新潟市にある山田コンサルティング事務所

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年休の時季変更権

2011年07月25日 | 法律
おはようございます、社会保険労務士の山田透です。
労働基準法第39条第5項では、「使用者は、(中略)有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定めています。このただし書きの部分を年次有給休暇(以下「年休」という。)の「時季変更権」といいます。

今回はこの時季変更権の「事業の正常な運営を妨げる場合」について具体的にみていきます。

「事業の正常な運営を妨げられる場合」にあたるためには、当該労働者の年休を取る日の仕事がその所属する部・課などの業務運営にとって不可欠であり、かつ代わりの労働者を確保することが困難であることが必要とされています。日常的に業務が忙しいことや慢性的に人手不足であることだけでは「事業の正常な運営が妨げられる場合」にあたりません。

この場合の「事業」とは、事業場全体をさすのではなく、課・係など当該労働者の担当業務を含む一定の業務単位および密接に関連する業務組織を含めた範囲で検討します。
また、「代わりの労働者を確保することが困難」というのは、業務命令を出し代替要員を確保するのではなく、通常は個別に代替勤務の同意を求めたが確保できない程度とされています。

■朝の電話で年休の請求は
朝電話があり、いきなり年休の請求があった場合は認めなくてよいかという疑問があります。時季変更権を行使できるかという問題です。
使用者にとって、年休の申し入れが事業の正常な運営を妨げるものであるか考慮する時間的余裕が必要といえます。そのため、他の時季に変更したり代替要員を確保するなどの対応策を講じる時間的な余裕が無い場合は、申し入れを拒否しても差し支えないとされています。しかし、当日の申し入れは本人や家族などの突然の怪我や病気である場合が多く、具体的な事情を考慮して年休として扱うことは問題ありません。
【参考】此花電報電話局事件(S57.3.18最高裁一小判決)

■退職・解雇・事業場閉鎖時に残った年休と時季変更権
年休の権利は、労働関係の存続を前提としたものです。
したがって、退職や解雇、事業場の閉鎖の場合、その日(退職日、解雇効力発生日、閉鎖日)までに年休の権利行使をしない限り、残余の休暇の権利は当然に消滅します。

解雇予定日が20日後である労働者が20日の年休権を有しているとします。この場合、労働者がその年休取得を申し出たときは、「当該20日間の年休の権利が労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇予定日をこえての時季変更は行えない。」(S49.1.11基収第5554号)という通達に基づき、時季変更権は行使できません。

この考え方は、労働者の退職や事業所の閉鎖の場合でも同様で、退職予定日や閉鎖日をこえて時季変更権は行使し得ないこととされます。

このように、年休の時季変更権は簡単には行使できないと考えた方がいいでしょう。請求された有給休暇の変更は難しいですから、話し合いをできる環境を常日頃からつくっていきたいものです。「仕事が一段落してから」とか、「他の部署と調整してから」など、話し合いで解決できれば問題はありません。強制的にならないようにしてください。

著作権:山田 透

思わず買いたく(なく)なる接客

2011年07月19日 | 販売・接客
おはようございます! (^O^)/
中小企業診断士の山田まり子です。

先日、バッグを買いたくてデパートへ行きました。仕事で使うための大きめのバッグ(書類を入れられるような)と、もし気に入ったものがあれば、普通のハンドバッグ(またはショルダーバッグ)も欲しいな、と売場を見ていました。すると販売員が近寄ってきたのですが、この人、「売る」ことしか考えていません。

ビジネスバッグのほうは、そこそこ気に入ったものが見つかったので、それはそれで心の中に候補として置いておいて、ついでに普通のハンドバッグを…と。それに、もっといいビジネスバッグがあれば…と思い、売場をウロウロ。

すると、その販売員さん、私のあとをついてきます。それはいいのですが、私に何も聞かず、一方的に、「このバッグは、よく出し入れする物はこちら側に、きちんとしまっておきたい物はこちら側に入れられるんですよ。」と説明を始めました。

でも、そのバッグ、私が着ている服装に全然合いません。もちろん、「今」着ている服を基準にしなくてもいいのですが、系統がまったく逆の色のバッグを勧めるのです。フッと顔をあげて販売員さんを見ると、「あ、この色、この人の色だわ。」
そう、自分に似合う色、自分の好きな色のバッグを勧めていたのです。

私(お客さま)のことをまったく見ていない販売員さんです。
私が今、持っているバッグ、着ている服、売場で私が手を伸ばしたバッグ。そして、私自身。まずはお客さまを見るところから始めなくては。そして、聞けばいいのです。「どのようなバッグをお探しですか?」と。

バッグ売場をあとにして、私は行きつけのブランドが入っている婦人服売場へ。ここには仲良しの販売員さんがいます。そのとき私はそのブランドのカットソーを着ていたのですが、彼女はちゃんと気づいて、「いつも着ていただいてありがとうございます。」

そして、私の好みや目的(きょうは、どのような服を探しにきたのか)を聞き出しながら、次から次へと洋服を広げていきます。色違いがあればそれもすべて。「たたむのが大変になるから、そんなに広げなくていいですよ。」と私がいうと、「いえいえ大丈夫です。」

ああでもない、こうでもない。それなら、これは? こっちだとダメか? それならこの色は?…などなど。私のために一所懸命考え、選んでくれる販売員さん。最初に考えていた(欲しかった)服とは少しテイストが違ってしまいましたが、結局、3着買いました。

お店のオーナーさん、このあたりの接客スキル、本人任せになっていませんか?

著作権:山田まり子

知的資産経営の勉強会

2011年07月10日 | コンサル日記
おはようございます! (^O^)/
中小企業診断士の山田まり子です。

きょうは日曜日(1日早い記事アップです)。
これから新幹線で東京へ。勉強会に参加します。

私の得意分野は2つあり、1つは飲食・サービス・小売業といった、いわゆるお店屋さんのコンサルティングです。そして、もう1つは従業員のモチベーションアップ(業種不問)。

前者のお店屋さんのコンサルティングというのはわかりやすいですが、後者の「従業員のモチベーションアップ」というのは具体的に何をするのか、ちょっとわかりにくいですね。

社員研修とか人材育成といえばわかりやすいかもしれませんが、それだと自分の感覚とはちょっと違うんですよね。従業員の方が仕事に対して、「いっちょ、がんばるか!」という気になってくれるためなら何でもやる…というスタンスです。そうか、スタンスだからわかりにくいんだ~!(…と、今、気がついた私。(笑))

ですから、具体的な「形」とか「型」が必要で、そのための1つとして、『知的資産経営』を勉強しています。知的資産経営については、以前、ブログに書きましたので、興味のある方は以下をご覧ください。
魅力発信レポートと知的資産経営(2011年3月22日)

知的資産経営とは、「強みを伸ばす」ことを通じてお客さまに提供する価値を創造する。そして、業績の向上に結びつけるという考え方です。
あなたの会社の強みは何なのか。1つではありませんよね、いくつもあります。その強みがどんなふうにつながって成果(価値)を生み出しているのか。とくに重要なポイントとなる強みは何なのか。それをもっと強化すればより大きな成果(価値)を生み出せます。

・どんな強みがあるのか
・強みと強みがどのようにつながっているのか
・そして、どのような価値が創造されているのか
・どの強みを強化すればいいのか
・どうすれば、その強みを強化できるのか

こんなことを考えながら、報告書を仕上げていきます。報告書を作成することが目的ではありません。報告書を作成するプロセスが大切です。

実は、以前、私が作成を支援した魅力発信レポートは、ヒアリングと企業さんから提供していただいた資料をもとにほとんどを私がつくり、企業さんにチェックしていただくというプロセスで進めました。これだと「もったいないな~」というのが正直な感想です。

従業員のみなさんからメンバーを選んでもらい、プロジェクトチームをつくって知的資産経営報告書をつくり上げていくというのが、つまり、プロセスを共有することが大事です。大事というよりも、有効、効果的といったほうが当たっているかな。

報告書を作成するための話し合いで、メンバー同士が会社のこと、仕事のこと、お客さまのことをどのように考えているのかが明らかになります。自分とは違う考えに触れることで気づきもありますし、ズレを話し合うことで認識の共有化も図られます。また、自分の部門や自分の仕事が、業務全体のなかでどのような位置づけにあるのかが明確になるので、どう自分が動けばいいのかがわかるようになります。プロセスを共有することで、仕事そのものへの理解、コミュニケーション向上、研修効果もあり、一石二鳥にも三鳥にもなります。

ただ、そうはいっても企業内部の方だけでこれを進めるのは大変です。そこで、「外部の専門家」として支援しようと、この春から本格的に勉強を始めました。従業員のみなさんのモチベーションアップのためなら何でもやるという熱意を持ちながら、必要となるスキルやノウハウを身につけ、磨いていきたいと思っています。

著作権:山田まり子

労災保険の特別加入制度

2011年07月04日 | 法律
おはようございます、社会保険労務士の山田透です。
今回は、労災保険の特別加入制度についてご説明します。
特別加入制度とは、事業主、自営業者、家族従事者など、本来は労災保険が適用しない方に対して、労災保険の建前をそこなわない範囲で労災保険の加入を認めようとする制度です。

労災保険は労働者の業務災害及び通勤災害に対する保護を主たる目的としており、事業主、自営業者、家族従業者など労働者以外の方はその対象になりません。
しかし、中小事業主、自営業者、家族従事者などの中には、その業務や通勤の実態、災害発生状況からみて労働者に準じて保護するにふさわしい方がいます。
また、海外の事業場に派遣された方についても、派遣先の国における労災保険制度の給付内容が十分でないために、わが国の労災保険による保護が必要な方がいます。
加入を希望する・しないは任意になりますが、加入・脱退等について都道府県労働局長の承認が必要です。

■特別加入できる方
特別加入をすることができる方は、中小事業主等、一人親方等(個人タクシー業者や個人貨物運送業者、大工・左官・とびの方など)、特定作業従事者、海外派遣者の4種類があります。そのなかで主に中小事業主等に焦点をあて説明していきます。

■中小事業主等とは
事業主の場合は、常時300人以下の労働者を使用する事業主であって、その事業について労働保険に加入していることが必要であり、労働保険事務組合に保険の事務を委託する事業主が対象です。
労働者数については、金融、保険、不動産、小売業の場合は50人以下、卸売、サービス業の場合は100人以下、製造業などの場合は300人以下の事業主に限られます。

また、事業主以外に、事業主が行う事業に従事する方も対象になります。
事業主が行う事業に従事する方とは、労働者以外の方で、当該事業に常態として従事する方のことで、個人事業の場合は通常家族従事者、法人の場合は代表者以外の役員のうち労働者性の認められない方をいいます。

■特別加入の申請手続き
具体的な手続としては、労働保険事務を委託している労働保険事務組合を通じて、「特別加入申請書」を所轄の労働基準監督署を経由して都道府県労働局長に提出し、その承認を受けます。
中小事業主等に該当する方が特別加入の申請を行うときには、家族従事者など労働者以外で業務に従事している方全員を包括して特別加入させることが必要になります。

■特別加入者の保険料
特別加入者の保険料は、給付基礎日額に365を乗じたものを保険料算定基礎額として、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じた金額になります。
給付基礎日額(3,500円から20,000円の範囲で選択)とは、文字どおり保険給付の額の算定の基礎となる額で、労災保険の保険給付の額は、給付基礎日額の何日分とか何パーセントという形で算定されることになります。

社員が仕事中にケガをしたときは労災保険で治療することができますが、社長や役員が仕事中にケガをした場合、その治療費は会社又は自分で負担することになります。業務災害の場合、健康保険は使用できません。安心のためにも労災保険の特別加入をおすすめします。

著作権:山田 透