陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「聖なる嘘つき」

2011-04-01 | 映画──社会派・青春・恋愛
1999年のアメリカ映画「聖なる嘘つき」(原題 : Jakob the Liar)は、ナチスドイツに迫害されるユダヤ人街でふとしたことから吐いた男の嘘が、大きなうねりとなって抑圧された同志を励ましたというヒューマンドラマ。「ライフ・イズ・ビューティフル」と傾向は似ていますが、その影響力においては前者に勝る。嘘をつく男の苦悩とそれを支える周囲の優しさを時にコミカルに、時に切なく描いた感動作だ。

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ナチスドイツに占領されたポーランドのユダヤ人地区、ゲットー。
ユダヤ人のジェイコブ・ハイエムは、両親が収容所送りにされて生き残った少女リナを拾い、屋根裏に匿う。
ユダヤ人たちにはラジオの所有が許されず、外部の情報を聞くこともままならなかった。しかし、ジェイコブが司令部で耳にしたラジオのニュースを語ったことが、明日をも知れぬ我が身を嘆く人びとに生きる勇気を与えていく…。

ジェイコブは英雄になりたいと願いつつ、どこかお人好しな男。だが、しかし根っからのほら吹きではない。彼が嘘をついたのは、行く先を悲観して首を吊ったり暴動を起こそうとする仲間をおさえるため。請われるままに戦況を捏造し終戦間近であるかのようにうそぶくジェイコブの偽のラジオニュースは、話題を呼び、いつしか彼はユダヤ人解放の救世主のごとき羨望を集めるようになる。
だがいっぽうで、いつドイツ軍に尋問されるかわからず、また仲間を裏切ってぬか喜びさせているという苦悶を抱え込んでしまう。

そんなジェイコブを励ましたのが、医師のヘルジュゼル。ジェイコブの存在しないラジオが、何より希望をくれるものだと諭す。娘同然にこころを通わしあっていたリナと、偽のBBC放送をオンエアして演じてみせるところが、極限下の暗い状況にあって唯一楽しい場面だ。

しかし、やがてラジオの噂を聞きつけたドイツ軍が持ち主狩りのため動き出す。みずから出頭したジェイコブが、ドイツ将校と駆け引きする場面はなかなか鬼気迫る。彼と追いつめられた人びとの結末がどうなるかは観てのお楽しみだ。

安易に流用されると感動が薄れてしまうが、人の命を守るためにつく嘘や演技はやはり美しく、しかし悲しい。

主演は、「レナードの朝」「パッチ・アダムス」「グッド・ウィル・ハンティング」のロビン・ウィリアムズ。髭面のインテリ役が多いウィリアムズだが、本作ではすっきりとあご髭を剃っての登場。

ハンガリー出身ユダヤ人で自身もホロコーストの生き残りであるというピーター・カソヴィッツが監督。
原作はユーレク・ベッカーの『ほらふきヤーコプ』
(2010年3月31日)
聖なる嘘つき その名はジェイコブ(1999) - goo 映画



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