タイトルだけ聞いて勘違いして敬遠していた作品というものはけっこうあるもので。この映画もそんなひとつ。ボーンコレクターというからに、変質殺人者の猟奇連続殺人がひたすらくり返される救いようのない、「十三日の金曜日」みたいなのかと思っていましたが。意想外に、ヒューマンドラマでありました。作中に登場する小説のタイトルだったんですね。もちろん、見たくもない陰惨なシーンはあるにはあるんですが、まだ見るに耐えられる程度ですね。
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青少年課の女性警察官アメリア・ドナヒー巡査は、ある日、鉄道で無残に埋められた男性の他殺体を発見する。本職の監察官にも引けをとらない、手際のいい鑑識力を発揮して、証拠保全に尽力した功をみとめられ、ある男を紹介される。
その男は、ライム・リンカーン。辣腕の科学捜査官だったが、四年前の事故で全身不随になり、ベッドでの生活を余儀なくされている。しかし、手足は動かずとも彼の頭脳はあいかわらず明晰。ライムはアメリアの腕をみこんで、彼女を現場捜査の第一人者に任命し、ニューヨークでおこる連続殺人の因果を探らせるのだった。
いわゆる安楽椅子探偵のライムにマイクで指示されて動くアメリアですが。トラウマがあって、一時はむごたらしい現場の証拠集めにたずさわることを拒絶します。そんな彼女を、首から上しか動かない男が励ます姿が、けっこう胸に迫りますね。
運命は変えられる、努力次第で。おきまりの言葉ですけれど、才能に恵まれながら、不遇な生活を強いられ、たびたび発作に見舞われて安楽死をも考えている彼が、言うからこそ、説得力があるのです。
アメリアとライムは、いつしか信頼を築き、淡い恋心を抱きあうようですが、それという進展はありません。
サスペンスならではの、トリックの数々。いったい誰が真犯人なのか。とちゅうから、この人がと匂わせておいて、じつは意外な伏魔殿がいたりします。
主演の女性警察官を演じるのが、あのアンジェリーナ・ジョリー。この方って正面はすごく美しいんですけれど、横顔は顎が浅すぎてお魚さんみたいな顔してませんか?(禁句)
ライムを演じるデンゼル・ワシントンの知的な黒人捜査官ぶりが、なかなか。映画でわりと黒人を善意に描くのは、やはり人種問題に配慮しているからなのでしょうね。看護士役の女生とのやりとりもハートフルでして、陰惨な事件のあいまの緩衝剤になっています。
それにしても、アメリカってこういうポリスストーリーを描かせたら一流だと思うのは、犯罪大国でリアリティがあるからなのでしょうか。
金網とか錆びれた地下鉄とか、摩天楼があったら、アメリカと思っちゃいますね。
原作は海外でも評価の高い、ジェフリー・ディーヴァーの推理小説。
(〇九年二月十九日)