陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「余命1ヶ月の花嫁」

2011-12-04 | 映画──社会派・青春・恋愛
2009年のノンフィクション邦画「余命1ヶ月の花嫁」をTV視聴しました。
個人的に癌患者をあつかった闘病のストーリーは嫌いなほうです。この作は実話を元にしていますから多少の美化はあるかもしれないのですが、無理につくりこまれた過剰な演出がなかったので、すんなりと観ることができました。感動がもたされたかどうかは別にして。

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サラリーマンの青年が、トレンディドラマのようなささやかな偶然で、女性にひと目惚れ。交際がスタートするも、女性はすでに乳がんに冒されていました。過酷な闘病生活を思えば、別れを切り出してしまう女性。寄り添って支えていきたいと願う一途な男性。しかし、手術後に癌は再発し余命1ヶ月と宣告されてしまう。その後はタイトルからお判りの通り。

先は読めますので展開としての妙はありません。屋久島の太古杉だとか、三味線の弾き語りだとか、生命力を感じさせるアイテムは登場するけれど、それが果たす役割はほとんどない。逆にそれがリアリティを感じさせる。
ごくふつうの恋をして、ふつうの夫婦になるはずだった男女に訪れた災難として捉えれば、物語としてありきたり。でも、これは実話。大げさじゃなくてもいい。いっそ、ドキュメンタリーのほうが良かったかと思う。一度ドラマとして放映はされたようですが。
でも、実在するこの女性が、みずからの苦しみを見せしめたいのではなく、乳がんの危険性を訴え、早期検診や予防を勧めたいがためにあえて広告塔になろうとした、というその志には感嘆しました。


本人は精いっぱいの愛情を傾けて看病している心づもりであっても、患者本人やその血縁者には負担をかけているのかもしれない。ちくりとその事実を諭す男性の父親は正鵠を射ていると感じました。

この映画ではドラマ性は控えられていましたが、病む側、看取る側、そして医療を授ける側、それぞれに苦悩のドラマは深く、現実はもっと過酷なのです。けっして、喪失体験に涙させるだけで終わってはいけない。ラスト、男性が最愛の女性を失った悲しみをあっさり乗り越えていたけれど、ほんとうはもっと語り尽くせない時間が経過していたはずなのです。

監督は廣木隆一 。
主演は榮倉奈々と瑛太。

そういえば、この十月一日に、乳がん予防キャンペーンで東京タワーがピンク色に染まったそうですね。

大仰な訴えがなくてもいい。
たったひとりを悼むために物語はつくられてもいいのです。

(2010年10月4日)

余命1ヶ月の花嫁 - goo 映画

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