冷やして風邪をひいてしまいそうでした。
そんな時、ふと女性の声に呼び掛けられ、振り返ると演劇部在籍中に同学年だった女性が紙袋を持って立っているのを見付けました。
その女性は、私に持っていた紙袋を差し出し「誕生日には間に合わなかったけど、良かったら使って」と言いました。私が紙袋の中を覗くと、手編みの白いマフラーが入っていました…(続く)