陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ペイ・フォワード」

2012-01-01 | 映画──社会派・青春・恋愛
2000年のアメリカ映画「ペイ・フォワード」(原題: Pay It Forward )は、世界を変えようとする11歳の少年を描くヒューマンドラマ。これはぜひとも見て欲しい良作です。なお「可能の王国」という副題もついていますね。

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11歳、ミドルスクールに通う少年トレバー・マッキニー。
父親は家出し、母親アーリーンはアル中。そんな彼はある日、社会科の授業で新任の教師シモットから、「世界を変える方法を考え、それを実行してみよう」と問いかけられる。トレバーが考えだしたのは、「ペイ・フォワード」という仕組みだった。

手始めにホームレスの男を家に泊めたトレバー、当然ながら母親に反対されます。
トレバーのもくろみは、自分が受けた恩を他人に回せ、というもの。一人が三人に善意を施せば、世界は見るまによくなっていくだろう。

しかし、トレバーはまずもって、他人よりもお酒に溺れそうになる弱い母親を救わねばならない。母子の情愛に、さいしょは剣呑な雰囲気だった教師シモネットも関わってくる。顔に傷があり、どこか影のあるシモットと母との距離が近づいていくのがいいですね。知的で奥手な男性と、あまり教養はないけれど気持ちがストレートな女性とのロマンスというのが、おもしろいです。

このトレバーの試みのはじまりと、その行き着く先、つまり善意の輪の最後を受けた新聞記者クリスが発端を探し出すストーリーが並行しています。見ず知らずの大富豪から高級車を進呈されたクリス。その大富豪の娘の持病を救ってくれのたのが、前科持ちのならず者。さらにそのならず者が恩を受けたのは…というふうに。

シモットの痛々しい過去の傷が絡み、アーリーンの母子関係も軸になってきます。
けっきょくのところ、他人を幸せにするには、まず自分の身の回りの、家族から愛しなさいよということなのでしょう。トレバーの試みはムーブメントを巻き起こしていきます、しかし…。

人の弱さと善意を描いた良作ではあるのですが、傑作とまではいえない、言いがたい。あの結末はすこしどうかと思いますから。けっきょく、口先だけではなにも変えられないというか、変えようとした人間の無力感を掻き立てるというのは。献灯シーンでは虚しさが残りました。

監督は、ミミ・レダー。
出演は、「シックス・センス」のハーレイ・ジョエル・オスメント、「ユージュアル・サスペクツ」「L.A.コンフィデンシャル」のケビン・スペイシー。

なお、この「ペイ・フォーワード」という考え方は、すでに日本の江戸期には「御送り」という言い方で古くから存在していたようです。情けは人のためならず、とはこのことだとか。

(2011年10月15日)

ペイ・フォワード 可能の王国 - goo 映画


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