陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「容疑者Xの献身」

2011-01-19 | 映画───サスペンス・ホラー
年初めのスペシャル番組枠で放映されていたのが、2008年の邦画「容疑者Xの献身」
東野圭吾のベストセラー小説の映画化ですね。福山雅治主演ドラマ「ガリレオ」のスピンオフで話題になりました。ドラマも未視聴、原作も未読ながら、とても楽しめました。

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東京との工事現場で男の他殺体が発見され、元妻である花岡靖子が疑われます。しかし、彼女には崩しようのない完璧なアリバイがあった。捜査にあたった内海薫刑事らは、ガリレオこと天才物理学者の湯川学に協力を仰ぐが…。

じつは冒頭から、靖子とその娘が金を無心にきた被害者を殺害したシーンがあるので、犯人は分かりきっているのです。ですから、変わり者の専門家が学識を拡げながら、おもしろおかしく事件を解決するミステリーなのかと思いきや、そうでもありません。ハリウッド映画ならば、アクションシーンも満載のインディ・ジョーンズのようなパワフルな学者先生が活躍するでしょうが、もちろんそんなこともありません。じつは、これは、「はぐれ刑事純情派」みたいな、人情ものサスペンスなんです。でも、それだけではありません。

靖子のアリバイ工作を持ちかけたのは、ほのかに彼女に好意をいだく隣人の高校教師・石神でした。石神は、湯川が大学時代にただひとり認めた数学の天才でありながら、家庭の事情で夢を断たれた人物。このドラマの真の主役は、福山雅治演じるガリレオよりも、むしろ彼であるといっても過言ではありません。

石神は最初はさえない人物から、やがて母子を縛るストーカーへと変貌し、そして、最後には彼の「献身」の理由があきらかにされます。このシーンは泣けますね。拘置所の廊下で号泣しあう堤真一と、松雪泰子の逢瀬のシーンは胸が張り裂けそうでした。

孤独と悲しみのなかに人がさしのべた優しさが、めぐりめぐって、とんでもない犯罪を引き起こすものなのか。絶望した人間にとって、ささやかな温かみは、人を殺してもいいほどのエネルギーを与えるものなのか。容疑者の行為はけっして許されるもではありませんが、けれど、法で裁かれざるを得ない彼らの心情を思えば、たしかに虚しさ残る結末です。

容疑者Xの献身 - goo 映画

(2011年1月6日)

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