映画「さよなら、僕らの夏」

2004年のアメリカ映画「さよなら、僕らの夏」は、川遊びに出た少年少女たちに起こったある事件を通じ、思春期の繊細な感情を描いた青春映画です。

さよなら、僕らの夏 [DVD]
	ヤコブ・アーロン・エステス 東北新社 2006-11-22売り上げランキング : 150003Amazonで詳しく見る by G-Tools

自然豊かなオレゴン州の小さな田舎町のある夏。
気だての優しい弟のサムを虐めるジョージへの仕返しをすべく、兄貴のロッキー、リーダー格のマーティ、クライドの三人の仲間が計画を立てます。川遊びに連れ出して恥をかかせる、ささいないたずらでした。

ところが、ジョージは少々口は悪く生意気ではあるが、それなりにいい奴で学習障害のため周囲に誤解されやすいことがわかります。同行したサムのガールフレンドのミリーは、兄たちの目論みには反対しています。サムの懇願を受けて、ロッキーはジョージへの報復をいったんは撤回するのですが。

父親が拳銃自殺したマーティ。父親がゲイで負い目を感じているクライド。ジョージは中学を何年も留年していて、クライドとはかつて同級生でいざこざを起したことがあります。川の上のボートという逃げられない場所で、五人の少年と一人の少女が乗りあわせ、ふとしたゲームが講じて微妙に感情を逆なでていく。図に乗ったジョージがマーティの古傷に触れて怒らせたことから、船内の空気が凍りつきます。うっかりロッキーによって水中に突き飛ばされてしまったジョージは…。

ある者はその罪の苦しみから現場を逃げ出そうとし、ある者は寄り添って涙を見せては懺悔する。ある者は遠巻きに死は人の運命だと悟った口ぶりで話す。ある者は証拠を隠滅しようとし、有利な証言をしようと企てる。

少女の存在を除けば、ならず者の兄貴がいる複雑な家庭のマーティや小太りでいじられ役のジョージなどメンバーの構成や、少年たちが死に直面して衝撃を受ける部分が「スタンド・バイ・ミー」を思わせますね。ただし、マーティとその兄貴の関係はそれほど険悪なものではありません。

じつはこの映画の真のテーマは、少年同士の絆、兄弟愛のみならず、周囲に理解されないまま乱暴な振る舞いをして弾き出された少年の悲嘆を描いたものといえるのではないでしょうか。ラストで被害者が語るビデオ映像のメッセージはなんとも胸に突き刺さりますね。一人だけ自首を拒んだマーティがとった行動もなんとも言えない。自分がこの立場に置かれたらと思うといたたまれない気分にさせられます。ただドラマとしてはほんらい、もうちょっと盛り込んでほしかったという気もしますね。

監督はヤコブ・アーロン・エステス。
出演はロリー・カルキン、ライアン・ケリー、スコット・ミシュロウィック、トレヴァー・モーガン、ジョシュ・ペック。

（2011年５月29日）

さよなら、僕らの夏 - goo 映画