陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

アニメ「美少女戦士セーラームーン Crystal」第三話&第四話

2014-08-30 | テレビドラマ・アニメ
いえね、別に月刊号にするつもりはないのですが。
ほら、二週間にいちどの放映でしょ。でね、その直後にレヴュー書かないと忘れちゃうわけです。だから二話まとめて一箇月後になっちゃう。そんなアニメ「美少女戦士セーラームーン Crystal」のレヴューをお届けします。ハウス食品提供でお送りします、みたいなさ~わ~や~か~ボイスの合唱隊BGMの変身シーンもそろそろ慣れた頃合いです。

ちなみにこの記事、すこしまえの緊急避難場所に保管していたものの再録です。
一段落だけ読んで気づかれた方、すみません。二度と読みたくない方は回れ右(?)してお帰り下さい。


第三話は、あのセーラーマーズこと火野レイちゃんご登場の巻。
期待してたんですよ、ええ。でもね、オトコ関係清算つっても、まーさかまさか、おじいちゃんまで消去されてるとは思わんかった! 

この魔のバス停のお話って原作でもよくできてるストーリーだと思いますが、再アニメ化にあたって、かなりおどろどろしく表現されすぎてて笑いました。ひぐらしの泣く頃に、ですかい、みたいな。しかし、美人だとされているレイちゃんのドアップが、溶けかけた雪だるまみたいになってて、かなり残念(殴)。というか、レイちゃんの声の人、ドス利かせると極道の姐さんっぽいですよね…。

回を追うごとに低予算映画のようなつくりが懸念されていく、我らがセーラームーンですが、とうとう、話題回の仮面の舞踏会を迎えました。ここまで、ほんと原作どおりよね。旧作だと、三人娘で夏休みバカンスバージョンがあって、水着回だの、なんだのあったりしちゃうのですが。

でも、やはりですね、どうしてもですね、トキメキ回のこの回なんですが。
なんだか、どうしてもいろいろ笑っちゃいまして、まともに凝視できませんでした。だって、やはり作画がちょっと…。あと、このアニメ、音楽にもあまり工夫がないような気がするのよね。絵のマズさって、アニメだったらいくらでも他の要素でカヴァーできると思われるのですが。

プロデューサーさん曰く、今回の新版は「かつて『セーラームーン』を観ていたアラサー世代向け」なんだそうで。いや、それはいいのだけど、これが「転職なり、結婚なり、で人生の選択肢を迎える女性に勇気を与える作品」になっていけるのか、ここ四話までの描き方を見るにつけちょっと疑問です。(新『セーラームーン』はなぜニコ動配信なのか~プロデューサーに聞く

OPにある「王子様に頼らないで運命切り開く」女の子の譲れない矜持なんてのも、旧版のセーラームーンが開いたのではなく、どっちかっていうと、「少女革命ウテナ」からのインスパイアだと思います。セラムンってのは、王子様に頼らないで、ではなくて、冴えない女の子が、頼りになる仲間との友情も、素敵な旦那様もゲットできた、という二重三重においしい、とてもいいとこどりの、かなり王道的なストーリーなんですよね。

そして、現実は「王子様に頼らない」のではなく「弱体化しメス化した男子のために、もはや頼ることができない」のであって、さらには「女が王子様になろうとしても当然なれない」のであって、もうほんとにベルばらみたいに戦うヒロインでもなく、魔法少女のように奇蹟でなにかもうまくいく夢すら見られずに、友情が実ったと思ったら裏切られたりして、夢も希望もなくて疲れてしまって「なにもしなくてもいいぐうたらなお姫さま」でずっといたいと思いつづける人(男女問わずに)が多くなってしまった、というのが現状ではないでしょうか。

最近の、オトコは出てくるだけでじゃまだ!と悪態吐かれるようなアニメが多いなかで、なんというか、ちょっとしたアドバイス程度にしか参戦しない、このタキシード仮面みたいな男だとか、悪の女幹部(←なぜか、「患部」としか変換されなかったが…)にへいこらこき使われてるだけのホストクラブみたいな優男の敵さん四天王みたいな、「女の活躍の添え物でしかない」男の描き方は、すごく歪んだフェミニズムのような気がします。

それをアラサー世代の女性向けとされても、ワタシが市場で勝って勝って勝ちまくるためにはオトコは邪魔なのよ、という反転した男の闘争心を抱いた女性にしか受けないのではないだろうかと。

私はこのアニメ、かつて子ども時代を思い出しながら、あまり分別もつかないお子さんと観る、二世代向けの子どもアニメだと捉えたほうがよろしいかと思われます。お母さんとじゃなくて、むしろ、お父さんと子どもだったりするような。たぶん、いまのアラサー世代以上はもっとすぐれた作品を知って育っていますからね…。

自分が子どもの頃勇気づけてくれたあの作品は、十年経っても、二十年経っても、そうであるとは限らないんですよね。だって、あまりにも人間造形が単純化されすぎてしまっているから。だから、これは、あくまで子どもだましのアニメなんだよ、いい大人が観てたら恥ずかしいんだよ、と言ってほしいです。これ(だけじゃなくて、アニメ全般がそうだが)観てる自分はずいぶんと情けないと思ってますから。


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