月下樹のおと

樹月けい、オタク母のブログ。アニメ・漫画。お絵かき展示等。義母の介護終わり、義父のご飯お手伝い中。

11/7(水) 映画『教誨師』

2018-11-08 19:12:01 | 感想★アート演劇 映画ドラマ アニメ等

11/7(水) 映画『教誨師』ソレイユ2にて。

大杉漣さんプロデュースで主演。
テレビで紹介されてるのを見て
気になっていた。

台詞等うろ覚えで
少々ネタバレですが感想です。


漣さんが演じるのは牧師の佐伯。
6人の死刑囚と面会する教誨師。
教誨室にてやり取りが続く場面は、
あまり大きな動きがあるわけでなく
少し退屈な感じではあったかもしれない。

けれど、それぞれの死刑囚との
会話の中で感じたことがある。
話が噛み合わない感じだったり
常識や理屈をひっくり返すような言葉に
心を揺さぶられた。

普段なら、同じような価値観や
同じような考え方の元、円滑に進むことが、
ひとつひとつ引っ掛かってしまう。
常識も揺らぐ、それでもやはり
人間として大事なことはある。
どうすれば共存できるのか…
観ている自分も悶々としてしまった。

それでも寄り添う、教誨師。
どんな命も生きる権利があると言うが
それに反論する死刑囚。
家畜の肉は食べるのに
他の生き物を殺すのはダメとは何故。
知能が高い…と返す言葉を取り上げて、
では、知能の低いものは殺されていい
ということかと詰め寄る死刑囚。
実際、その死刑囚は何人も
そんな人を選んで殺したという。
現実にもあった事件のことを
思い起こさせる話だ。

生き死にまで至らないにしても、
能力が高いものが優遇され
低いものは排除されるという世の中の構図は
ごく身近で切実な問題でもある。
自分はどちら側なのか。
排除されていいのか。
されなければ、そのままでいいのか。
どうすれば……頭の中が渦巻いた。

また、佐伯牧師の
こんな言葉も印象に残った。

知らないから怖い、怖いから知りたくない。
人間はそういうものだと。
でも自分は知りたいと。

開いている穴があるとして、
それを埋めたりどうにかするのではなく
ただ 見つめる、そばにいる、
というような言葉だったかと。

そうだなと思った。
自分もそうありたいと。
強制や矯正じゃなく、共生。
相手とも、自分とも。

なかなか相容れなかった、あの死刑囚。
何かが伝わったような表情と
「メリークリスマス」と返した言葉。
けれど、死刑執行の時は来て。

あんなにニヒルだった彼も
やはり土壇場で死は怖かったのだろうか。

“生きるのは辛いけど、生きたいと思う”
佐伯が言ったように
生きたいという感覚は
どんな生き物にもある本能なのだろう。

そしてさいごの時、佐伯への、
あの言動は何を意味していたのだろう。
耳元で言った言葉は?
自分なりに考えるしかない。

現実も、人と人との間に
いつまでも解けない謎を抱えていると思う。
すべてが分かることはない。
理解できることもない。
けれど、生きている限り
問い続けることになるのだろう。
その果てしなさに
足がすくむような気持ちになった。
ラストシーンに
清々しく涙することは出来なかった。

怖い。怖いけれど、やっぱり知りたい。
知ろうとすることでしか
自分は前に進めないような気がする。
大きな穴は そこらじゅうにあって、
自分の穴にさえ
落ち込んでしまいそうな時もある。
そんな穴も、無理に埋めずに生きたい。
見つめるだけでもいい。
教誨師がやっていることで
世の中が変えられなくても、むなしくても、
決して無意味ではないと思えたから。
………………………

大杉漣さん、ありがとうございました。
“ 死んでも魂は生き続ける ”
という台詞のように
その思いは多くの人の中で
生き続けることでしょう。
作品を通して、私たちもそれを受け取り
大切にしていきます。

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