A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

コンボ演奏で本領発揮のボビーシューであったが・・・

2015-11-13 | MY FAVORITE ALBUM
塩銀杏 Salted Gingko Nuts / Toshiko Akiyoshi-Lew Tabakin Big Band

先日トランペットのボビーシューが来日した。クリニックが主たる目的の来日であったようだが、何日かプロのミュージシャンとセッションを繰りひろげた。

自分は2回聴くことができたが、一日はアルトの大森明との共演。井上裕一をピアノに加え、バップオリエンテッドなスタイルでの演奏であった。
もう一日は同じトランペットの辰巳哲也との共演。同じ楽器を複数編成するとよく「バトル物企画」となるが、ここではバトルというよりコラボという印象が強い演奏であった。アップテンポの曲をハイノートで張り合い、バラードはメドレーでそれぞれ勝手にというのがバトル物の常だが、ここではアンサンブルからソロの交換に至るまでお互いじっくり語り合うという雰囲気で演奏が展開された。
もちろんこの2人のコラボを支えた守屋純子トリオの素晴らしさもあってだが。オーケストラでのアレンジャー守屋純子もいいが、このようなセッション物のバックも誰とやっても雰囲気作りは上手い。もちろん彼女のピアノのプレーもたっぷりと。

ボビーシューのコンボでのライブ演奏を聴くのは初めてであったが、実に良く謳うトランペットでソリストとしても実に素晴らしい。最近、ビッグバンドでお馴染みの名プレーヤーが単身来日してこのようなセッションをすることが多いが、皆どんなスタイルでも軽くこなし、演奏自体にも多彩さと奥深さそして余裕を感じる。彼らが本当の実力者達だと思う。

さて、ボビーシューというと自分にとってはどうしても「ビッグバンドの人」というイメージが強い。Toshiko-Tabakinオーケストラの立ち上げ時からの主要メンバーであり、バディーリッチのビッグバンドの旗揚げ時のメンバーであり、そしてルイベルソンのビッグバンドでも常連であった。ライブを聴いて、ボビーシューのアルバムと思ったが、こんどコンボ物のアルバムを探してみようと思う。残念ながら自分の手持ちのアルバムはビッグバンドばかり、コンボでの演奏はConcordの初期のアルバムで数枚であった。コンボでのプレーをじっくり聴くのはしばらくお預けだ。

という訳で、秋吉敏子ビッグバンドのこのアルバムを聴く事に。

1978年のダウンビート誌の読者投票のビッグバンド部門でサドメルに替わって第一位に選ばれたのがToshiko-Tabakinのビッグバンドであった。翌年サドジョーンズはサドメルを去り、読者投票、批評家投票両方で秋吉敏子はビッグバンド部門とアレンジャーの両部門の第一位を獲得し、この年に名実ともにNo.1の地位を獲得したことになる。

サドメルもビレッジバンガードに出演するだけのバンドでスタートしたが、10年かけて世界中をツアーするバンドに育っていた。一方のToshiko-Tabakinのビッグバンドは、1973年に西海岸でスタートしたが、活動拠点は西海岸中心であり、コンサートも大学中心であり必ずしも広く全米に知られている訳ではなかった。

4年経って1977年のニューポートジャズフェスティバルに初出演して一気に知名度が上がったが、いきなり一位を獲得したことになる。日本では確実に人気を得てアルバムの数も毎年増えていたが、アメリカではそれらのすべてがリリースされていた訳ではない。玄人受けする活動が評価を得たということだろう。

1978年11月に録音されたこのアルバムが7枚目となるが、ニューポートにも出演し、ダウンビートのポールも獲得した後の、次のステップに飛躍する節目のアルバムともいえる。

秋吉敏子のビッグバンドは基本的に彼女のオリジナル作品、そしてアレンジだ。したがって、オーケストラ全体のサウンドもその作品にすべて影響を受けるが、人気が出たからといってもその作風に大きな変化はない。
このアルバムでは以前のアルバム「孤軍」「花魁譚」のように特に日本を意識した新曲は無いが、特に一般受けする狙いに変ったということは無い。

以前作った自作曲のオーケストラ版がタイトル曲の「塩銀杏」、「レイジーデイ」。スタンダードをやらない代わりにスタンダード曲を意識した曲「チェイシング・アフター・ラブ」がスタンダードの「ラヴァー」のコード進行を使って書かれている。シャッフルのリズムを使って思いっきりスイングする曲も得意で、今回は「サン・オブ・ロード・タイム」で聴ける。

そして、フィーチャーするソリストを決めて作る曲は、パートナーであるタバキンをフィーチャーすることが多いが、このアルバムにはボビーシューのフリューゲルホーンをフィーチャーした曲タイム・ストリームが収められている。今から40年近く前、シューはこの頃から流れるようなサウンドのバラードプレーは得意だった。

やはりこれだけでは満足できないので、今度、シューのコンボ物のアルバムを探してみようと思う。

1. Elusive Dream
2. Lazy Day
3. Chasing After Love
4. Salted Gingko Nuts
5. Time Stream
6. Son Of Road Time

Steven Huffstetter (tp)
Bobby Shew (tp)
Mile Price (tp)
Larry Ford (tp)
Bill Leichenbach (tb)
Randy Aldcroft (tb)
Rick Culver (tb)
Phil Teele (btb)
Gary Foster (as)
Dick Spencer (as)
Lew Tabakin (ts)
Tom Peterson (ts)
Bill Byrne (bs)
Peter Donald (ds)
Mike Richmond (b)
Toshiko Akiyoshi (p)

Produced by Hiroshi Isaka
Rngineer : Ron Malo
Recorded at Devonshire Recording Hollywood California on November 15 &16 1978

塩銀杏
クリエーター情報なし
BMGビクター
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ゼロからの出発であったが、4年でニューポートの舞台にも立てたのもレコード会社の支えがあってこそ・・・

2014-12-26 | MY FAVORITE ALBUM
Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band / Live at Newport ‘77

デュークエリントンが亡くなったのは1974年5月24日であった。その年の暮れ、猪俣猛のビッグバンドはエリントンの追悼コンサートを行ったが、エリントンを追悼する催しは各地で開かれた。そして、エリントンが亡くなる直前に海の向こうでは、エリントンに替わる新たなビッグバンドが立ち上がった。秋吉敏子とルータバキンのビッグバンドだった。

ルータバキンがレギュラー出演していたテレビの仕事(Tonight Show)が‘72年5月にニューヨークから西海岸での制作に移った。そのため、タバキンも活動の拠点を西海岸に変えざるをえなかった。

最初の渡米以来ニューヨークを拠点としていた秋吉敏子も色々悩んだ末、一緒にロスに移ることを決意し、遅れてタバキンの元へ引越しをした。旦那の急な転勤だったが、単身赴任ではなく奥さんも遅れて一緒に同居というパターンだ。共働きで奥さんも仕事を持っていると、なかなか亭主の転勤に合わせて一緒に行くという訳にはいかないのが世の常だが、ジャズミュージシャンというのは個人事業の様なもの。西海岸に行っても仕事はある、かえって新天地で新たな試みをしようと決意し、敏子の西海岸での生活が始まった。

ところが、彼女の場合「音楽はあくまでもArt」。技術だけを生かしたスタジオワークやコマーシャルの仕事はやらない主義であった。夫君のタバキンとカルテットを組んで地元のクラブ出演は始めたが、今一つ本格的な活動には至らなかった。

そこで、彼女が一念発起で始めたのが長年構想を温めていたビッグバンドであった。彼女の場合は、ビジネスとしてのビッグバンドではなく、彼女の書下ろし作品だけをやるリハーサルバンドであった。

自分の音楽の世界をビッグバンドと自分のピアノで表現する、まさにデュークエリントンがオーケストラで続けてきたのと同じコンセプトである。違いは、エリントンの片腕がビリーストレイホーンであったのに対して、秋吉敏子の場合は、サックス&フルートのルータバキンであった。
このタバキンのテナーとフルートがオーケストラ全体のアレンジの中でも、常に重要な位置を占めていった。エリントンは誰がどのようにプレーするかを思い浮かべて曲作りをしたという、秋吉敏子も同じアプローチであったように思う。

ロスは幸いにも若手の腕達者は集まりやすい環境であった。しかしお金にならないリハーサルバンドに人を集めるのは決して容易ではなかった。そこで一肌脱いだのが夫君のタバキン。ミュージシャン仲間に顔が広いタバキンが声を掛けて、早速リハーサルがスタートしたのが一年後の1973年。地元のクラブへの出演を経て、さらに一年後の1974年に初アルバム孤軍が制作された

制作したのは日本のレコード会社ビクター。プロデュースも日本の井坂氏が務めた。秋吉敏子という一応世に名の通ったミュージシャンであったが、そのビッグバンドが果たして世に受入れられるか、そしてアルバムにして商売になるかは分からなかった。
確かに、サドメルを始めとして、バディーリッチやメイナードファーガソンのビッグバンドは当時脚光を浴びていたが、内容は時流にのったブラスロック的な演奏でヒット曲が並ぶ。秋吉敏子のアプローチが受け入れられるかどうかはある種の賭けであった。しかし、当時はまだレコード会社が優れたミュージシャンの優れたアルバムを、リスクを負って世に出す使命を持っていた時代であった。

それから3年。毎年定期的にリリースされるアルバムは好評のうちに話題となり、この間の日本への凱旋ライブを含め短期間で5枚となっていた。最初は日本でリリースされただけであったが、アメリカでもリリースされ、ヨーロッパにも伝わり、徐々に秋吉敏子のビッグバンドはグローバルで、まずは評論家の間で話題となっていった。

すると、コンサートやジャズフェスティバルからもお呼びがかかる。そしてついにニューポートジャズフェスティバルからも出演要請がきた。主催者のジョージウェインは秋吉敏子が初めてアメリカの地を踏み、ボストンで留学生活を始めた時からの知己。ニューポートへの出演も特別に1時間半の枠を与えられての依頼であった。

ただし、ロスからニューヨークまでの旅費は自前ということであった。そもそもリハーサルオーケストラとして運営してきたオーケストラに蓄えがある訳でもなく、ビッグバンドゆえ人数も多く、さて困ったという時に助け舟を出したのは、またもや日本のレコード会社であった。
ライブアルバムを作る費用の一部として旅費を負担することになり、目出度く檜舞台に出演できることに。当時のレコード会社は多くのファンに支えられ、売上が伴うこともあり制作費も多く掛けられたということだろう。

このような経緯を経て、秋吉敏子のビッグバンドは無事ニューポートの舞台にも立ち、その模様はまたアルバムとして残すことができた。

こうなると、流れは順風満帆、その後も着実に秋吉敏子のビッグバンドは歩みを続ける。ダウンビートのクリティックポール、そして読者投票両方で第一位となったのは翌年1978年であった。アルバムInsightはJazz Album of The Yearにも選ばれ、サドジョーンズの去ったサドメルに替わって名実ともにNo,1のビッグバンドとなった。晴れてデュークエリントンオーケストラの後継バンドが生まれたと言っても過言ではないだろう。たまたま、ニューヨークでのニューポートジャズフェスティバルもこの年が最後。まさに時代の変わり目であった。

晩年は、レコーディングには必ずしも恵まれたとは言えなかったサドメル、一方で着実にレコーディングを続けられたToshiko-Tabackin Big Band。レコード会社の支えの違いが大きかったように思う。

昨今、CDの売上が益々減少しているという。音楽ビジネスで、デジタル化とネットの普及によってレコード・CDを販売するというモデルが崩れているというのは世界的な潮流である。それに代わってダウンロードのモデルが果たしてお金になっているのか?最近格差社会という言葉が合言葉のようになっている。あまり業界事情には詳しくないが、音楽の世界もごく一部のヒット曲と、その他大勢のインディーズ、自費制作に分かれてしまっているように思う。

最近、素晴らしいライブを聴く事が多いが、ミュージシャンがこの演奏を続けることを誰が保証し、後世においても残された演奏を聴けるように誰がするのか気になる。金儲けだけを目的とするビジネスモデルは早晩終わりを告げるとは思うのだが・・・。。

Toshiko Akiyoshi (p)
Lew Tabackin (ts,fl)
Steve Huffsteter (tp)
Bobby Shew (tp)
Richard Cooper (tp)
Mike Price (tp)
Bill Reichenbach (tb)
Charlie Loper (tb)
Rick Culver (tb)
Phil Teele (btb)
Tom Peterson (ts)
Gary Foster (as)
Dick Spencer (as)
Bevery Darke (bs)
Don Baldwin (b)
Peter Donald (ds)

All Songs Arranged by Toshiko Akiyoshi
Produced by Hiroshi Isaka
Recording Engineer : Dick Baxter
Recorded live at Avery Fisher Hall, Newport Jazz Festival on June 29, 1977




ライヴ・アット・ニューポート'77 (紙ジャケット仕様)
クリエーター情報なし
BMG JAPAN
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場所やメンバーが代わっても、ベルソンのオーケストラのスインギーな演奏は変らず・・・

2012-03-30 | CONCORD
London Scene / Louie Bellson Big Band

バディーリッチと並ぶビッグバンドドラマーといえばやはりルイベルソン。エリントンオーケストラのスキンディープで有名だが、派手なドラミングだけでなく繊細なドラミングも得意としている。そして、リッチ同様4ビートだけでなく8ビートにも積極的に取り組んだ。違いといえば作曲もやること。このアルバムでもベルソン自らの曲が5曲収められている。

ベルソンのオーケストラはロスを拠点にしているが、時にはツアーやライブに遠征することもあった。このアルバムはイギリスに遠征した時の現地での録音。
編成当初は、ビルベイリー、コンテカンドリ、フランロソリーノ、ドンメンザ、ナットピアースなど西海岸の有名プレーヤーの面々が多く参加していた。今回のメンバーの中で生き残りはバディーリッチやTOSHIKOのオーケストラにもいたトランペットのボビーシュー位だ。後はウェストコーストの新たなメンバーに代わっている。
ビートルズを生んだイギリスであるが、ことジャズに関しては保守的な国と聞くが、このベルソンの新しい流れを組み込んだオーケストラを受け入れる素地は十分だったのだろう、前年に引き続いての訪英であった。

収められている曲は、自身の曲以外もオリジナルが多い。ベイシーライクな曲で始まるが、ブラシュワークがベイシーのキュートにも似ている”Brush me off” はいつものダイナミックなベルソンの違った側面を聴ける、リズミカルで曲名どおり体が動き出しそうな ”The music makes you move”、ボビーシューのフリュゲルホーンをフューチャーしたシューの自作曲”Blue”もシットリした感じでなかなかいい。そして、最後の”Night flight”はメイナードファーガソーンのビッグバンドに対抗できるノリの曲まで色とりどり。
自作曲が多いとはいえ、「難解な事は無し、スイングすることを心がけている」のが、バディーリッチ同様ベルソンのオーケストラの基本スタンスだろう。

このアルバムのプロデュースは、珍しくジェファーソンではなく、Peter Brightman。
聞いたことの無い名前なのでググッテみると、ドラムを叩くジャズ好きのアラブの航空会社のお偉いさんがいる。もしかしたらこの人物かも。Concordのオーナーのジェファーソンも本業はカーディーラーだったので趣味が高じるほど拘りが強くなるので頷ける。
ベルソンはそれまでもアルバム化を前提にしたものでなくとも自主録音を時々やってきた。
Concordの初期のアルバム“150MPH”もいわゆる自費制作・販売していたものを、ジェファーソンが買い上げてConcordで再リリースしたようだが、このアルバムもひょっとして録音が先行したのかもしれない。そのせいかどうか分からないがこのアルバムはCD化されていない。いい演奏だと思うのだが。

ライナーノーツの最後に、「Old man,my eye. Like Concord Jazz, Louis is still young and No.1」とコメントがあるが、まさにベルソンのプレーはConcordのコンセプトの範疇を越えてしまって若々しいのかもしれない。

1. A little syncopation,please     Bellson 3:07
2. Don’t you know I care       Ellington 7:45
3. Brush me off           Bellson 5:15
4. Green light blues         Bellson 6:02
5. The music makes You move    Bellson 6:01
6. Bkue              Bobby Shew 5:07
7. Easy time            Bellson 4:17
8. Night flight           Alan Downey 4:51

Louie Bellson (ds)
Braian O’Flaherty (to)
Frank Szabo (tp)
Bobby Shew (tp,fh)
Alan Downey (tp)
Neil Balm (tp)
Rick Chamberlain (tb)
Clint Sharman (tb)
Hale Rood (tb)
Don Mikkelson (tb)
Joe Ramano (ts)
Arnie Lawrence (as)
Andy Mackintosh (ts)
Kenny Hitchcock (ts)
Bill Jones (bs)
Frank Strazzeri (p)
Phil Lee (g)
John Heard (b)
Tristan Fry (per)

Produced by Peter Brightman
Enginner : Ray Prickeff

Recorded at P.R.studios, London, October 1980

Originally released on Concord CJ-157

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TOSHIKOの成功は、仕事より彼女の音楽を選んだよき伴侶に恵まれたから・・・・・

2012-02-28 | MY FAVORITE ALBUM
Insights / Toshiko Akiyoshi - Lew Tabackin Big Band

秋吉敏子のビッグバンドの成功は、彼女のピアノのプレーはもちろんだが、作編曲そして妥協を許さないリーダーシップに因るところが大きい。それが次第にオーケストラ全体の結束を生んでいったように思う。彼女のオーケストラはTOSHIKO-TABACKIN Big Bandといわれるように、夫君であるルータバキンの存在も大きい。豪快なテナー、そして熱っぽいフルートはバンドの看板として不可欠だが、彼女のよき理解者としてのパートナーとしての立ち位置も彼女にとっては大事であったろう。

彼女たちが、長年住み慣れたニューヨークを離れてロスに移り住んだのも、そもそものきっかっけはルー・タバキンの仕事が理由だった。’70年から、ルータバキンは、あのドックセベリンセン率いる”Tonight Show Big Band”のレギュラーメンバーだった。サックスセクションの一員として週5日このビッグバンドが仕事場で、確かに収入は安定していたかもしれない。が、タバキンはそこで一度もソロをとることもなかったという。そのTonight Show自体の放送拠点がニューヨークからロスに移ることになり、オーケストラの面々も西海岸に移っていった。もしかして、彼らが西海岸に移らずにニューヨークに留まったらこのバンドも生まれなかったかもしれない。何がきっかけになるか分からないものだ。
そして’74年、TOSHIKOのオーケストラが立ち上がった時、タバキンはまだその仕事を続けていた。

'76年の新年早々の日本ツアーを成功裡に終えて、帰国の途に着いたTOSHIKOのオーケストラは更なる飛躍をすることになる。2年間で矢継ぎ早にアルバムを出していたが、次なるアルバムを早速録音することになった。それが、このアルバム“Insights”だ。
何といってもB面の“MINAMATA”が大作だ。平和な村が水銀の恐怖で一転水俣病の恐怖に襲われる。今の福島と何か通じるものを感じる。TOSHIKOには広島の作品もある。いずれ福島も作品になるかもしれない。
初アルバム以来、彼女のオリジナルの曲、アレンジの表現の場としてのオーケストラはそのコンセプトを変えずますます進化を続けたが、内外の評判にも支えられより、その時点で確固たるものになったといえよう。

もうひとつ、この年はオーケストラが次なるステップに踏み出したといえる出来事があった。それは、ルータバキンがTonight Showのオーケストラを辞めたことだ。それはTOSHIKOとのオーケストラの活動に軸足を移したということに他ならない。もちろん、単発のスタジオワークは続けたが、安定的な職場を離れるということは、本来の進むべき道に不退転の決意で臨んだということだと思う。普通の会社勤めの世界でも、会社を替わるのはともかく、色々不満はあっても独立して自営で仕事をするという決断はなかなかできないものだ。彼の場合は、お金よりもきっとTOSHIKOと一緒にジャズをもっと極めようということだったに違いない。亭主にそのような決心をさせることができたのも、敏子の音楽が魅力に満ちていた証拠だろう。

そしてこのアルバムを録音してすぐに、ダウンビートの批評家投票で、この年のオーケストラとアレンジャーの新人部門の一位を得る。いよいよ順風満帆での船出になった。


1. Studio J Akiyoshi 6:00
2. Transience Akiyoshi 4:33
3. Sumie Akiyoshi 7:50
4. Minamata: Peaceful Village/Prosperity & Consequence/Epilogue Akiyoshi 21:37

Toshiko Akiyoshi (p)
Lew Tabackin (ts,fl)

Steve Huffsteter (tp)
Bobby Shew (tp)
Richard Cooper (tp)
Jerry Hey (tp)
Mike Price (tp)
Bill Reichenbach (tb)
Britt Woodman (tb)
Jim Sawyers (tb)
Phil Teele (btb)
Tom Peterson (ts)
Gary Foster (as)
Dick Spencer (as)
Bill Perkins (bs)
Don Baldwin (b)
Peter Donald (ds)

Michiru Mariano (Voices)
Tadao Kamei (Ohtsuzumi)
Hayao Uzawa (Kotsuzumi)
Hisao Kanze (Utai)
Hiromitsu Katada (kakko)

Hiroshi Isaka Producer
Joe Lopes Engineer

Recorded on June 22,23 & 24, 1976
at RCA Studio "A" Hollywood,Califprnia

インサイツ
秋吉敏子,ルー・タバキン・ビッグ・バンド
BMG JAPAN
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立ち上げから3年・・・・・・・満を持して故国に凱旋

2012-01-23 | MY FAVORITE ALBUM
Road Time / Toshiko-Tabakin Big Band

サドメルが3度目の来日を果たし、フランクフォスターオーケストラの置き土産を残して帰国してまもなくして、年が明けた1月に引続き大物ビッグバンドが来日した。TOSHIKO-TABAKIN のビッグバンドだ。
74年に初めてのアルバムを出し西海岸でセンセーショナルにスタートしたが、短期間に3枚のアルバムを制作し、75年にはモンタレージャズフェスティバルにも参加するなど確実に活躍の場を固めていた。そして、その中でこの76年の日本ツアーは早い時点でプランされた。サドメルのあまりに突然の訪問と異なり、来る方も待つ方も十分にその日のための期待が高まった中での来日であった。

この来日時の演奏が2枚組みのアルバムで残されている。タイトルは”Road Time”。いわゆる地元を離れてのどさ回りだか、このツアーはTOSHIKOにとっては故郷への凱旋。単なるツアーとは全く位置づけが違ったであろう。もちろんメンバーもその意味を充分に理解してのツアーであったと思う。

すでに3枚のアルバムが出ていたが、それらに収められているのはすべて彼女のオリジナル曲、そしてオリジナルアレンジだ。まさに作品集といった趣である。会場は中野サンプラザホールを始めとして各地の大ホール。当時は多くのライブがこのような大ホールを満員にしていたものだ。コンサートではそれらの曲が順次演奏されるが、まさいライブというよりも、コンサートという表現の方が適切であろう。演奏の完成度も高く、初期のTOSHIKOのビッグンバンドの集大成といってもいい演奏だ。

オープニングから、いきなりメンバー紹介が始まる。これも珍しい。そしてチューニングを兼ねてそのまま曲がスタートする。彼女の曲は日本の伝統や文化とアメリカの文化であったジャズをうまくミックスした点にある。もちろん曲によってその度合いや色合いが異なるのがまた魅了の一つであろう。
最後の曲は、このツアーのために作った曲“Road Time Shuffle”、その名の通りシャッフルのリズムに乗った実にスインギーな演奏で幕を閉じる。

メンバーは、バリトンサックスのビルパーキンストロンボーンのビルウッドマン以外は、レギュラーメンバーである当時の西海岸の中堅、若手のベストメンバーがそのまま来日している。ウッドマンに代わって、かってサドメルのメンバーであったジミーネッパーが急遽ニューヨークから参加したというのも何か因縁めいている。

このアルバムが出た時点で、TOSHIKOのビッグバンドのアルバムを先行して出していたのは日本のRVCで日本ではどのアルバムもよく売れていた。アメリカではまだ1枚だけが世に出ただけでまだ全国区の人気というものではなかった。ヨーロッパでもこれからという状況であった。日本の優れたプレーヤーがアメリカのミュージシャンを集め、日本のレコード会社が世界に通用するアルバムを作っていた時代だ。経済的にもこの時期からバブルにかけて日本の絶頂期であったが、音楽、レコード作りも同様であったのかもしれない。



1. Tuning Up
2. Warning Success May Be Hazrdous To Your Health
3. Henpecked Man
4. Soliloquy
5. Kogun
6. Since Perry / Yet Another Tear
7. Road Time Shuffle

Steven Huffstetter (tp)
Bobby Shew (tp)
Richard Coooper (tp)
Mike Price (tp)
Bill Reichenback (tb)
Jim Sawyer (tb)
Phil Teele (btb)
Dick Spencer (as)
Gary Foster (as)
Lew Tabakin (ts,fl)
Tom Peterson (ts)
Bill Byrn (bs)
Toshiko Akiyoshi (p)
Don Baldwin (b)
Ptyer Donald (ds)

Kisaku Katada (Kotuzumi)
Yutaka Tazaki (Ohtuzumi)

Produced by Hiroshi Isaka
Recoding Engineer Eiji Uchinuma

Recorded live in Japan
January 30, 1976 at Nakano Sun PrazzaHall Tokyo
Feburuary 7, 1976 at Kosei Nenkin Kaikan, Osaka
Feburuary 8, 1976 at Sankei Hall, Osaka

ロード・タイム(紙ジャケット仕様)
Toshiko Akiyoshi
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ますます磨きのかかった3作目・・・

2011-11-21 | MY FAVORITE ALBUM
Tales Of A Courtesan / Toshiko Akiyoshi & Lew Tabackin Big Band


先日宮嶋みぎわBig Bandのライブに行って久々に興奮した。
ビッグバンドだけでなく、彼女のあらゆる方面での最近の活躍にはその取組姿勢を含めて感嘆するばかりだ。自分の限界への挑戦は誰もが人生のどこかで一度は経験してもいいと思う。自分も30代の頃、寝食を忘れて仕事をした時期がある。結果上手くいったこともあれば、見事に失敗したこともある。今思い起こせば若気の至りで無謀なこともやったが皆いい思い出であり、その後の人生で間違いなくその時の経験が次のステップでの礎になっている。

女性のピアニストであり、作編曲であり、そしてビックバンドのリーダーとして宮嶋の大先輩は秋吉敏子だろう。TOSHIKOがビッグバンドを編成したのはニューヨークからロスに居を移した翌年1973年だ。彼女が44歳の時。様々な経験を経て、まさにベテランの域に達した時期だった。
一年後に初アルバム「孤軍」を発表し、続けて「ロングイエローロード」を出した。秘めていたアイディアを続けさまに世に出した。翌年は各地のジャズフェスティバルにも参加し、徐々に全国区で知名度が上がっていったが、その年の年末に録音した続く3作目がこのアルバム「花魁譚」だ。
10年近くの歴史を経て、すでに名声を得ていた東のサドジョーンズ&メルルイスのオーケストラに対して、西のTOSHIKO&TABACKINのオーケストラも短い期間で一気に有名になっていった。
サドメルがニューヨークのスタジオミュージシャンが集って生まれたのと同じように、敏子のオーケストラは西海岸の若手中堅のスタジオミュージシャンが集った。顔ぶれを見ると錚々たるメンバーが集っていたが、トランペットセクションの端には、今は日本で活躍しているMIKE PRICEも一作目から引続き参加している。

宮嶋とTOSHIKOのオーケストラの共通点は、基本的に自分のオリジナル曲を自分のアレンジで演奏することだ。
敏子の曲はこのアルバムのタイトル曲のように日本の歴史、風景、風土、社会に題材を求めた曲と、長く住み慣れたアメリカの風土を題材にした曲が共存している点だが、アメリカ人の曲以上にアメリカらしさが出ている曲もある。このアルバムでも新旧取り混ぜてバランスよく収められている。曲作りではTOSHIKOに一日の長があるがこれは経験の差で仕方がない事だ。そしてTOSHIKOのビッグバンドの歴史はこの時まだ始まったばかり、その後も多くのアルバムが続き現在に至っている。TOHIKO&TABACKINはまだまだ現役だ。
TOSHIKOのビッグバンドはサドメルよりも10年近く遅くスタートしたが、どこかで追いつき追い越した。宮嶋もまだ若い2作目、3作目に期待したい。

1996年のStrive for Jive



1. Road Time Shuffle          Akiyoshi 6:30
2. Tales of a Courtesan (Oirantan)   Akiyoshi 9:15
3. Strive for Jive           Akiyoshi 7:51
4. I Ain't Gonna Ask No More      Akiyoshi 6:11
5. Interlude              Akiyoshi 4:17
6. Village               Akiyoshi 11:09

Toshiko Akiyoshi Piano
Dick Spencer Clarinet, Flute, Sax (Alto)
Lew Tabackin Flute, Piccolo, Sax (Tenor)
Gary Foster Clarinet, Flute, Sax (Alto), Sax (Soprano)
Tom Peterson Clarinet, Flute (Alto), Sax (Tenor)
Bill Perkins Clarinet (Bass), Flute (Alto), Sax (Baritone)
Richard Cooper Trumpet
Steve Huffsteter Trumpet
Bobby Shew Trumpet
Mike Price Trumpet
Bill Reichenbach Jr. Trombone
Jim Sawyers Trombone
Phil Teele Trombone (Bass)
Britt Woodman Trombone
Charles Loper Trombone
Don Baldwin Bass
King Errisson Conga
Peter Donald Drums

Hiroshi Isaka Photography, Producer
Ami Hadani Engineer, Mixing Engineer

Recorded on Dec.1~Dec.3, 1975














花魁譚
クリエーター情報なし
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ダイナマイトに勝る爆発物はあるか・・・・・

2011-06-24 | CONCORD
DYNAMITE / LOUIE BELLSON BIG BAND

世の中原発騒ぎが収まる気配が無い。昔は原子力といえは核爆弾にしても原子力潜水艦にしても軍事利用がもっぱら。空気を利用しないでタービンを回せる潜水艦用の原子炉が岡に上がって原子力発電所の発電装置の基盤として使われることになった。原子力潜水艦はいつも水の中、例え事故が起っても今回のような冷却水が無くなる事はありえなかった。今回のような暴発の危険性は無いが、原子力潜水艦の多くが退役している。潜水艦の原子炉はどうやって廃炉にしているのだろうか?まさかそのまま海の中に沈めてしまったのではないかと気になる。

原子力は放射能が怖いが、やはり一番の恐怖は核爆発。一瞬で周辺を跡形も無く焼き尽くす恐ろしさは通常の爆発物と比較にならない。
 カウントベイシーの「アトミックベイシー」といわれている名アルバムがあるが、ジャケットの核爆発の写真が印象的だった。演奏はそれほどぶっ飛んでいるわけでもなく、ご機嫌なベイシー節が抑えられている。今回はベルソンのアルバム。ルイベルソンのビッグバンドは、一時"The Explosion Orchestra"と呼ばれていた、そしてそのドラミングは“Bellson's bombastic drumming”とも言われていた。今回のアルバムタイトルは「ダイナマイト」。点火され、まさに爆発寸前の写真も記憶に残っていた。

 以前ブログを書いていたとき、Concordのアルバムを最初からたな卸しをしていた。前回が、CJ-104だったので今回は105。ルイベルソンのアルバムだ。ビッグバンドが続いていたのでその勢いで、このシリーズも復活してみよう。
 コンコルドでのルイベルソンのアルバムはこれで6枚目。これまでコンボとビッグバンドの両方の演奏があるが、今回は全編ビッグバンド。Concordの最初のビッグバンド物はすでに録音された音源を買い取ったもの。今回は、’79のコンコルドジャズフェスティバルのライブで、正真正銘コンコルドのオーナーカールジェファーソンの一連の企画の中の作品だ。その年のフェスティバルのプログラムの最終日、取りを勤めたのがこのベルソンのバンド。否が応でも盛り上がりを見せるので全編大フィーバーかと思いきや・・・・
 ドンメンザのサンバのリズムに乗った曲でスタートし、ベルソンの作曲の2曲目 Deliveranceは綺麗なバラード。ビルホルマンのアレンジもGood!・・・と続き、最後のExplosionでその名の通りやっとバンド全体で「大爆発」。ベルソンのドラムソロで幕を閉じる。

 ベルソンのドラミングはスキンディープの印象があるが、実はただひたすら叩きまくるのではなく曲に合わせて実に柔軟に対応する。ドラマーには珍しく曲作りを自分でするからかもしれない。原子力と同じで、ここ一番の爆発力はいざという時は使うものの、普段はその力を目的に合わせてコントロールし、決して「再臨界」には陥らないようにするのが、ビックバンドドラマーの理想かもしれない。決してダイナマイトの爆発のように単調で一発勝負ではない。



1. Sambandrea Swing  Menza 7:02
2. Deliverance  Bellson 8:14
3. Concord Blues for Blue  Bellson 8:23
4. Cinderella's Waltz  Menza 5:33
5. Where Did You Go?   Bellson, Hayes, Lee 6:41
6. Explosion  Catingub 11:59

John Thomas (Flugelhorn, Trumpet)
Bobby Shew (Flugelhorn, Trumpet)
Ron King (Flugelhorn, Trumpet)
Nelson Hatt (Flugelhorn, Trumpet)
Walt Johnson (Flugelhorn, Trumpet)
Dana Hughes (Trombone)
Alan Kaplan (Trombone)
Bob Payne (Trombone)
Nick Dimaio (Trombone)
Dick Spencer (Clarinet, Flute, Piccolo, Saxophone)
Don Menza (Composer, Sax (Tenor))
Gordon Goodwin (Sax (Tenor))
Andrew MacKintosh (Sax (Baritone))
Matt Catingub (Arranger, Clarinet, Composer, Flute, Sax (Alto))
Frank Collett (Piano)
John Chiodini (Guitar)
John Williams Bass, Bass (Electric)
Jack Arnold (Percussion, Vibraphone)
Louie Bellson (Composer, Drums)

Bill Holman Arranger
Phil Edwards Recorder, Remixing
Carl Jefferson Producer
Carl E. Jefferson Producer

Recorded live at Concord Jazz Festival on Aug. 1979

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ジャケットのイメージと中身の演奏の相関関係は・・・・

2008-02-03 | MY FAVORITE ALBUM
Sunshine Rock / Louie Bellson & The “Explosion” Orchestra

CD時代になってあまりジャケ買いということがなくなったように思う。
LP全盛期、レコード箱を一枚一枚繰りながらお目当てのレコード探しで、決め手となるのはまずはジャケットのデザインだった。目立つジャケット、お気に入りのミュージシャンのクレジットを瞬時に見分けながら。さらには、自分の知らない掘り出し物をよく探したものだ。
初めて見るアルバムでも魅力的なジャケットは、思わず手にしてしまうことが多かった。
それは、デザインであったり、メンバーの組み合わせであり、レーベルであることも。
ジャケットの情報だけで中身も聴かずにあれこれと思案をめぐらし、結局買ってしまうジャケ買いはジャズの楽しみのひとつだ。最近CD棚を眺めてもなかなかその気になれないのは、その形状と置かれ方のせいかのか? 仕方がないことなのだが・・・。

家に帰って、ジャケ買いしてしまったアルバムからレコードを取り出してターンテーブルに乗せる。わくわくもするし、緊張する一瞬だ。
当然「あたり」のこともあれば「外れ」のことも。ジャケ買いした時点で、自分の頭の中では妄想が広がっているので、その基準はかなり主観的なものだが。

ジャズファンにとっては色々意味のあるジャケットデザインだが、ここに一枚のアルバムがある。「ルイベルソンのサンシャインロック」。
各レーベルのジャケットの方針も色々ある。すべてデザインイメージを統一したものがあるが、その中のひとつがこの”PABLO”だ。おなじみの黒を基調としたモノトーン。ミュージシャンの写真でデザインされている。パブロ自体のレーベルイメージもできあがっている。よくも悪くも自然と演奏内容のイメージができてしまう。

肝心のミュージシャンはというとルイベルソン。これもイメージが出来上がっている。おなじみの2ベースドラムで、ビッグバンドのプレーがよく似合う。このアルバムも、ビッグバンド物だ。

そして、タイトルの“SUNSHINE ROCK”。これが、今一つアルバム全体のイメージとは合わない。
燦燦と光り輝くカリフォルニアの太陽であればパブロのイメージでもないし、ROCKとなるとなお更だ。

実際の演奏はとなると、”Sunshine Swing” , “Feels So Good” そして”The Hawk Talks”の3曲はエレキピアノやフェンダーベースが入って16ビートやボサノバ風のリズムも。”Rich Outing”はバディーリッチを意識したような曲。そして”Niles Blues”はベイシー風のブルース。
全体的にリズムやテンポとバリエーションが多彩だ。そして曲の中でも変化が大きい。
ベイシースタイル一辺倒ではなく、当時のBIGBANDの新しい流れをうまく取り入れている。
もちろん、どんなリズムでもベルソンのドラミングが活躍する。ピアノのナットピアスやキャットアンダーソンなどのベテランがいたと思えば、ギターには若手のガイスマンも。メンバーにはベテランに加えて若手の有望株も参加している。
そして、アルトには先日Concordのアルバムで紹介したまだ18歳のテッドナッシュがいる。
実は、このナッシュの経歴にベルソンのオーケストラにいたことが書いてあったので、さっそく探してみた次第。

こんなきっかけで久々に聴きなおしてみたが、ベルソンのやる気を感じさせる新旧のバランスがとれた元気なオーケストラだ。
このバンドであれば、パブロの黒のイメージではなく、白地に光り輝くカリフォルニアの雰囲気を感じさせるデザインが施されたジャケットがお似合いだったかもしれない。

1. Sunshine Swing
2. Mid-Eastern Spango
3. Night Birds
4. Feels So Good
5. The Hawk Talks
6. Rich Outing
7. Niles Blues
8. Numero Uno

Louie Bellson (ds)
Cat Anderson , Bobby Shew , Conte Candoli , Walter Johnson , Ron King (tp)
Bob Payne , Alan Kaplan , Dana Hughes , Nick Di Maio (tb)
Dick Spencer , Ted Nash (as,fl)
Pete Christlieb , Don Menza (ts)
Andy Macintosh (bs)
Nat Pierce , Ross Tompkins (p)
Grant Geissman (g)
John Heard (b)
John Arnold , Gene Estes (per)

Produced by Norman Granz
Recorded on Dec.21-23,1977, at Group Ⅳ Recording Studios , Hollywood
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スイングする重戦車が西海岸を驀進・・・・

2008-01-26 | CONCORD
The Capp / Pierce Juggernaut Featuring Joe Williams Live At The Century Plaza

ジャガーノート、ジャガナート (juggernaut) は、止めることのできない巨大な力、圧倒的破壊力の意味を持つという意味だそうだ。イギリスでは巨大な重量を持つトラックの意味にも使われているとか。そもそも、「ジャガーノート」の語源はヒンドゥー教のヴィシュヌ神の八番目の化身であるクリシュナの異名、ジャガンナート (Jagannāth) である。

このバンドが結成されたのは1975年。
バディーリッチやウディーハーマン、メイナードファーガソン、サド・メルそしてドンエリスのオーケストラなどが活躍はしていたが。みな徐々に現代風に衣替えをしていて、昔懐かしいビッグバンドサウンドとは違った趣になっていた。

その中に突然登場したこのオーケストラ。コンセプトは徹底的に楽しいバンド。ベイシーであり、昔のハーマンであり、そのスタイルを徹底的にコピーした。
首謀者は、ドラムのフランキーキャップとピアノのナットピアース。キャップはケントンオーケストラでシュリーマンの後釜を努める。ピアースはハーマンのバンド出身。
メンバー達は、それができるベテラン中心。重戦車になる要素はすべて揃った。

演奏する曲も、ピアスの曲以外にも2人が50年代から集めていた多くのアレンジを使った。
このアルバムにも、アルコーンが60年代にハーマンバンドのために書いて没になった“TARRAGON”という曲も収められている。
それで、戦闘準備は整った。

1曲目は、40年代を思わせるリフスタイルのよくスイングする曲。次のピアースの曲はそのままベイシーのオーケストラになりそう。リズムセクションが素晴らしい。そして、ベニーカーターの”SOUVENIR”は色々なプレーヤーが演奏しているが、ここではロイヤルが、亡きリッチーカムカに捧げたアルトプレーが見事だ。

重戦車が軽快に驀進する。

ライナーノーツの書き出しに、「このバンドの楽しいスイング感で席を放り出されないようにシートベルトをつけて下さい」との一言が。これが、このオーケストラの特徴を表している。

Concordで2枚目のアルバムになるが、前作に続いて今回もライブ録音。
おまけに、ゲスト歌手がジョーウイリアムス。ホテルのホールで聴衆を相手にしたライブ特有のノリで張りのある喉を披露する。バックは当然のようにベイシーオーケストラの様相を呈する。

昨今、日本では「偽表示問題」が毎日のようにニュースネタになっているが、本物の元気が無い時にこのような「偽物」は大歓迎だ。メンバーには、ウェストコーストジャズ全盛期に活躍したボブクーパー、ベイシーオーケストラで活躍したマーシャルロイヤル、他のメンバーも皆西海岸のつわもの揃いなので中身は「偽者」ではなく本物だ。

1. Fiesta in Brass              Mundy 3:44
2. Basie's Deep Fry             Pierce 5:21
3. Souvenir                 Carter 4:01
4. Capp This!                Pierce 4:54
5. Tarragon                 Cohn 4:45
6. Swing Shift                Clayton 4:25
7. Joe's Blues                Williams 10:43
8. What the World Needs Now Is Love     Bacharach, David 2:18

Carl Jefferson Producer

Nat Pierce (p)
Frank Capp (ds)
Al Aarons , Bill Berry , Bobby Shew , Frank Szabo (tp)
Garnett Brown , Buster Cooper , Alan Kaplan , Britt Woodman (tb)
Bob Coope , Marshall Royal , Bill Green , Lanny Morgan , Herman Riley (sax)
Ray Pohlman (g)
Chuck Berghofer (b)
Joe Williams (Vocals)

Recorded Live at the Century Hotel Plaza, Los Angels
Originally released on Concord CJ-72 , Jul 21, 1978

The Live at the Century Plaza
Frank Capp,Pierce Juggernaut Band with Joe Williams
Concord Jazz

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BUDDY RICHのオーケストラも若手新人を数多く育てたが・・・・・・・

2007-11-04 | MY FAVORITE ALBUM
BIG SWING FACE / THE BUDDY RICH BIG BAND

Toshiko-Tabakinのアルバムを聴いてそのメンバーのリストを見渡す。
“Bobby Shew”の名前が目に留まる。このアルバムではメインのソリストとして見事なソロも聴かせてくれた。そう、Chuck Floresのアルバムにも加わっていた
彼の名を知ったのは、Buddy Richのオーケストラ。‘66年のリッチの新編成されたバンドに20代の新進気鋭のメンバーとして参加していた。
今も現役。息の長いプレーヤーだ。

Shewの参加していたリッチのNewオーケストラの第2作がこのアルバム。
この頃の学生BANDは、皆といって良いほどこのリッチのオーケストラの曲をレパートリーに加えていた。
当時のビッグバンドファンであれば誰もが一度は聴いたことがあるであろう。いや、ジャズ喫茶でもよくかかっていた記憶がある。
それまで実績のある有名ドラマー、バディーリッチのニューアルバム、そしてニューバンドだったからだろう。イージーリスニング風のアルバムが多くなって来た時、このようなストレートなジャズが待望されていた。
それに、彼のドラムは大音量で聴くと一層迫力が増す。ジャズ喫茶のサウンドにも良く似合う。
リッチの圧倒的に存在感のあるドラムとリーダーシップ、そしてパンチの効いたサウンドが、沈滞気味であったビッグバンド界に喝を入れた。
ソロだけでなく、アンサンブルに合わせて歯切れの良いドライブ感を生み出すドラミング。リッチのドラミングは、ビッグバンドのために生まれてきたようだ。

前作に引き続き“Club Chez”でのライブ。リッチのオーケストラはライブがよく似合う。
同じ頃スタートしたサド・メルがベテランを中心にしたリハーサルバンドであったのに対してこちらは若手中心のレギュラーバンド。ボビーシューのほかにも若き日のアーニーワッツがアルトで参加している。

CDで再発されるに際して、未収録の曲が9曲も追加され躊躇無く買い直したアルバムだ。
ミディアムテンポ以上のアップテンポの曲ばかりで、本格的なバラード演奏が無かったが。追加された曲の中に、レスターに捧げた曲“Lament For Lester”がある。
たまには、リッチのオーケストラのバラードプレーもいいものだ。
CDで再発にあたって、ステージでの演奏を極力再現したとのこと。
ホットな演奏の合間の清涼剤は必要だ。

このアルバムの"The Beat Goes On"ではリッチの娘のキャッシーの歌がLPの時から入っていた。これも、一時の清涼剤であったが、今回録音のデータををじっくりと読むと、彼女の歌はライブではなく後でオーバーダビングされたらしい。
会場で父をバックに歌う彼女の姿を想像していたのだが。


1. Norwegian Wood
2. Big Swing Face
3. Monitor Theme
4. Wack Wack
5. Love For Sale
6. Mexicali Nose
7. Willowcrest
8. The Beat Goes On
9. Bugle Call Rag
10. Standing Up In A Hammock - (previously unreleased)
11. Chicago - (previously unreleased)
12. Lament For Lester - (previously unreleased)
13. Machine - (previously unreleased)
14. Silver Threads Among The Blues - (previously unreleased)
15. New Blues - (previously unreleased)
16. Old Timey - (previously unreleased)
17. Loose - (previously unreleased)
18. Apples (aka Gino) - (previously unreleased)

<Personnel>

Buddy Rich (drums)
Quinn Davis (alto sax); Ernie Watts (alto sax, flute)
Jay Corre, Robert Keller (tenor sax, flute)
Marty Flax (baritone sax)
Bobby Shew, Yoshito Murakami, Charles Findley, John Scottile (trumpet)
Jim Trimble, Ron Meyers (trombone)
Bill Wimberly (bass trombone)
Ray Starling (piano)
Richard Resnicoff (guitar)
James Gannon (bass)

Cathy Rich (vocals)

Recorded at United Recording and live at the Chez Club, Hollywood, California on February 22-25 and March 10, 1967

Big Swing Face
Buddy Rich
Blue Note

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日本の文化をアメリカ生まれの音楽に融合し・・・・・・・オーケストラで表現すると

2007-11-02 | MY FAVORITE ALBUM
LONG YELLOW ROAD / TOSHIKO-TABAKIN BIG BAND

先日、ドラマーのChuck Floresのアルバムを聴いて、彼がToshiko-Tabakinのオーケストラにいたことを知る。そして、久々にこのアルバムにたどり着いた。
何度も聴いたアルバムだし、このオーケストラのライブには何度も足を運んだ。
なのに、あまり気にもとめていなかったドラマーだった。

ビッグバンドの魅力は、アンサンブルとソロ、作曲と編曲、バンドカラー、それを実現するためのメンバー達。それらすべてが組み合わさると最高の演奏が聴ける。
ビッグバンドを率いるリーダーは、常にこれを目指して頭の中で試行錯誤していることであろう。
これを実現できるオールマイティーの能力を持つリーダーが現れると、突然素晴らしいバンドが誕生する。めったにあることではないが。

サドジョーンズのオーケストラもそのひとつであろう。彼の場合は曲のイメージが浮かぶと、一気にオーケストラの全体の構成も頭に浮かび譜面になると言われているが。頭の中は一体どのような構造になっているのだろう。だからこそ、彼の指揮ひとつでその時の気分でオーケストラを生き物のように変化させることもできるのだろう。

サド・メルが生まれてから10年近く経ち、同様なバンドがまた西海岸で生まれる。
秋吉敏子のオーケストラだ。

このようなバンドを実現するには、色々な難関を乗り越え実際に誕生させ、さらに活動を続けるには必ずといって良いほどそれを支える協力者が必要だ。
中でも、音楽的にも支える単なる協力者以上の相棒(パートナー)が一緒にバンドメンバーの中にいると、よりよい結果を生むような気がしてならない。

サドジョーンズにとってのメルルイス。
そして、秋吉敏子にとっては、良き伴侶でもあるルータバキン。

バンマスとコンマスの関係。
委員長と書記長。
首相と官房長官。
CEOとCOO。
監督とキャプテン
・・・・・・何の世界でも、この2人の関係が実に重要だ。

このオーケストラが誕生したのは1974年。
レコードのデビューは「孤軍」というアルバムだった。
それに続く第2作が、このアルバム「ロングイエローロード」。
両方は姉妹作といっていいかもしれない。彼女が暖めていた構想を、彼女の過去からの作品を用いて、同じコンセプトで次々とオーケストラの作品に描かれていった。アルバム2枚分の素材は最初の録音時にはすでに用意されていたそうだ。

ジャズの魅力はやはりアドリブを格とした偶発性と意外性。
しかし、オーケストラの場合は、白地のキャンパスにプレーヤー達が勝手に絵をかくのではなく、全体の構成はかなり部分リーダーのイメージが全体の構成力に影響する。

聴きなれた曲だが、何度聴いても新鮮だし、Toshiko-Tabakin Big Bandならではの個性に満ちた演奏だ。
全体的には綺麗なサウンドだが、鋭さもあれば柔らか、そして物悲しさもある。
ジャズの世界の寂しさを感じさせるブルースと一転して明るいハッピーなサウンドとは一味違う。女性らしさという一面もあるが、本質的には日本文化の「ワビとサビ」に通じるものなのだろう。

木管楽器の微妙な音色のハーモニー、意表をつくような楽器の組み合わせ、ソロのアンサンブルのバランス、どれをとっても他のバンドではなかなか聴くことができない。
ビッグバンドを普段あまり聴かない人も、日本人のジャズを毛嫌いする人も、一度は聴いてみる価値があるのがこのアルバムだ。

1. Long Yellow Road
2. First Night
3. Opus No. Zero
4. Quadrille, Anyone?
5. Children In The Temple Ground
6. Since Perry / Yet Another Tear

<Pesonnel>
Bobby Shew(tp,flh)
Don Rader,Mike Price,John Madrid,Stu Blumberg,Lynn Nicjolson(tp)
Charles Loper,Britt Woodman,Phill Teel, Jim Sawyer/Bruce Paulson(tb)
Dick Spencer,(as,fl,cl)
Gary Foster/Joe Roccisano,(as,fl,cl)
Lew Tabackin(ts,fl,piccolo)
Tom Peterson (ts,fl,cl)
Bill Perkins (bs,fl,cl)
Toshiko Akiyoshi(p)
Gene Cherico(b)
Peter Donald /Chuck Flores(ds)

Recorded at Sage & Sand Studio Hollywood on Apr 7 1974 , Feb. 28 ,Mar. 3,4 1975

ロング・イエロー・ロード
秋吉敏子&ルー・タバキン・ビッグ・バンド,秋吉敏子,ルー・タバキン・ビッグ・バンド
BMG JAPAN

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たった一輪の花の花を咲かせるのに、多くの月日と幾多の苦労が・・・・・

2007-10-25 | CONCORD
DRUM FLOWER / CHUCK FLORES

昨日の夜、我が家の鉢植えの「月下美人」が咲いた。
僅か数時間の命であるが、一時の妖艶な姿が殺風景な部屋に輝きを与えた。
このアルバムのタイトルも”Flower”。
奇しくもこの月下美人の写真がジャケットにあった。

仕事仲間で人の名前を覚えるのが得意な人間がいる。
彼は初対面で会って挨拶をし、名刺交換をすると、その人間をまずはほとんど覚えている。
自分は、反対で初対面ではなかなか覚えない。
「この前会ったあの人だけど・・・」と彼にいうと、会社名と名前がすらすら出ていくる。
便利なのでついつい彼に頼るとますます自分では覚えない。
まあ性格といえばそれまでだが。それなりの努力、整理術を身に付けているのだろう。

ジャズを聴いていても自分はその傾向がある。
興味を持ったミュージシャン以外は、なかなか名前もちゃんと覚えないし。アルバムのタイトルのタイトルも不確かだ。ジャケットのデザインで何となくパターン認識していることが多い。とするとサイドメンで参加している「脇役」達となるとなかなか記憶が繋がらない。

Concordで大物の復活アルバムが続いたと思ったら、またまた「脇役プレーヤー」が登場する。ドラムのチャック・フローレス。リーダーアルバムは知らないし持っていないし・・。
50年代のアートペッパーやバドシャンクのアルバムで一緒にやっていたような・・・。
あまり記憶にない。ほとんど自分の意識の外の存在だ。
分からない時は調べるしかない。
ライナーノーツを見るだけでなく、ネットで少し探ってみると、大方どんな活躍をしたかは把握できる。こればかりは便利な世の中になった。便利になるとまた覚えなくて済むということになりがちであるが。

Concordに登場する多くのミュージシャンと同様、彼は50年代はウェストコースト系のアルバムにも多く参加している。が最近はスタジオ中心とのこと。
参加したアルバムを見ると、アートペッパーの「モダンアート」のドラムも彼だった。
トシコ・タバキンのオーケストラにも加わっていたことがあるとのことなので、早速チェック。確かに、「ロングイエローロード」に加わっていた。
カーメンマクレーのバックを努めていたとのことなので、これもチェックすると「グレートアメリカンソングブック」のドラムは彼だった。
そして、LA4のドラムの席もシェリーマンに替わって努めるなど・・・・。
結構、勘所で活躍していることを再認識。結構接点も多かったのだがノーケアだった。
色々活躍している割には典型的な脇役プレーヤーなのだろう。特に、自分にとってはかなり遠い存在だった。
まあ、彼のおかげで聴き直してみたいアルバム候補が結構見つかった。


しかし、リーダーアルバムとなるとこのアルバム以外に見つからない。このアルバムは、フローレスにとって「月下美人」のようなものだ。

このアルバムは、自分のQuintetでの録音。メンバーを見るとボビーシューがいる。彼もトシコのオーケストラにいた。彼はよく知っているが他のメンバーとなると・・・・・?

「脇役」達の集りのグループなのだが、これが実にいい演奏をしている。
このアルバムを聴く限り彼のドラミングは4ビートを確実に刻むというよりは、ポリリズミックな演奏を得意にしている。リズムラインが変るだけで大分演奏の雰囲気は変る。
このアルバムでは曲も提供している。ドラマーで作曲をするというのも珍しいが、メロディックなドラミングができるのも、歌心のあるドラマーなのだかろう。
Concordでは久しぶりに、「今風(といっても70年代だが)」のストレートな演奏だ。曲もオリジナル中心。
ジャズが復活を始めた70年代の後半。スタジオを離れたライブの活動では、昔ながらのスタイルの復活に加え、こんな演奏も繰り広げられていたのだろう。
まさに、これもベテラン達が集った“New wine in Old Bottle”の一枚。

Drum Flower
End of A Love Affair
Orge Of Leadwell
Horse A Nova
I Remember Freddie
Return Of The Ogre
Dawn And Lizz

 Bobby Shew (tp)
 Bob Hardaway (ts,ss,fl)
 Dick Johnson(Keyboards)
 Bob Mafnusson (b)
 Chuck Flores (ds)

Originally released on Concord CJ-49
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「そっくりさん」も、ここまでくれば「クローン」かも・・・・

2007-09-09 | CONCORD
JUGGERNAUT / FRANKIE CAPP & NAT PIERCE ORCHESTRA

「ベイシーライク」という言い方がある。
言わずと知れたカウントベイシーに似ているということだ。
昔は学生のビッグバンドに入ると規定課題のようにカウントベイシーの曲から始めたものだ。今も、きっと何曲はそうであろう。
カウントベイシーのスタイル、そしてあのノリはなかなか簡単そうでできないものだ。時代の変遷と共に、様々なアレンジャーが色々な曲を提供するがそのバンドカラーは変わらない。したがって、ベイシーのオーケストラは聴いただけでも大体想像はつく。反対に不思議とベイシーライク演奏というものは確かに似ているが「何かが違う」というのが常だ。
なかなか埋まらない溝の一つが、フレディーグリーンのギター、そしてベイシーのピアノが作り出すリズムセクションかもしれない。人が代わっても、確実なベースと歯切れのよいドラムも代々引き継がれている。オールアメリカンリズムセクションと言われたものだ。

CONCORDに、ベイシーライクなBIGBANDが登場した。1976年のことだ。
それまで、ビルベリー、ルイベルソンのオーケストラが登場したので、これが3つ目のオーケストラになる。
リーダーはナットピアスとフランキーキャップ。
ナットピアスはカンサスシティージャズの伝統を引き継ぎ、ベイシーオーケストラでも御大に代わって代役を務めたことがあるので役回りはぴたり。一方のフランキーキャップはスタジオ中心であまり有名ではないが、確実なドラミングをする。
他に集まったメンバーは、CONCORDにすでに登場しているメンバーが多い。テーナーの2人はリッチーカムカにプラスジョンソン。スタイルの違う2人が並ぶ。自分のバンドを率いていたビルべリー、新進気鋭のボビーシューも参加。
そして、中でもアルトのマーシャルロイヤルの参加が大きい。これで、ベイシーライクを超えて完全にベイシーの「そっくりバンド」に仕上がった。

このバンドが、ライブ演奏を繰り広げるこのアルバム。悪いわけがない。
一曲目のAvenue "C"。ピアノのイントロから始まるプレーは、これぞベイシーといってもすぐ信じてしまうだろう。
このアルバムのもうひとつの魅力が、ブルース歌手、Ernie Andrews。
B面の「A列車」で意表を突いて登場する。いわゆるじっくり歌い込むというよりアップテンポのシャウティングブルースは、よくスイングするベイシースタイルとぴったり合う。
「こんなベイシーサウンドが身近で聴ける」。
これだけで、このバンドが西海岸で長続きしたのも頷ける。
この後も、CONCORDには彼らの演奏が何枚か登場する。
これも、なかなかいける。

1. Avenue "C"
2. All Heart
3. Moten Swing
4. Basie
5. Dickie's Dream
6. Take The "A" Train
7. Wee Baby Blues
8. Roll 'EM Pete

Bill Berry, Gary Grant,Blue Mitchell, Bobby Shew (tp)
Buster Cooper, Alan Kaplan, Britt Woodman (tb)
Marshal Royal ,Bill Green (as)
Plas Johnson, Richie Kamuca (ts)
Quinn Davis (bs)
Nat Pierce (p)
Chuck Berghofer(b)
Al Hendrickson(g)
Frankie Capp(ds)
Ernie Andrews(vol)

Recorded live at “King Arthur’s” in the San Fernand Valley , Los Angels, 1976

Concord CJ-40
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大人のJAZZファンにもオーケストラの楽しみをもう一度・・・

2007-08-13 | CONCORD
150MPH / Louie Bellson And His Big Band

ConcordのオーナーのCarl Jeffersonは自らプロデュースして次々とアルバムを制作していったが、たまに以前録音されてお蔵入りしていた音源を発掘してリリースした。
前に紹介したShelly Manneのアルバムもそうであったが、このベルソンのオーケストラもその一枚。
74年の録音だが、当時は一部で限定配布されていたもの。広くは流通していなかった。
「このような演奏は広く世に出したほうが良い」とのJeffersonの英断でConcordレーベルにラインアップされて再登場したもの。

ルイベルソンは、西海岸を拠点にしてBIG BANDを編成していたが、活動のひとつはヴォーカルのバック。TONY BENNETや、ベルソン婦人でもあるPearl Bailyのバックバンドを努めていた。
ライブの活動の拠点はロスの「Donte’s」。
そして、もうひとつの活動は学生バンドのクリニック。ハイスクールやカレッジ周りをして、若者へのJAZZの教育、啓蒙・普及にも貢献したそうだ。
ロック世代の若者にBig Band Jazzの素晴らしさを伝え、スタンディングオベーションを受けるにつけ、大人のジャズファンにも今の彼の演奏を伝えたいと思って活動はしていたが。レコーディングの機会に恵まれず、しても広く世に出ることは無かったということだ。
そこに助け舟を出したのがJeffersonだ。ベルソンのコンボのアルバムはすでにConcordからリリースしていたが。今回はBIG BANDの演奏に陽の目を見させたということだ。

メンバーは西海岸のスタジオミュージシャンが中心。ベテランと新進気鋭のメンバーが集まっている。
編曲を含めてコンマス格はサックスのDON MENZA。
MENZAはBill BailyのBigbandにも参加していてこの時期西海岸では売れっ子だったのだろう。10年前にBudy Richのバンドの立ち上げに参加したBobby Shewもいる。サックスのPete Chiristliebもいて、Time Checkではメンザと2人でバトルを繰り広げている。
この時代のBIG BANDを象徴するように伝統的なベイシーサウンドを引き継ぎながらも、
ジャズロック風のプレーも取り入れ、サドメルが得意にした木管を重視したアンサンブルを取り入れたりしてコンテンポラリーサウンドもこなしている。
ベルソンのトラミングも、コンボのベルソンのドラミングの時とは異なり、アンサンブルの合間に絶妙なショットを繰り広げる。
その後ConcordやPabloでの録音も続き、ベルソンオーケストラ復活のきっかけとなった一枚だ。
そういえば、ベルソンは“pearl”ドラムを使っている。奥さんの名前にちなんでかも。

1. Louie Rides Again Bellson, Hayes 8:31
2. Spanish Gypsy Menza 6:56 *
3. Back Home Menza 5:02
4. Spacin' Home Bellson, Hayes 5:29
5. Time Check Menza 8:11 *
6. Hello, Young Lovers Rodgers, Hammerstein 5:04 *
7. Love Dreams Bellson, Hayes 3:15
8. Inferno Menza 10:36

<Personnel>
Bobby Shew , Stuart Blumberg ,Frank Szabo ,Conte Candoli ,Blue Mitchell (tp)
Charlie Loper , Frank Rosollino , Gil Falco , Dana Hughes (tb)
Dick Spencer , Larry Covelli (as)
Don Menza , Pete Christlieb (ts)
Billy Byrne (bs)
Nat Pierce (p)
Gene Cherico (b)
Jack Arnold (per)
Louie Bellson (ds)
 Recorded May 29 , 1974

(*)
Bobby Shew , Stuart Blumberg , Frank Szabo , Conte Candoli , Harry Sweets Edison (tp)
Nick DiMolo , Mayo Taina , Dona Hughes , Bob Payne (tb)
Dick Spencer , Larry Covelli (as)
Don Menza , Pete Christlieb (ts)
Billy Byrne (bs)
Ross Tompkins (p)
Mundell Lowe (g)
Gene Cherico (b)
Joe Porcaro (per)
Louie Bellson (ds)
Recorded May 25 , 1974

Concord CJ-36

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ベテラン達が、再出発の決意も新たに・・・・

2007-06-18 | CONCORD
Bud Shank’s Sunshine Express

Concordのアルバムも20作目に入り、少し制作方針の転換を図ろうとしたのか。
あるいは、枚数が急に増えたので、色々なトライアルを始めたのか・・・・?

前作のRay Brownのアルバムも、それまでのカラーとは少し違ってBrownの自己主張が強く感じられた。
それまでアルバムのプロデューサーは、創始者であるオーナーのCarl Jeffersonがすべてプロデュースしていた。すべてのアルバムが、彼の好みが色濃く出ていたものであった。

このアルバムのプロデュースは、Bud Shank自身。
自己のグループで、シャンクが思いっきり自分の自己主張をしたアルバムだ。
このアルバムと、次のShelly Manneのアルバムは少し毛色が違ったものになった。
その時の、オーナーの心の内がどうであったかは定かではない。

このアルバムは、Bud Shankの“Sunshine Express”という自己のグループ。
シャンクは、50年代、West Coast Jazzの全盛期にビッグバンドやハワードラムゼイのオールスターなどで活躍した第一人者。
早い時点からラテン音楽やフルートなどにも取り組み、ジャズプレヤーとして積極的な活動をしていた。
60年代に入るとスタジオワークが多くなっていたが、70年代に入り、L.A.4のメンバーとしても活動を始める。Concordでもそのグループのアルバムが出ている。

スタジオミュージシャン達も仲間内でレギュラーグループを組んでジャズのプレーを続けていると、次第に自分たちの曲を持ち寄るようになり、時にレコーディングのチャンスに恵まれることがあった。
このアルバムも、そのような経緯で生まれた一枚のようだ。

一曲目を聞き始めると、いきなりストレートJAZZの響きが飛び込んでくる。
コンコルドのモダンスイングというか中間派的なサウンドとは違った、いきなりメインストリームジャズそのまま。
Concordも変わったかなと思わせた一瞬である。

シャンクのプレーも、LA4でのプレーと同じ時期の演奏であるが。比較すると溌剌としている。MJQのミルトジャクションのような感じなのか。
Bandのカラーは、「Sunshine Express」どおり西海岸のカラッとしたサウンドをモダンにしたもの。ボビシューのトランペット、シャンクのアルトプレーも光る。
Bud Shankの10年近くブランクがあったアルバム作りも、このアルバムが復活の足がかりとなった。
このアルバムを作った後も、メインストリームでアルトのプレーを続けることとなる。
東のPhil Woodsに対して西のShankといった感じで2人が双璧となった。
そして、それは現在まで途切れることなく脈々と続いている。

曲も、Here's That Rainy Dayを除いて、ShankとWoffordのオリジナル。Shankの意気込みを感じる一枚。
Concordレーベルもリタイヤ組の同窓会の場から、ベテランの新たな門出や、新人たちの登竜門としての場に・・・・・徐々に変化し始めた。
そして、その後さらにステップアップしていくのであった。

1 . Sunshine Express                Shank 6:30
2 . Flim Flam                    Wofford 4:27
3 . Here's That Rainy Day       Burke, VanHeusen 4:16
4 . John C                     Wofford 6:21
5 . C'est What                   Shank 7:36
6 . Horizon                    Wofford 4:44
7 . No. 10 Shuffle                 Wofford 7:20

Bud Shank (as,fl)
Bobby Shew (to,flh)
Mike Wofford (p)
Fred Alwood (b)
Larry Bunker (ds)

Recorded In 1976 (CJ-20)

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