陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「カラヴァッジオ」

2009-10-23 | 映画──社会派・青春・恋愛
後期ルネサンスの異端画家カラヴァッジオ(1571-1610)は激情家で、金銭トラブルから殺人を犯し逃亡したという逸話はよく知られています。
1986年のイギリス映画「カラヴァッジオ」は、監督・脚本のテレク・シャーマンの大胆な解釈をまじえた異色伝記。公開当時、賛否両論かまびすしかった問題作。
ただし服装や小道具などから察するに、ミケランジェロ・メリシ・カラヴァッジオという1960年代の画家として設定しているようです。

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40歳を迎え、死の床に着いている画家カラッヴァジオが、人生を回顧している。
少年時代、道ばたで絵を描きながら貧しくも暮らしていた彼は、病気で入院したのをきっかけに、枢機卿の目にとまる。天来の美貌と絵の才能に魅せられた枢機卿は、彼を引き取った。枢機卿のパトロネージュのおかげで、絵の腕を磨き、ついにはローマの教会から大作を依頼されるほどの実力者になった。
その頃、若い山師のラヌッチオをモデルとして、絵を描く。ラヌッチオ、その恋人で売春婦のレナ、そしてカラヴァッジオの、奇妙な三角関係がつづく。
だが、妊娠がハ発覚しラヌッチオを裏切る発言をしたレナが、水死体で発見される…。

カラヴァッジオが同性愛者、正確にはバイセクシャルという設定には、異論があるようですね。そのせいか、モデルとの耽美なシーンが多い。
作中に登場する制作中の絵画よりも、モデルにされた人物たちのポーズを決めた場面こそが、まさに絵画となっている。彼の明暗の対比がくっきりしたバロック調の作品が、ここまで再現できるのは驚異的。モノローグも、ひじょうに詩的で酔いしれる。絵画をまえによけいな感情を呼び込ませないために、ほとんどBGMは無きに等しい。美術館で名画と向き合っているような、とても静かな作品。
レナが死んでベッドに横たわるシーンは、『聖母マリアの死』になぞらえてあるのでしょう。

主演は、カラヴァッジオにナイジェル・テリー。ラヌッチオにショーン・ビーン。
86年ベルリン映画祭銀熊賞受賞作。

(〇九年八月十六日)

カラヴァッジオ(1986) - goo 映画

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