( この一コマは、第17回ヤングJ誌青年漫画大賞で努力賞をいただいた「 壁 」の一部である。
《 1987年 発表 》 )
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
その3
デビュー作から第二作目を発表したのが、ちょうど忘年会のパーティーがあっ
た頃でした。 二作目はやはり漫画業界物で、タイトルは「 壁・漫画家残酷伝 」
・・・WEBサイトで公開しているタイトルは「 壁・春の来ない漫画青年 」。
この作品は第17回の青年漫画大賞で「 努力賞 」をいただいたのですが、本誌
ヤングJ誌には掲載されませんでした。
審査委員の一人、○岡ヤスジ先生( 故人 )には・・・
「 前作( 『 雨のドモ五郎 』 )には遠く及ばない・・・ 」
と、酷評され、デビューしてからあっという間に熱気が冷めて、お先真っ暗な
気分になっていったのでした・・・・・・。
実は・・・J先生は私がデビュー作で「 準入選 」に入った事を危惧していたの
です。
「 準入選で賞金50万円は、まだ早いぜェ・・・。 佳作( 10万円 )くらい
がちょうど良かったんじゃねェかァ・・・・ 」
一本の作品で50万円も最初にもらってしまうより、一本10万円ぐらいからコツ
コツ始めていった方が良かったのではないか・・・という意味で言われた言葉
だったと思います。 そして、それはまったく正しかったのです。
私の心の中でハングリーな気持ちよりも、階段の踊り場で小さな成果に酔って
いる様な「 油断 」が生じたのです。
「 壁 」は苦しまぎれに描いた作品。 それでもまだ形にはなっていたのですが、
これ以降の作品・・・漫画編集員の話、ある夫婦の話、若い恋人同士の話・・・
全てがボツ。
J先生は私が「 壁 」を発表した頃に、「 ○画家残酷物語 」の○島慎二先生と私
の「 壁 」を比較して・・・
「 おみィ~なんか○島慎二の足下にも及ばねィ~よ! 」
豊かな感性と才能に裏打ちされた○島先生の作品と、私の無能丸出しの作品とを
比較されて、私は完全にグロッキー状態だったのです・・・・・。
そして、J先生が内心では内のスタッフの中で一番将来を楽しみにしていたマ
ツさん( 仮名:松村 祐樹、広島出身、当時33歳 )を引き合いに出して・・・
「 松村が描き出したら、おめィ~なんか、あっという間に追い抜かれる
ぜェ・・・! 」
さらに・・・血の気を失ってダウン寸前の私に、J先生は薄笑い浮かべながら冗
談の様にこんなアドバイスを・・・・
J先生 「 また、ドモ太郎( ドモ五郎の意 )を描け。今度は死ぬまで漫画
を描くの! 」
私 「 し・・・死ぬまでェ・・・・・? 」
J先生 「 そう死んじゃうの! それから、生き返るんだよ! 」
私 「 ・・・?・・・?? 」
J先生「 墓場からゾンビになって生き返る。 で、まだ描くの! ゾンビの
ドモ太郎! イッヒッヒッヒッ! 」
見下す様にJ先生は笑う。 私は自分の傷口に塩でも塗り込まれている様な気分に
なっていました。 まったくこんな話には付いていけなかったのです・・・。
今なら、軽く作品化に向けてシナリオでも作り出していたと思いますが・・・・
本当に落ち込んでいた20年前の私には、自分の進むべき道も次の作品をどうする
かも見えてはいませんでした・・・・・・。
当時( デビューから一年後 )、私の心に突き刺さっていたトゲの様な言葉があり
ます。 誰の言葉だったか忘れましたが・・・・・・( たぶん、編集部で聞いた様
な・・・ )
『 デビューして半年以内にモノに成らない奴はダメ! 』
今でも、この言葉を思い出すと傷のカサブタでもはがされる様な思いがするのです
・・・・。
「 漫画家アシスタント 第5章 その4 」 へつづく・・・
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賞を取った、デビューした=即戦力レベルの技術があるから
じゃないのですか?
新人たちを見ていると痛快にデビューしたのに、その後2年3年たっても上手く行かない。
なぜなんでしょうか・・・
要は、デビューした時点で、達成感をもってしまって、そっから先の向上心や努力を怠ってしまうと。(経験あり)
本当はそこからの道が長くて、入賞はあくまで通過点だと思わないといけないわけですが。
たまに超絶技巧の無名新人が巻頭デビューしてそのまま成功者へ・・なんて場合もありますが、大抵、デビュー前に下積みをしっかりしてたり、別名義で昔デビューしたとか、ちゃんと陰ながら努力してるものです。
>yesさん
ほとんどブログにはコメントしてないはずですが、転載は構いません。
バイタリティー溢れるドモ太郎の葛藤は興味が有りますね~
それから、「コメントが転載」に関しましては、僕は構いませんよ。
デビュー後に上手くいかない新人について、どうしてか・・・なんて、
私が解釈できるかどうか・・・若干疑問ではありますが・・・・・
とりあえず、私の場合は「漫画」を楽しめなくなった事が大きかった
のではないかと思います。 漫画をもっと楽しんでいれば、どんな漫
画を描けば読者が喜ぶか、推察するのはそれ程むずかしくはなかっ
たと思うのです。
30歳を過ぎてからは漫画を全然読まなくなっていたのです・・・(今
もそうですが・・・) これはマズいです! 漫画を読まないのに、
漫画を読む人の気持ちやニーズをつかめるわけがありませんから!
しかし、誰の言葉かは知りませんが・・・ 「幸せな家庭のパターンは
一つか二つだが、不幸な家庭のパターンは無数にある・・・」
この言葉をそのまま利用すれば・・・ 「上手くいく新人のパターンは
一つか二つだが、消えていく新人のパターンは無数にある・・・!」
てな言い方が出来るのでは・・・・・。
>まあみさん へ・・・・・・・・・・・・・・
「デビューしたい!」「賞が欲しい!」そんな気持ちにこだわり過ぎて
「何を描きたいのか?」というより重大な問題から意識が遠ざかれば、
まあみさんのコメントの通り・・・まさに「デビューの達成感」と心中する
わけです・・・。
私には「成功者」の友人がいませんので、よく分りませんが・・・まあみ
さんのコメントの中に全てが含まれているんでしょうね・・・・・・・・・・・
>ちゃんと陰ながら努力している・・・
ps : 転載の件、ご承諾くださりありがとうございました!
>マックフライさん へ・・・・・・・・・・・・・・
私のアドバイスが何かの役に立てれば幸いです。 ところで・・・・・・
漫画を描く夢や悪夢は、自分に「もっとマジメに取り組め!」と励まし
ている・・・自分自身を叱咤激励している事の現れなのではないでしょ
うか・・・・・?
つまり、夢も希望もある!・・・という事ではないかと解釈できます。
逆に、そうした夢を全然見ないとしたら・・・それは返って深刻な・・・
ゆっくりとした低調・・・を意味しているのではないでしょうか・・・・?
まあ、のんびり行きましょう!
>ぱるちゃん へ・・・・・・・・・・・・・・
「ドモ太郎」じゃなくて「ドモ五郎」なんです・・・けども・・・・・・。
うちの師匠は完全に「ドモ太郎」と間違えて記憶していたのです!
まあ・・・どっちでもイイか・・・な・・・と、私も適当でしたが・・・。
マジに『ゾンビのドモ五郎』を描いてみましょうか・・・! でもなァ・・
・・・やっぱ、止めとこかなァ・・・・・・・・・
ps : コメントの件、ご承諾ありがとうございました!
出版おめでとうございます。
私も漫画の仕事をしております。
アシスタントも、アシスタントを使うことも経験し、今はひとりで仕事をしています。
こちらのブログを読んで、J先生はとてもいい先生だと思いました。
「ドモ五郎を描け」は、的確なアドバイスと感じます。
20年前ということですが、いつか、現在に追いつくのでしょうか?
これからも楽しみにしています。
ございました!
>いつか、現在に追いつくのでしょうか?
追いつくんでしょうか・・・? 私にも・・・よく分りませんが・・・たぶん
追いつくと思います・・・。 少なくとも早く追いつきたいと思って書
いております!
ちなみに・・・「ドモ五郎」を描いた当時、主人公は私より10歳年上の
想定でしたが、今では私より10歳年下jになっています・・・。なんだ
か複雑な心境です・・・!
ふと「アシスタントなしでやってる漫画家さんってどのくらいいるんだろう」と思って検索し、偶然ここにたどり着きました。
ブログ、とってもおもしろくて最初から読んでしまいました。
私はイラストで職を得たいと思っている人間で、yesさんの格言が暖かく、そしてグッサリと胸に刺さりました。がんばります。
ところで父親が長年ビッ●コミックを愛読していたので私もずっと浮●雲を読んでました。yesさんがずっと背景を描かれていたのかと思うと感慨深いです。
これは「絵画教室」というフランスの有名な画商兼、美術評論家の
書いた本の中の言葉です。
作品を作るのは、たとえば狩りに出かけるようなものだ。
山に入って獲物を捕ってくるのが、目的だ。鹿や熊のようなおおきな獲物もあるだろう。ウサギや、小鳥のような小さな獲物の場合もあるだろう。しかしそれは、山に入って、獲物に遭遇し、上手くしとめないかぎり、自分のものにはならない。
そして、山の中でどんな獲物に遭遇するかは、誰にも解らない。
技術をみがいたり、画材をそろえたりするのは、狩猟に出かける前に、鉄砲をみがいたり、弾を用意したりするようなものだ。
一生、鉄砲を磨いていて、狩猟に出かけない人がいる。
用量のいい人は、パチンコや、石つぶて、鳥餅などの原始的な道具で、早々と獲物を捕って戻ってくる。
あなたは、どっちだろうか??
ところが、たまに「オマエ努力してねーだろ」と言いたくなるような作家が、うまくいっちゃったりするわけで。
努力は必要だけど、努力した人から順に報われるわけじゃないのが、つらいですねぇ。・・。
>手段と目的
私は鉄砲を磨いてる時間の方が長い気がします。
ちゃんと持ち込みとかには行ってますがね。
準備はしっかりして、そのかわり一度狩りに出ると、ボロボロになるまで帰ってこないタイプ・・?