陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「運動靴と赤い金魚」

2010-05-04 | 映画──社会派・青春・恋愛
1997年の映画「運動靴と赤い金魚」は、貧しい一家の兄と妹のつながり、そして家族のふれあいを静かながらもていねいに描いた感動作。
しばしば感動作と呼ばれながら安っぽい恋愛映画に飽き飽きした私には、ひじょうにこころ温まる一作でした。

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少年アリはお遣いの途中、修理したばかりの妹ザーラを靴を失くしてしまう。
父の収入は少なく、母は病気がち。貧しい家庭の事情を考えれば、どうしても言い出せない。しかたなく、アリは自分の運動靴を妹と交代で履きながら、通学することにするが…。

貧しくてもストリートチルドレンのようなさもしい根性が、この幼い兄妹には微塵もないのが救い。そして、学校の校長は威張り屋ですが、他の教師は優等生でもあるアリには理解を示してくれます。
また父親も、信仰心が篤く、自分より弱者の生活を支えてもいる。
そのあたりが、おなじく少年を扱ったイラン映画の「友だちのうちはどこ…?」とは違いますね。

アリが口べたで売り込み下手な父親を助けて、金持ちの家を回って庭師の仕事を見つけようと努力するあたりなど、なんとも微笑ましい。
そして、じつは妹の靴は意外なところから見つかるのですが、それを奪い返そうともしない兄妹。貧しいとはいえ、両親に人道的な教育を受けて育てられたのだとわかりますね。

ある日、小学校対抗のマラソンレースが行われることになって、賞品の運動靴目当てに、アリは三等入賞を目指します。
他の出場者たちはみんないいスポーツシューズで参加するのに、自分だけは履きつぶした古い運動靴。それでも、妹のために懸命に走る少年のすがたが、胸を打ちます。
その結果ははたして…?

表題は、ラストの美しいシーンに基づいています。
自分のちからで幸福をつかみ取ろうとするハングリー精神、ものに恵まれすぎた先進国では決してみられない。ハリウッド映画だとスラム街で育った孤児が、ものを盗んだりするのを貧しさのせいだと大目に見る風潮がありますが、とんでもない話。
この兄妹ほど貧しくはないですが、自分も好きなものをあまり親に買ってもらえないことがあったので、この少年の気持ちがよくわかります。

こういう男の子の強さをまっすぐ描いた作品はいいですね。
この少年は精神的に自立しています。アメリカだと自立を親への反抗と勘違いしてるようなのが多いですが。

監督はイランの新鋭マジッド・マジティ。
モントリオール世界映画祭でグランプリを含む4部門を受賞。「ライフ・イズ・ビューティフル」とともに、第71回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。

運動靴と赤い金魚(1997) - goo 映画

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