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長尾剛著[話し言葉で読める西郷南洲翁遺訓]より[七:策謀]

2012年02月28日 16時35分36秒 | 政治・社会
西郷隆盛は[自分で自分を世に残す]ことをしたがらなかったために、著書を一
冊も残していません。[西郷南洲翁遺訓]は幕末の戊辰戦争で薩摩軍と戦った
庄内藩(言山形県)の元藩士たちが明治になって西郷隆盛との交流の中で彼が
語った言葉をまとめたものです。

西郷隆盛は決して多弁ではなくむしろ他人の話をよく聞く聞き手上手だと言わ
れていますので、[西郷南洲翁遺訓](岩波文庫)の原文本編四十一、追加分2
項目合計四十三項目は簡潔で短い文書になっています。

[話し言葉で読める西郷南洲翁遺訓]はノンフィクション作家長尾剛氏が西郷隆
盛の言葉に込められた心情を押し量らって、西郷の別の談話や様々なエピソー
ドをベースにして現代風の読み物としてリニューアルしたものです。

今日お届けする[西郷南洲翁遺訓][七:策謀]には、[関わる者が共有し了解
するルールの範囲内ならいかなる手を使っても相手は納得する。しかし 自らの
栄達や欲得のためにルールを逸脱するのは策謀であり決して認められない]と書
かれています。

■ 長尾剛著[話し言葉で読める西郷南洲翁遺訓]より[七:策謀]

仕事というものは、大小に拘わらず正々堂々まっとうなやり方で進めなければな
りません。
それがどんな難事であっても、誠心誠意、目の前のことに取り組むのです。
たとえわずかでも、策謀を用いてはならぬのです。

策謀とは、他人を騙し、陥れることです。他人を踏みつけて、そのうえに自らの
成功を求める態度であります。

多くの者は、仕事が行く詰まると策謀を用いて、その場をしのごうとする。
そうして、他人を犠牲にしてでもとりあえず急場を打開できれば、あとは何とか
なるだろうーなどと、思いがちである。
この時この場さえ乗り切れば情勢は自分に都合よく運ぶに違いなないーと、勝手
な思いをいたすのである。

だが、そんな勝手な解釈は偽りである。
策謀は、いったん用いれば、きっとあとから報いの煩いが生じます。
陥れた相手から怨まれ、蔑まれ、人として信用を失う。この世にあって、[信
用]こそが、仕事を成し遂げるのにもっとも大切なものである。その掛け 替え
のない[信用]を失って、仕事が成就できようか。きっと破綻します。

他人を騙し陥れても、[これは策謀ではない。自らの才覚と努力によった”仕事
の工夫”である。相手を出し抜くのも、立派な競争のうちである]と、 自らを正
当化しようとする者が、おります。たしかに、正しい意見のように聞こえる。
ですが、工夫と策謀は根本が違うのです。この両者を、同一に捉えてはいけない。

仕事の競争相手を出し抜く、交渉相手を口説く、それが[工夫]と認められるの
は、ほかならぬ競争相手が、結果としてそれを納得した場合のみであ る。
[なるほど。上手くしてやられたわい。そちらのほうが上手だったと認めざるを
得ぬ。残念だが仕方がない]ーと、相手が言うなら、それは立派な仕事 の工夫
である。

しかし、[何と卑怯な手を使うのか。この恨は、きっと忘れぬ。こんな汚いやり
方で出てくるとは、見損なったわ]ーと、相手に言われるようなら、そ れは許
されざる策謀である。

人の世は、どんな場にあっても、関わる者が共有し了解するルールというもの
が、ある。
つまり、そのルールの範囲内なら、いかなる手を使っても、相手は納得する。
ルールから外れない方法で相手を出し抜くのなら、それは[工夫]であ る。

しかしながら、です。自らの栄達や欲得のためにルールを逸脱するのは、決して
認められない。[策謀]とは、これを指すのです。

私もまた、徳川との戦においては、様々な策を用いました。徳川を挑発したこと
もある。徳川を出し抜き、密かに朝廷に近づく工夫もめぐらせた。

これらは、さりながら戦いの方便である。戦いという過酷な命のやり取りにあっ
て、敵味方双方が納得できる”戦いの工夫”というものです。
ですから、私はあの戦いにあって、天に恥ずるような策謀は、用いていません。
用いなかったからこそ、我らは勝てたのだと信じるものであります。

策謀を用いず、ルールの中で許される工夫だけを積み重ねて、仕事をすすめるこ
とです。

時によっては、それでは仕事が遅々として進まぬように感ずることも、あろう。
いっそのこと、相手にだまし討ちを食らわせてサッサと相手を潰したほ うが近
道だと、そんな考えがよぎることも、あろう。
それでも、正々堂々と進まねばならぬ。それが必ずや、本当の成功への早道だっ
たと、将来きっと気づきます。

(引用終わり)


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