06年の映画「ベルナのしっぽ」
全盲の女性と、彼女のパートーナーとなった盲導犬との十数年を描く物語です。
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元永しずくは、二十四歳で失明した女性。建築デザイナーの夢を奪われてしまいますが、自分の子供をもつという夢だけは捨てきれません。
彼女はそんなふつうの女性なら抱くような願望のために、犬嫌いを克服し、盲導犬ベルナを側におくことに。
しかし、盲導犬との暮らしは、しばしば周囲の無理解を誘う。
昭和五十年代当時、まだ役所のレストランや、飲食店などでは盲導犬を連れての入場は断られていました。
しずくの母は、娘のために世話を買って出ますが、独立心のある彼女は断ってしまう。
おなじく両目が見えないが針きゅう師をしている夫だけが、彼女の支えとなってくれています。
ベルナと暮らしはじめ、外出もできるようになって数年後、彼女は念願の長男を出産。
しかし、以後も困難はつきまとう。盲導犬を連れて保育所に通うと園児が怖がるという理由で、入所を断られてしまうのです。
小学生になった息子からは、障害のことで不満を漏らされたりするも、夫の仲立ちで和解。
だが、その夫も病死し、白内障を患ったうえ癌に冒されたベルナも亡くなってしまう。
視覚障害者ならば遭いそうな困難が描かれているのですが、あまりダイナミックな演出がなされてはいないので、物語として面白味に欠けるせいか評判はよくないです。ただ、教材として見せるような映画だと思うので、この地味さでいいのではないでしょうか。
こういう障害者や闘病者の実話を元にしたものは、悲劇性を煽ったほうがいいのでしょうけど、あえてあまり脚色したくなかったんでしょうし。
マンションの住人の主婦が、とちゅうから手のひら返したように優しくなるのが解せないという意見を耳にしますが、前半部では単に犬の毛を嫌がっていただけなので、悪意はなかったように思われます。飲食店の言い分も衛生上のことがあるから、よくわかるんですよね。
いちばんおぞましいと思ったのは、津田寛治が演じた通りすがりのサラリーマン。盲導犬がつねにそういう危険にさらされているんだなぁ、とよくわかるエピソード。
感動というわけではないですが、視覚障害者の苦悩を考えさせられる映画です。
小学校時代、隣の家の子の両親が聴覚障害者で、ハンデを背負って生きていく苦労を知っている身としては。
ただ、ちょっと主人公の性格がやや強引にも感じちゃうところがマイナスかな。
原作は、郡司ななえの同名小説。
(〇九年六月二十五日)
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