漫トラ日記

現実生活空間&脳内妄想空間を日々マンガに浸食される主婦の怠惰な日常

イブとアダムの物語

2007年06月07日 20時44分41秒 | 
さて、次の記事を何にしようか色々考えたんですが
最近読んで一番印象に残った本にしました。
残念ながらマンガを期待してた人たちには、ごめんなさいです~


遺伝学の本です。
でも、そんなに(まぁ少しは。。。)難しくありません。
それより、へぇ~~!へぇ~~!?ってな記述がいっぱいあって
下手なSFより面白いのです!

著者のブライアン・サイクスというお方は、
イギリス・オックスフォードの人類遺伝学の教授でミトコンドリアDNA研究の第一人者。

その研究成果を一般向けに分かりやすく書き下ろしたのが
写真左側、第一作目の「イブの七人の娘たち」です。

話は、サイクス教授たちが
1991年にアルプスで発見された5千年前の男性のDNAを調べる所から始まります。
その結果、
何と!
5千年前のこの男と現代に生きる一人のイギリス人女性が親戚関係にある
ことが分かったのです!

その調査に使われたのがミトコンドリアDNA(長いので次からMDNA)。
母方からしか伝わないDNAです。

DNAって次の世代にコピーされて受け継がれていくんだけど
たま~に突然変異を起こすことがあるって知ってました?
しかも、その突然変異の頻度がこれまでの研究で分かってきてるらしいのです。
だから、それぞれのDNAを比べてその違いを比べると、
どのくらい前のご先祖なのか、
そして、どれくらい前に血縁が枝分かれしたかを追跡する事が可能なんですよ!

数多あるDNAの中でも特にミトコンドリアDNAを調べていけば
人類の母方のご先祖様に遡れるって事なんです。
で、そのMDNAを追跡していくと
15万年前にアフリカで生きた一人の女性に行き着くのです~!

その女性がミトコンドリア・イブ!

すごいと思いません!?

私たちはみんな親戚なのです!

人類みな兄弟!

肌の色や国・言葉・習慣で差別することの何とバカバカしいこと!
ご先祖様はみ~んな肌が黒かったのですから~!


サイクス教授はこの研究に刺激を受け、
ポリネシア人のMDNAを調べて、そのルーツがアジアにある(南米起源説もあった)事を証明します。

その後、彼は自分のご先祖であるヨーロッパ人のルーツに取り掛かります。
その結果、ヨーロッパ人には七人の母がいることを
そして、いつ(4万5千年前~1万年前)、どのルートでヨーロッパへやってきたかを解明したのです!

ここで、サイクス教授のすばらしい所は
彼女たちに名前を与え(アースラとかジニアとか)、
実在の人物として(確かに生きていたんだけど)生き生きと描写した事です!

そのため、読者は何万年もの前の世界をタイムマシンで覗いているような気分になるのですよ!

例えば、アースラの場合
彼女は4万5千年前(氷河期)の今のギリシャあたりの洞窟で生まれたのだけど
その頃の人類は、季節の移り変わりとともに移動する動物たちを追って暮らしていました。
その中で、アースラは15歳で結婚し、二人の娘を産んでその頃としては長生きの37歳で死んだのでした。

このように、まるで小説を読んでいるように、それぞれの母について物語をつづっていくのです。
勿論、個人的な物語はフィクションだけど
時代、生活風俗、習慣は考古学的考証に則っているので、リアリティがあって見てきたよう!

学者としての才能とこの物語を生み出す想像力。。。!
その二つの才能が一人の人間に中に合体して、この本をこの上なく面白くさせているのです。

この本が出た時点で世界の母(ミトコンドリア・イブの分家筋)は35人。
その中で、日本人の母は6人。
みんな日本人的な前が付いてます。
「エミコ」「ネネ」「ユミ」「チエ」「サチ」「アイ」と。。。
ちなみに、その後増えて9人に増えたみたいです。
      ↓
東ユーラシアの一族の母


現代遺伝学の成果をつづったこの一冊。
ほとんどSFの世界ですよ~!

そう言えば、「パラサイト・イブ」って言う、SFがありましたね。
(ホラー大賞をとった作品だけど、何でこれがホラーなのか。。。?
充分SFだろう!?)
で、このパラサイトが、ミトコンドリア。
何億年もの昔、今の生物がまだ原生生物だった頃、ミトコンドリアは別の生物で
ある時、一緒に共生することになって、ミトコンドリアは我々の祖先の細胞に取り込まれ
ともに進化してきた、つ~学説が元になってます。


この想像力を書き立てるSFチックな面白さもさることながら
一番に感動したのは
人間の歴史がほとんど男の歴史としてしか伝わっていない中で
人間の体の中には脈々と女の歴史が刻まれていた事なのですよ~!
女性として、こんなに誇らしいことはありません!
その人類(女)の歴史に思いをはせると、めまいのするような感動を覚えるのです!


この本に触発されて、日本人のルーツを扱った本を図書館から何冊か借りてきたけど
同系統のDNAをアルファベットで区分して記述した無味乾燥な本ばかり。
残念ながら、未だサイクス教授のような魅力ある文章を書ける学者さんにはまだ出会ってません。

ということで、
日本の学者さんも、もっと分かりやすい文章を書く勉強をしろよ~!
象牙の塔に閉じこもっているだけじゃ、ダメなんだぞ~!
一般人にも理解してもらえる努力をしろ~~!

と、自分のノータリンを棚に上げて八つ当たりしている所です。



さて、ここまでイブの物語を紹介してきたけど、
初心者ブロガーには難しすぎる本を選んだせいで、
書いては消し、書いては消し。。。(あぁ、疲れた!
これだけ書くのに半日掛かってしまった。
ということで、アダムの物語はまた続きということにします~



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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
人類みな兄弟! (tooru_itou)
2007-06-07 22:36:47
 マンガが来ると思ってた大方の予想をハズす処に夜さんの真骨頂を感じましたvv。 この本は未読ですが「ミトコンドリア・イブ」は勿論知ってます(^o^)。
「SF好き」ですからこの手のテレビ番組は見逃さないのデス(笑)。

>日本人のルーツを扱った
~本で調べても期待するような面白く解かり易いのは無理でしょうね。NHKで以前に放送した番組で日本人のルーツを扱ったのがありましたよ。「日本人はるかな旅」って云うのが。マンモスを追いかけて北方から来た一団や南方から黒潮に乗って遣って来た一団、それに中国・朝鮮から来た一団などの混血が今の日本人なんですって。

>残念ながら、未だサイクス教授のような魅力ある文章を書ける学者さんにはまだ出会ってません。
~学者さんの知識を持ち、物語を紡ぐ能力も持ってないと出来ない仕事ですもの。「守り人」シリーズの上橋菜穂子さんみたいな学者さんが一杯出てくれるとそうなるでしょうけど・・。

>これだけ書くのに半日掛かってしまった。
~お疲れ様でした~(^o^)。でも、半日なら短い方じゃない?。私だったら二日ってトコじゃないかな~?。書いて消し、そして、(ああ、めんどい!!)と、次の日に廻す(笑)。
返信する
素晴らしい!! (たれぞ~)
2007-06-07 22:46:26
さすが夜さん!!
本のセレクトもさることながら、文章が上手いですね~

ほんと文章力の上手い人の本を読むと色々想像しながら読み進められるのでたても楽しいです。
ミトコンドリア・イブの話はTVでも紹介されていたので知識としては知っていましたが、夜さんの紹介文でも私の脳裏にアースラの姿が蘇りましたよ(笑)

>人間の体の中には脈々と女の歴史が刻まれていたのですよ

ほんとそうですよね~
古い文明でも古代エジプトをはじめ母系社会とするところというのはありますけど、知識としてミトコンドリアがどうのというモノを知らなくても、体の細胞に潜むDNAが教えてくれていたのかもしれませんね~

女は偉大だなぁ~・・・
返信する
トオルさんへ ()
2007-06-08 01:32:00
「ミトコンドリア・イブ」を扱ったテレビ番組は知ってますが
「日本人はるかな旅」って言うのは知りませんでした

日本人が北から南から、いくつかの時代に分けて入ってきた人々から成り立っているって言うのは定説ですけど
それを遺伝学的に立証した話が読みたかったんですよね~。。。
でも、さっぱりわからな~い
アルファベットと数字の羅列した表を見て、何を理解しろと。。。?

日本人の母についてのドラマは当分お預けです。。。


>(ああ、めんどい!!)と、次の日に廻す(笑)。
アハハハ
実はね~、前の日に頭の中では、書く内容をいろいろ考えていたんですけど
考えているうちに、頭がグルグルしちゃ来ちゃって~。。。
結局次の日に回しちゃったのです~
だから、本当は二日掛り
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タレゾーさんへ ()
2007-06-08 01:48:44
文章が上手い?
ホント?
自分じゃとてもそうは思えないんだけどね~
私の理想は満天さんのような笑える文章なのだよ~!


アースラの話は、もっともっと面白かったんだよ
そして、七人の母それぞれのエピソードが短編小説みたいで
そこだけは、すらすらと読めたな~

で、ミトコンドリアDNAの旅は感動の一言なのです!
生命の神秘を感じたよ~!
返信する
アハハハハハ (満天)
2007-06-08 08:12:03
お疲れ様でした~(笑)

「イブの七人の娘たち」は知ってましたが
「アダムの呪い」は知らんかった~
ミトコンドリア物は
やはりパラサイド・イブで始めて読みました
東北薬科大学の研究員が書いた本で
角川のホラー大賞を取った本です
内容は夜さんの言う様にホラーとは少し離れてました
この本の映画はラブストーリーだったしな~
スクウェアからゲームとして出たんですが
こちらは当時の最新鋭のビジュアルを導入したので
話題になりました~私もハマリましたもん(笑)
コチラはホラーの要素もタップリ入ってましたよ~

夜さんの紹介第一作目は漫画じゃ~っと思い込んで
いたので…ほ~っとビックリしました~
でもとっても面白かったです
半日つぶれたけれども、これに懲りずに
またレビューお願いしますね~
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面白そ~~!! (くま)
2007-06-08 09:29:41
私も「パラサイト・イブ」は以前に読んだことがあって、ミトコンドリア・イブのことも、確かその時に初めて知って、スケールの大きさに、何だかとても興奮したのを覚えていますが…この今回ご紹介頂いた、ブライアン・サイクスさんって方は、全然知りませんでした!
も~~スッゴク面白そうですね~~!!
夜さんのレヴューが上手なせいもきっとあると思うんですが、こういう人類の根源とか生命の根源について、色んな専門家の、今までに解き明かされてきた最新の知識を交えて、分かりやすく書いてくれてる本って、メチャメチャツボですヨ~~!!

ツボな割りに不勉強で、なかなか良い本を見つけられない私にとって、夜さんのレヴューはホントにありがたいっス!

早速、まずは図書館で探してみます!
返信する
さすが満天さん ()
2007-06-08 10:25:41
この本読んだことあるの~?
面白いよね~

「アダムの呪い」は教授の仮説が多くて
その主張が学問的に立証されてないから
前作ほど話題にならなかったんじゃないかな~
ま、これについては今度頑張ります!

「パラサイト・イブ」の映画は
小説の難しい記述を全部すっ飛ばして完璧なラブストーリーになってましたね
それはそれで、ロマンチックなラストが泣けたけど。。。

ゲームは面白いの!?
ハードはPS2?
ふふふ、子供に勧めてみようかな~
(人に買わせて、自分がやる鬼母
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面白いって! ()
2007-06-08 11:32:39
くまさん、お奨めですわよ~

「パラサイト・イブ」が面白かったSF好きなら
絶対面白く読めます
くまさんとは本の趣味が一緒だもん~!

前半は遺伝学の歴史的経緯や
学会の論争・裏話みたいな部分も多くて
固有名詞が多いのが難点。。。
横文字の名前は、全部頭の中をスルーしちゃってます~
でも、それはそれ、話は面白かったわよ~
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力作だ~。 (トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人))
2007-06-08 15:38:38
 マンガや本の紹介って難しいですよね~。良かった良かったってどこが何が良かったか具体的に言うのって結構難しいです。半日掛かるの分かります。
 NHKの番組は知ってましたが、こちらの本は知りませんでした。どこかで人間の祖先は何人に絞られるとか聞いたことは有りますが。ブライアン・サイクスさんて凄い~。
 又私の知らない本の紹介どんどんお願いいたします~。
返信する
知りませんでした (ブック)
2007-06-08 18:09:53
NHKの「日本人はどこからきたか」は見てました
たぶんDVDに落としたかも・・・
でもこの本は知りませんでした
今度図書館に行って借りてこようかな~

ディスカバリーチャンネルとかでイギリスやアメリカの
サイエンス番組をたま~に見ることがあるんですが
生命は本当におくが深くって、女の人が子供を自分の
体内で育てるってすごいことなんだと思います
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