日本映画「鉄塔武蔵野線」

子どもの頃、なぜだかよくわからないが、意味のないことに夢中になったことはないだろうか。
お菓子のおまけを集めるとか、自転車で遠くまで行けるか試してみたりとか、河原の投石の距離を競ってみたりとか、好きな漫画家の絵を模写してみたりとか、まあそんなたわいのない熱中や挑戦。
今回の映画は、そんな冒険心にあふれた少年のちいさな旅程を描いている。

97年の映画「鉄塔武蔵野線」は、銀林のぼる原作の同名小説（第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作）を映画化したもので、いまでも根強い支持者がいるようだ。邦画であまり目をひく作品がないことを嘆くばかりだが、久しぶりにこれは面白かった。といっても、全体的に八〇点ぐらいかな。

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東京武蔵野に住む小学５年生、見晴は両親の離婚によって長崎への転居が決まり、最後の夏休みを過ごしていた。彼はふと思いたって、送電線の鉄塔に掲げたプレートの番号を辿っていく。二歳年下の弟分、暁（あきら）を、お供に連れて、自転車を漕ぎ、鉄塔の下にメダルを埋めながら、１号鉄塔をめざす。
途中、タイヤのパンクや大人に叱られるなどの困難が襲い、弱音を吐いた暁とは諍いを起こしてしまう。野宿してまで独り目的地をめざす見晴は、しかし、鉄塔保守課の巡視員に保護されて連れ戻されてしまった。

なぜ、彼が執拗に１号塔をめざしたのか。その理由は、最後になって父との因縁として明らかになるのですが、この部分、もうちょっと工夫がほしかったかも。
前半部の少年二人が、夏の翠まぶしい林を抜け、田道を走り、川を超えて、巨大な鉄塔を追いかけるすがたは、とても活き活きとしてすばらしかっただけに。

主演は電車男で有名になった伊藤淳史。この頃はまだかわいかった、といったら失礼かな？「仮面ノリダー」のちびノリダーをやってた子だったんですね。フジテレビ系列の法廷サスペンスドラマ「サマヨイザクラ」でも、オタクの青年を好演。
暁を演じた内山眞人は「仮面ライダーカブト」の影山瞬役で売れっ子になったらしい。

（〇九年五月二十二日）

鉄塔武蔵野線(1997) - goo 映画