漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 古い話で章 その25

2014年06月13日 22時04分20秒 | 漫画家アシスタント

 ( この写真は、1969年頃にJプロが入っていた新宿区中落合のマンションの外観です。中央部分の部屋がJ先生の部屋
   でした。随分と古いマンションですが、現在でも写真に収める事が出来るので嬉しい限りです・・・・・・
   《 2014年、5月、撮影 》 )
 
 
  【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】

 
 
                    その25


      《 漫画家アシスタントが・・・・タバコを贈る・・・・・・!? 》


3畳一間に3人の若者が肩を並べて漫画家アシスタントの仕事をしています。

1969年、春から夏、机の上には窓があってその窓から緑の木々が風に揺れるのが見えます。

J先生( ※参照 )は、フスマを隔てた隣の部屋で黙々と仕事をしているのですが、喋る事はほとんど
ありませんでした。

キャラクターが描かれた原稿用紙の余白に、簡単な先生からの指示が書かれてあり、それを確認し
つつアシスタントが適当に背景を加えていくのです。

加川さん( ※参照 )にとって、この仕事場は、以前のアシスタント経験もあって、それほどガチガチ
に緊張していたわけではありませんでした。( 転職慣れしていたのです )

むしろ、お気楽に構える事の出来る仕事場でしたが・・・・・・・・先輩として仕切っていた仲田
さん( ※参照 )は、ちょっと態度が大きい様に見えていわけです。

20歳前後の若者にとって、1、2歳の年の差は、結構大きな違いに感じるものですが、加川さんの方
が2歳年上だったので、年下の仲田さんへの印象が「 生意気 」だとか「 エラそう 」だとか、最初
は好感が持てなかったのです。

そんな中で、16歳の若いK君( ※参照 )が仲田さんから注意を受けるのを見て・・・・・・

 「 Kちゃんは、まだ16歳だよ・・・・・なんで、こんな可愛い奴をいじめるんだよ! 」

そう声を荒げたわけです。

しかし、これは、加川さんの思い出話であり、仲田さんの思い出話ではありません。

 「 俺は、そんな事言ってないと思うよ 」

クールに語る仲田さんは、現在、62歳。 白髪の初老の男性ですが・・・・・・・・・・長身で背
筋の伸びた姿は、年を感じさせません。 若々しく、スポーティーな印象さえ与えます。
 
 
一つの出来事を白い丸い球に例えると、その光の当たっている部分は、真っ白に見えますが、反対
側の影になっている部分はグレーに見えます。

同時に、その中間を見ると、白とグレーとの半分々々に見えます。

同じ球でも、見る角度によってそれは、違う球に見えるわけです。

40年も前の話ですので、起きた出来事に、どんな見方や感じ方があるか・・・・・・・・それは、
人それぞれで良いのだと思います。

その上、私のイイ加減な色眼鏡で写し取られた解釈によって、球が黄色にもピンクにも変わってい
ることだって考えられます・・・・・・・・・・
 
 
これから、少しですが・・・・・・・・仲田さんの話を書いてみたいと思います。
 
彼の話はこんな感じです・・・・・・・・・・
 
 
 「 Kちゃんをいじめた覚えはないよ 」( キッパリと )
 
最初から、仕事場でK君に絵の事で批判や注意などはしていないと・・・・・・・

では、何故、加川さんが怒ったのかでしょうか・・・・・・・・・・・・

 「 俺が、加川さんの絵について批評したからだよ 」

加川さんが描いたオリジナルの漫画作品について、ちょっとキツイ批評をしたそうです。

もっとも、「 キツイ 」と言っても、ただ・・・・・・・・・・

 「 これさ、デッサンが狂ってるよ 」

・・・・・・・・・・と、それだけの批評だったそうですが・・・・・・・・・・

その言葉に、急に反応して加川さんが怒りだしたのだと・・・・・・・・・・

 「 俺は、若い頃は生意気で、確かに印象は悪かったと思うよ 」

優しい笑顔を見せながらちょっと反省する様な感じで・・・・・・・・・・

 「 言い方とか、態度とか悪かったかも知れない・・・・・・・・色々と苦労している
  加川さんから見たら年下のくせに、生意気な奴だったかも・・・・・・・ 」

ただ、仲田さんは、当時、J先生のアシスタントは週に一日だけのアルバイト的な形式でしか仕事
をしていませんでしたから、それほど「先輩風」を吹かせたり、デカい態度を見せていたとも思え
ません。

しかし、実際に「 ケンカ 」は起こります・・・・・・・

加川さんが仲田さんに罵声をあびせるのですが、それは、そんなに大きな声ではなく、先生にも聞
こえていなかったかも知れません。

ですから、J先生がフスマの向こうから笑いながら「 今日はもう終わり 」と言ったのは、夜になっ
て時間が来たから「 今日は、もう終わりにして帰れ 」と言っただけだそうです。

ですから、すっかり外は暗くなっていて、その中を3人で帰って行ったわけです!

その時に、仲田さんの先を歩く加川さんがタバコを探しながら、それを切らしているのが見えた時
・・・・・・・

この時、なぜか・・・・・・・

よく理由が分からないまま、仲田さんは、自然と・・・・・・・ただ自然と・・・・・・・近くの
自動販売機へ行ってタバコを一つ買うと・・・・・・・それをタバコを切らした加川さんに渡した
そうです。
 
仲田さんは、ただ気軽にタバコを買ってあげただけで、特別な思い・・・・・・・謝罪や後悔の念
があっての事ではありませんでした。
 
 「 俺があげたのは、『 ショートピース 』じゃなくて『 ハイライト 』だよ 」
 
40年以上も前の細かい事をよく覚えてる仲田さんである。
 
 
 
      「 漫画家アシスタント 古い話で章 その26 」( 6月20日以降公開 ) へつづく・・・・


            ★前の記事へ→ 「漫画家アシスタント古い話で章 その24」へ戻る 】

 
 
 
 
  【 ※参照 】
 ・J先生・・・・・・・・・・・・・・・有名漫画家、1966年、23歳で売れっ子作家に。70年には週刊
  連載6誌という逸話もある。現在は1誌に連載中。2014年現在、71歳。1969年当時は26歳。
 ・加川さん・・・・・・・・・・・(仮名)中学卒業後、職業を転々としながら漫画家アシスタントに成る。
  1969年19歳で、J先生に師事。1978年に少年キングで連載を得て独立。1984年別冊漫画ゴラク連載。
 ・仲田さん・・・・・・・・・1969年当時、17歳、横浜出身、高校を中退、家出してJプロへ入る。
 ・K君・・・・・・・・・・・・・・1969年当時、16歳、神戸出身、中学を出て東京で就職後、Jプロ
  へ入る。
 
 
 
 

 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 ★ このブログ「漫画家アシスタント物語」が書籍化! 
   詳しくは・・・ 《アマゾンのネット通販》
   
 ★ 拙作、文庫本『 劇画 蟹工船 覇王の船 』も発売中!
   詳しくは・・・ 《アマゾンのネット通販》
 
 ★ 「漫画家アシスタント物語 4章の31~」に書かせてもらったガンさん
   (ブログ本では『ハアさん』)が描いたソープランドの実録漫画を公開
   中です・・・ 特別寄稿「 親不孝通り 」 第40話お父さん

 ★ 拙ブログのうぶ主が1987年にヤングジャンプ新人賞で準入選デビュー
   した作品・・・ 「 雨のドモ五郎 」

 ★ 「漫画家アシスタント物語 第6章の10~」に書かせていただいた
   リョウさんが描いたイラストを公開中です・・・ 「 龍馬さんとボク 」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
 
 

【 各章案内 】   「第1章 改訂版」  「第2章 改訂版」  「第3章 改訂版」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」   「古い話で章 その1」
          
「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」




 

コメント (11)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 漫画家アシスタント 古い話... | トップ | 漫画家アシスタント 古い話... »
最新の画像もっと見る

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
教訓 (みみ)
2014-06-14 11:35:43
おなじ出来事でも、人によって色々な角度からとらえているんですね。

知の教訓

「人間関係は誤解のかたまり」
返信する
ザ・ムーン (適当放送)
2014-06-14 12:07:41
『週刊少年サンデー』において、1972年14号から1973年18号まで掲載された『ザ・ムーン』は、時期的に仲田さんや加川さんたちも、加わった作品なんですね。

https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E7%A7%8B%E5%B1%B1&tbm=isch&imgil=3WCGr8kuTNDfMM%253A%253Bhttps%253A%252F%252Fencrypted-tbn2.gstatic.com%252Fimages%253Fq%253Dtbn%253AANd9GcSFNNoaGphq5m1NFTzd8JA-Bba6133cmpmBVpR4C_0YybI-0Hq2DQ%253B258%253B364%253Bapey67NWhWrvQM%253Bhttp%25253A%25252F%25252Fameblo.jp%25252Fmartind18%25252Fentry-11193590880.html&source=iu&usg=__KggO_F9Pcy1B8da-7DNm3MVNOE0%3D&sa=X&ei=pbWbU9zQDJOF8gWExYDYCQ&ved=0CIwBEP4dMAw&biw=1513&bih=852#facrc=_&imgdii=HO2Y5TMBx99x1M%3A%3BuUPARzUTRucL8M%3BHO2Y5TMBx99x1M%3A&imgrc=HO2Y5TMBx99x1M%253A%3BdLwZSAypm3_7IM%3Bhttp%253A%252F%252Ffifties-graffiti.way-nifty.com%252Fphotos%252Funcategorized%252F2010%252F07%252F18%252F100717moon1.jpg%3Bhttp%253A%252F%252Ffifties-graffiti.way-nifty.com%252Fblog%252F2010%252F07%252Fpost-2f40.html%3B250%3B360

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%B3
返信する
みみさん、適当放送さん、コメントありがとうございました! (yes)
2014-06-14 21:47:42

 >みみさん へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

人によっては、受け取り方や、記憶の残り方などに違いがあるのは当
然なのですが・・・・・・

つい、片一方だけの意見を聞いて、それが事実だと判断してしまう事
が多いのです。

このブログをやり始めて10年になるわけですが、この間、何度もこ
うした単純な判断から、後々、問題を引き起こす結果になり、冷や汗
をかきまくる事が何度もありました。

人は、その記憶を自分にとって都合の良い様に作り変えてしまう、優
れた能力がある様です。


 >適当放送さん へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 >『ザ・ムーン』は、時期的に仲田さんや加川さんたちも、加
 >わった作品なんですね。

はい。

彼ら3人とプラス、一人か二人といった感じで仕事していたと思いま
す。

ちなみに・・・・・

適当放送さんが紹介してくれたgoogle画像検索のページにある漫画で、
一番上の段、左端にある血だらけのキャラクターの顔を立体的に処理し
たのは私です。

通常は、この絵から数えて・・・・8つ目あたりの絵の様に、単純に顔にト
ーンを貼るだけなのですが、私は、独断でこの様に、勝手に先生のキャ
ラの印象をリアルに変えてしまうのが好きでした。

先生から文句を言われた事が無いのをイイ事に調子に乗っています。(今
は、若い頃の様な元気はありませんので、いたって平明な表現で手を抜
いております)

返信する
Unknown (温井里恵)
2014-06-17 02:44:45
突然のコメント失礼いたします。
私、TBSテレビにて深夜の番組の
アシスタントディレクターをしている者です。

管理人様が、過去にご投稿された記事で
http://blog.goo.ne.jp/yes-de/m/200605
もし可能であれば、この記事内のお写真を
お借りさせていただくことはできますでしょうか?

もしご検討いただけるようであれば、
以下のアドレスまでご連絡いただければ幸いです。
詳細をお話できればと思います。

rie.nukui@gmail.co
※最後は.comになります

どうぞ、宜しくお願いいたします
返信する
温井里恵さん、コメントありがとうございました! (yes)
2014-06-17 21:57:51

写真の件は、問題ありません。

先ほど、メールさせていただきましたので、ご確認ください。

返信する
mがないのは、何故でしょう (傍観者)
2014-06-17 23:42:07
rie.nukui@gmail.com
返信する
傍観者さん、コメントありがとうございました! (yes)
2014-06-20 00:53:40

アドレスを自動的に認識してスパムメールを送るシステムがある
ためだと思います。

この悪質なシステムを知らずに、メールアドレスなどを不用意に
ネットに公開すると、毎日、何百というスパムに襲われたりする
場合もあります。

ただ・・・・・・

用心のためとはいえ、「m」を抜いただけでそれが防げるかどう
かは疑問です・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

返信する
質問です。 (ねこねこ)
2014-06-21 09:49:00
Jプロでは、ネームチェックなどは、ありますか。

原稿が出来あがったとき、誰かが出版社に電話して、取りに来てもらうのでしょうか。

それとも、届けに行くのでしょうか。

ここの部分を一部、修正してくれなどと、指摘されることはありますか。

出版社の担当は、男でしょうか。

担当はたまに、変わりますか。
返信する
へんてこな話 (しろちゃん)
2014-06-23 11:45:05
ひさびさに手紙を出そうと思って、80円切手の消費税部分を計算したら、83円なのか、82円なのかまよったので、グーグルで「82円」と打ったら、郵便局ホームベージ

http://www.post.japanpost.jp/question/224.html

郵便局ホームベージが出てきました。

「手持ちの80円切手や50円切手を新料額の82円切手や52円切手に、50円の料額の通常はがきを52円の新料額の通常はがきにそれぞれ交換することはできますか?
新料額の切手・はがきは2014年3月3日に発行いたしますので、それ以降、新料額との差額及び所定の手数料(郵便切手・通常はがき1枚につき5円)をお支払いいただければ交換することができます。

(例)
80円切手1枚を82円切手1枚に交換する場合、
新料額との差額2円(82円-80円)+所定の手数料(5円)=7円
をお支払いいただく必要があります。」

でも、これって2円切手を買って、「80円切手」に「2円切手」を追加貼りすれば済む話じゃないのかと、疑問を感じます。
返信する
ねこねこさん、しろちゃん、コメントありがとうございました! (yes)
2014-06-24 02:07:07

 >ねこねこさん へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

沢山、ご質問をいただき、ありがとうございます。 各質問が、とて
も答え甲斐のある質問で、楽しくコメントさせていただきました・・・・・
・・・・・・・

 >Jプロでは、ネームチェックなどは、ありますか。

「ネームチェック」と言っても、誤字脱字の有無をチェックする程度
だと思います。

 >原稿が出来あがったとき、誰かが出版社に電話して、取りに来ても
 >らうのでしょうか。

原稿が完成するかしないかに関わらず、必ず担当編集員が定時に訪問
してくれます。

仕事の途中と、仕上がり時間を見計らって作業の終わり頃・・・・・・・の
2回です。

 >ここの部分を一部、修正してくれなどと、指摘されることはあり
 >ますか。

誤字脱字でない限り、先生にセリフの注文を言う編集員は一人もいな
いと思います。(先生よりも面白い漫画を描ける人なら別ですが)

 >出版社の担当は、男でしょうか。

9割以上、男性です。

でも、極たまに女性の編集員の場合もあります・・・・・・・編集員の仕事
は誰でも同じなので、特別、女性男性の違いはまったくありません。

ただ、うちのトイレは、相当に汚れているので、女性の編集員にとっ
ては、かなり苦痛なのではないかと思います。

ひょっとすると・・・・・・・・・・用事がある様なフリをして近所のコンビ
ニやスーパーでトイレを借りているかも知れません。

 >担当はたまに、変わりますか。

編集員は、どこの出版社もサラリーマンですので、必ず配置転換が定
期的に行われます。

例えば・・・・・女性雑誌→文芸誌→青年漫画→少年漫画・・・・・など。

そのため、だいたい3年を目安に担当さんが代わります。

担当さんも色々な方がいて面白いです。 アシスタントに気を使って
お土産のお菓子を持って来たり、アイスクリームを持って来たりす
る人。

アシスタントには、まったく気を使わない人など、ホント、色々です。

ちなみに、先生は、情熱的でガンガン先生の事を叱りつける(J、遅いぞ
!とか)タイプの編集員が好きみたいですね。(そんな古武士タイプの人
は、今はいません)


 >しろちゃん へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 >「80円切手」に「2円切手」を追加貼りすれば済む話じゃないの
 >かと・・・・

切手の種類を2円追加に変更するだけで「7円」手数料を取るというの
は知りませんでした。

確かに納得がいかない気もしますね・・・・・

私は、年賀状以外の葉書や手紙をまったく出しませんし・・・・・・昔ほど郵
便局を利用する事もなくなりました。

ひょっとして、郵便事業も斜陽産業なのかも知れませんね。(民間宅配事
業はお盛んですが)

「年賀状」だの「暑中見舞い」だのといった習慣がなくなったら、郵便局
も終わりですね。

返信する

コメントを投稿

漫画家アシスタント」カテゴリの最新記事