陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「春夏秋冬そして春」

2012-03-20 | 映画──社会派・青春・恋愛
2003年の韓国・ドイツ映画「春夏秋冬そして春」は、韓国の古式ゆかしいある山寺での少年の成長を追ったヒューマンドラマ。

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山奥の大きな湖面に浮かぶふしぎな小寺。
そこに老僧とともに暮らす幼子。四季の移ろいとともに彼はやがて大人へと成長していきますが…。

春先、薬草採りに出かけ、蛇やかえると戯れる少年。
そこで彼は命を粗末にすることの業の深さを教わる。口先で叱るのではなく身をもって小さな生き物にした苦しみを背負わせる。生き物を殺したら、心のなかに小さな石を背負って生きるのだ、という和尚の教え。現代の日本だったならば、体罰だのなんだのと非難されそうな教えなのですが、痛みを知るのに痛い思いをするのは必要なことですよね。

青年になった男の夏。
精神を病んだ娘が寺に預けられ、青年僧はとまどいながらも恋情を募らせていく。娘には遠ざけられてばかりだったが、ふたりは想い合う仲に。娘の病気もそれで快復しますが、二人は引き離されてしまいます。青年は悲しみのあまり出奔してしまいます。

秋。
寄る年波には勝てず、猫を拾って孤独をなぐさめる老僧。そこに、人の道に外れる罪を犯した男が戻ってきます。ある意味、俗世から離れた場所で思春期を送ったがための悲劇ともいえるのですが、男の妄失を削るための修行を課します。しかし、そこでも別れが待っています。死期を悟った和尚は…。

冬。
硬い氷の張った湖面の寺を訪れたのは、あの男。
壮年期をむかえた男は修行を積み、自分の煩を克服しようとします。そこで人を救えなかったことの苦しさを知る。やがて、自分の師が歩んできた半生をなぞることで男の四季はさいしょに戻っていくのです。

筋書きとしては淡々と話が進むのですが、とにかくうっすらと霧がかった山村、澄んだ空気、老人と子供の微笑ましさなど映像美としてこころ洗われるものばかりで退屈しない。ただ露骨な部分もありますけどね。

水に落ちた娘を拾い上げて恋におちるとか、イタリアやフランスの映画っぽい演出ではありますよね。お堂内や船に施された絵画も美術として見どころの一つ。よくこれほど古びた感じにセットを組み立てられたものだと。殺伐としたシーンがあるのに、カラフルな般若心境など色彩感覚にすぐれた画調で救われます。

監督はキム・ギドク。
出演はオ・ヨンス、男の幼年期はキム・ジョンホ、少年時代はソ・ジェギョン、青年時代はキム・ヨンミン、そしてなんと壮年期はキム・ギドク監督自身。


(2011年8月5日)

春夏秋冬そして春 - goo 映画


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