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解雇におけるやむを得ない事由とは

2009年03月09日 | 法律
有期雇用の契約社員を解雇する場合、事業の縮小などは「やむを得ない事由」として、契約期間の途中でも解雇ができるかについて、考えてみます。

民法では、第628条において、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」ことが規定されていますが、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合の取扱いについては、同条の規定からは明らかにはされていません。

そこで、労働契約法が制定され(平成20年3月1日施行)、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)についてのルールを定めました。
労働契約法第17条1項は、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と規定しました。

労働契約法第16条は、解雇について、最高裁判所判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を規定し、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となることを明らかにしました。
なお、法第16条は、改正前の労働基準法第18条の2と同じ内容です。

第16条と第17条で何をいっているかといえば、第16条で正社員の解雇は、「合理的な理由等」があれば解雇が有効であるとしていますが、第17条で契約社員の期間途中解雇は「やむを得ない事由」が必要であり、正社員より契約社員を期間途中解雇する場合に、より厳しい条件を求めています。

厚生労働省でも、「やむを得ない事由」があると認められるのは、解雇濫用法理における場合よりも狭いとされ、さらに「やむを得ない事由」があることの立証責任は、使用者側が負うものと解されています(平成20年1月、基発0123004号)。

従来の判例では、正社員を解雇する前に、パート、アルバイト、契約社員に対する人員整理をどれ程行ったかなどが重視されてきました。しかし、今回制定された労働契約法により、正社員の解雇よりも契約社員の期間途中解雇のほうが困難である旨、様々な行政通達が出ていますので、今後は契約社員の期間途中解雇については、厳格に考えていく必要があります。

例えば、契約書に「契約期間の途中でも事業の縮小などやむを得ない事由が発生した場合は解雇する」とか、「契約期間中であっても、労使の合意に基づいて契約を解除できる」などと入れておいても、それだけで、解雇または契約の解除はできないと考えられます。

厚生労働省も、契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び使用者が合意していた場合であっても、当該事由に該当することをもって法第17条第1項の「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇について「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断されるとの解釈をしています(平成20年1月、基発0123004号)。

契約社員やアルバイト等と有期雇用を結ぶ場合、契約期間については、仕事の内容などを十分検討してから募集、採用をするようにしましょう。

著作権:山田 透


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