陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「ハッピーフライト」

2014-09-21 | 映画──ファンタジー・コメディ
日本のサラリーマンの喜怒哀楽を追ったドラマって、たいがい、好きではないのですが、航空業界となるとハナシは違います。
2008年の邦画「ハッピーフライト」は、楽しい空の旅を演出するプロフェッショナルたちの涙と笑いの苦闘を描いたお話です。

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羽田発ホノルル行きのジャンボジェット機の飛行前から着陸までを追ったもの。
主に登場するのは、CA(キャビンアテンダント、客室乗務員)の新人、機長昇格審査のためにフライトする若手副操縦士、新米の整備士、そしてグランドスタッフ(空港の受付係)。そのほか、さまざまな裏方のスタッフたちが登場します。

空の事故といえばわかりきっていますが、トラブルは搭乗前から潜んでいました。

CAというと外国語が操れて、ひと昔前は、女性が憧れる華やかな職業とされてきましたが、実態はふつうのサービス業と変わりはありません。とにかく、いちゃもん大好きのクレーマーたちをなだめるのにも流儀があります。しかし、飛行機ってものは空の密室なのですから、不快指数もあがろうというもの。日ごろのご苦労が忍ばれます。
新米CAさんたちを観てると、「私はドジでのろまな亀です」(by 堀ちえみ)という台詞が思い浮かびます。

若手副操縦士、新米の整備士と態度のでかい上司との軋轢や和解もお約束なのです。彼らを襲うアクシデントというのが、人為的なものではなく、偶然の積み重ねで振り回されながら、それでも、最後には一丸となって無事着陸をめざすあたりがいいですね。管制塔と連携をとるすがたは、「アポロ13」や「アルマゲドン」を彷彿とさせます。

この映画、なにが魅力なのかと言えば、新米とベテランというありがちな構図ながら、不測の事態になれば年長組がちゃんとフォローしてくれるということ。挽回のチャンスがすぐに訪れるので立ち直りも早い。でも現実では、たいがい、若手の方にしわ寄せが来ますよね。
コメディにみえながらも、それなりに臨場感があるようにつくりあげているので、CGをド派手に用いたハリウッドの航空機サスペンス・パニックよりも日本人には楽しめたのではないでしょうか。

ところで、現実の日本の航空業界は赤字続き。
大手航空会社はベテランの操縦士やCAの大量解雇をはじめました。私の知人でも航空会社の事務職を早期退職し鉄道会社に転職された方がいますが、こういう特殊な業界で専門を磨かれてきた方の緊急着陸する場所が、日本にはすでに用意されていないことが悲しいですね。

監督は「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖。
出演は田辺誠一、綾瀬はるか、吹石一恵、田崎智子、時任三郎、岸辺一徳など。

けっこうベタかなと思える笑いどころがあるのですが、群像劇での構成が効いていて、スタッフ一同になったつもりで拍手を贈りたくなってしまえるような、ほんわかした作品でした。結末は見え透いているのに、むしろ、そこに向かって飛んでいきたくなるのを望むような映画です。
フランク・シナトラ歌う「カム・フライ・ウィズ・ミー」が、味わい深く幕引きを締めてくれます。
ANAが制作に協力しているそうですが、企業イメージアップのためにも、今後日本の企業は映画業界とタイアップして宣伝していくといいのではないか、と思える好例です。

ところで、管理人は飛行機を見るのは好きですが、乗るのはあまり好きではありません。人生では二度しか乗ったことがありません。


(2011年2月5日)

ハッピーフライト - goo 映画

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