陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

ハリボテの虎、気弱な龍、踊った狐たち──呆れた頂上決戦

2010-09-14 | 政治・経済・産業・社会・法務

実力伯仲のふたりが激突するさまを、よく龍虎相打つといいます。
不謹慎ではありますが、今回の政変劇をおもしろおかしく、なぞらえてみましょう。

紙切れを貼り重ねただけの、虚勢を張ったハリボテの虎がいました。
ぽっくりぽっくり首を振ってるだけなのに、なぜかその表情に威厳があるように感じ、小さな森の王者でした。森の狐たちからも、手厚く信奉されています。まさに虎の威を借る狐たちとでも申しましょうか。涼しい軽井沢で、ビールを振る舞われて上機嫌でした。
虎は狐のヨイショに背中を押されて、自信満々。勝利を疑ってはいませんでした。森の王者になれば、検察特捜部という犬の噛みつきからも逃れられそう。万々歳ですね。

蛇のように痩せた龍は、そんな傲岸不遜な虎が大きらい。
「日本を洗濯する」なんてどこぞの幕末の志士の言にあやかったはいいが、この夏に選挙で大敗北。日和見な鳩の顔をしたお坊ちゃま蝙蝠さんにも画策されて、あわや壇上から降ろされようとしています。以前のような舌鋒鋭さが成りをひそめ、戦々恐々としている様子。

さて、はたしてどちらが勝ったのでしょうか。
ほんとうに勝ったのは、森を追い出され、酷暑で苦しんできたか弱い兎たち。彼らは、空に浮かんだだけでなにもしないけれど、すくなくとも自分たちを食いものにしない龍に味方したのです。少なくとも、当面は。恵みの雨でもあればいいのにと期待しつつ。



小学校の学級委員長を決めるよりもさらにバカバカしい内輪揉め投票にやっと決着。マスコミの事前調査による支持率どおり、菅首相の圧勝でした。
民主党代表選に大惨敗を喫した小沢さん。
直後に雲隠れ。献金疑惑発覚の会見でも涙を見せていましたが、こんなにメンタリティーが弱い人に、国を任せられるわけがない。自分の周りにおべっか使いを侍らせてるだけの裸の王様。国民の声に耳を貸さない独裁者の末路を感じます。

代表選直後の民放でインタビューに応じてるのは、TVでの顔出しに必死な子飼いの小沢ガールズばかり。
電話攻勢や金で買収されたのか国会議員票では、菅さんと接戦だったけど、サポーター票では大差で圧勝。国民は意外と政治家の振る舞いをチェックしているものです。お忘れなく。

敗北選挙の恨みから、小沢派が福田首相などにしたような悪質な現首相いじめをしたら、それこそイメージダウンでしょう。小沢さんは、説明責任を果たして、議員バッジを外してほしい。

あいかわらず鳩山さんのインタビューは意味不明。
この人はほんとうに、留学経験のある理系の大学教授だったのでしょうか…。単身ロシアに飛んで勝手な交渉をする素振りをみせているけれど、口約束で実行は他人任せという,いい加減さを国民は知っていますから。

その鳩山さん。ツイッターで小沢支持者は「一匹狼」的な人=覚悟のできている人が多いと発言。
一匹狼というか、虎のおこぼれに預かろうとするハイエナや狐。これまでよき指導者に恵まれなかったせいで、リーダーを見誤っている人が多いだけでは。マスコミで叩かれている小沢さんのダークヒーローぶりに惹かれただけでしょう。特に女性議員、優等生よりもワルっぽく強そうな男のほうが好きなだけ。
一匹狼というのは、逆にいえば、大多数に責任を持たない人のことです。

沖縄の基地移設問題について口を閉ざした菅首相への反発から、小沢支持に回った沖縄のサポーターが多かったことには驚きでした。小沢さんが外交手腕に定評があるなんて信じられないのに。
しかし、自民党時代に逆戻りした移設交渉に対する不満を体現したかのような名護市長選挙。菅さんにとっては逆風になりそうです。

小沢さんの論戦というのは、単純。野党時代は「自民党」、与党になれば「官僚」という、ある集団をひっくるめた仮想敵をつくり、国民の憎悪を煽って自己保全・自己正当化を図ろうとしているだけ。ユダヤ人を虐待したヒトラーにも負けない独裁者気質です。いつも「一兵卒」と卑下しているけれど、内心はお山の大将になりたくて仕方がないようにしか見えません。トップになって、自尊心を満たしたいだけ。政治は国取り合戦じゃありません。
しかし、表に出れば出るほど人気を下げて不快感を誘う政治家も珍しいですね。今回の選挙は、小沢さんがいかに国民から嫌われているかを再確認しただけでした。ほんとうに無駄な一箇月あまり。この間に遅れた経済対策の責任は、小沢さんにあるのではないですか。

小沢支持者のある議員は、今後は菅首相を党一丸となって守り立てていく旨を表明。
その心意気を全員が一箇月まえに語られていれば、誰も民主党に対して呆れたりはしなかったろうに。

新人議員を応援した、育ててやったというキャリア政治家とて、有権者の一人にしか過ぎません。
一人の有力者が組織的な票田をもつ、という歪んだ多数決重視が、民主主義を遠ざけています。

会社でもそうですが、限られた狭い人間関係にがんじがらめにされて、自分の判断で動けない依存症者に,新しいことができるわけがない。いっぽうで、自民党離党した亀井・与謝野・舛添氏(渡辺みんなの党は参院選後に何をやっているのでしょうか)らのように、牛後よりも鶏頭を選んだ小党派リーダーの不甲斐なさも目につきます。

数合わせの票集めで民主党を与党に導いた小沢さんが、その内部投票で敗れたというのは皮肉なことです。
サポーターではないので、今回の代表選=次期総理大臣選出は蚊帳の外の話でしたが、自分たちの代表者を選ぶことの重みと責任感を感じます。

安易に首のすげ替えで、国がよくなるという期待感を抱きすぎないほうがいいですね。
虎や龍を変えても、狐が、狼が、何人いようと構わない。
草食系で行動力がない、覇気がないと馬鹿にされた兎たちにだって、怒りはあるんです。棲みやすかった森を奪われたという怒りが。
その怒りの声に耳を傾けなかった虎が、敗北したのは当然のことでしょう。
兎(どころか小心なネズミか)のひとりとして、しかし一有権者として、私は切にそう思います。


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