陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

革命少女・天上ウテナ

2008-08-16 | テレビドラマ・アニメ



もの心ついたあたりのうろ覚えの記憶。
夏のお盆のために祖母の家に泊まりにいったときのこと。ブラウン管に映しだされたのはあるアニメ。紅いスウェットを着た三枚目の男が活躍する話です。アクションがおもしろく興味深く拝見していましたが、あるシーンをきっかけにぱったり観なくなりました。男の連れの美女が悪者に誘拐され、背中に文様をあしらわれた状態で発見されたのです。手足をもぎとられて…。いまとなっては平気の平左なシーンですが、幼いころの自分にはとてもそら恐ろしかったのです。

いまでも、手足がもぎとられたり変形したり怪奇じみた作品はあまり好きではない私ですが、その畏怖の原点がこの作品「コブラ」にあったことは言うまでもありません。
ところで、「コブラ」は今年生誕三〇年を記念してリヴァイバルDVDが、この八月二十九日に発売されるそうです。
三枚目が美女とともに活躍するハードボイルドアクションといいましたら、ルパン三世やシティ・ハンターがおなじみですね。

私もアニメの男性キャラならば、あまりにもつくられすぎた美男子よりは三枚目なんだけど、いざってときは頼りになるというタイプが好きです。たとえていうなら、『タッチ』の上杉達也とかですね。あと、ブラックジャック先生も見のがせない。

さて、あなたがいちばん好きなアニメキャラというお題ですが。
いやはや、多すぎて一番を選びきれません。もちろん、ココロに決めたいちばんはありまして。それは拙所でさんざんさんざんヨイショしてるアニメのヒロインなのですが。(知りたい方はこちらを参照あれ)この記事でその魅力を語るには、いささか語りきれない面がありますのでパス。
で、今回はですね。その作品に影響をあたえたといわれる国民的人気アニメ主人公を推しておきます。

『少女革命ウテナ』の主人公天上ウテナは、私の好きといいますか憧れのヒロイン。
「革命」という言葉はその当時の流行語大賞となり、いちやく社会現象としても認知されたアニメ。

幼い頃に両親と死別しながらもたくましく生きてきた孤高のヒロイン。正義感がつよく竹を割ったようにさっぱりした性格。でも女の子らしさは失ってはいない。王子様を待つのではなく王子様になろうというトンデモ発想は、女性の深層にあるトランスジェンダー願望─広義にいえば自分以外の能力者になってみたいという魔法アニメの変身願望─をくすぐるだけではありません。そこには社会進出かますびしい女性への励ましと、じつはシニカルな警告さえも秘められていたりします。
ふだんは男装の麗人ですが、彼女はけっして男を凌駕して活躍したいと願っているわけではなく、その紛争は憧れの王子様への恋心からくるものであります。こういうふだん勇ましい女の子がドレスアップして照れ笑いなんかみせてくれるところがツボなわけですね。最終的に王子様の打算をみやぶり、恋愛よりも友情をとる彼女ですが、それもまた美してそして、なんだかもの悲しい。傷ついたウテナがこころの棺に葬られた姫宮アンシーの意識にかたりかけ、兄からの依存をうながすシーンは、その当時、涙をおさえきれないものでした。

この作品のOPの出だし「潔くカッコよく生きていこう」というフレーズは、いまでも心の支え。気高さを失わない生き方とはなにか。七〇年代のベルばらブームと同様に、天上ウテナという人物が語りかけた理想は、向学心に燃える女性を勇気づけたことでしょう。そしておそらくしばしば薄くとぎれがちな女性どうしの交情のいとしさとはかなさをも訴えています。
「十年後にいっしょに笑ってお茶を飲もう」
そんなことを言える相手がいることは幸せなことですね。
天上ウテナ、「なにかを変えなきゃ、そう思ったときにかならず思い浮かべる存在。
私の人生最大の危機にであった忘れられない作品のひとつ、愛すべきキャラクターです。

昨今のアニメはキャラクタービジネスで、視聴者にウケやすそうなキャラクターが類型化されてまして似たり寄ったりで面白くないのですが。
このアニメに限っていえば、音楽、映像演出、ストーリーどれをとってもエンターテイメントを芸術のレベルにおしあげた日本アニメ屈指の大傑作ということができます。すぐれたアニメはひとつの大河ドラマになり、哲学書にもひとしい至言をあたえてくれるものなのです。
そんなアニメで育った世代。リメイクばやりで新しいものが生まれない恐れはあれども、いいものは繰り返し流行するということですね。ヤッターマンもそのひとつなのでしょう。





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