前々から書こうと思っておりましたがのびのびになっておりました。マウス実験に見るコンクリートが人体に与える影響についてです。よく聞くフレーズは以下の物です。
「静岡大学で行われたマウスを用いた飼育実験で,木・鉄・コンクリート製の3種類の箱でのマウスの子どもの生存率は、木箱で育ったマウスは約90%,鉄箱は約50%,コンクリート箱では10%弱であった。」
このあとに鉄筋コンクリート住宅がいかに健康に悪く,建てるならなら木造住宅という流れが続きます。
この実験については上記結果だけが一人歩きしその詳細な内容があまり知られていません。HIRAもなんとかしてこのオリジナルの報告書を入手したいと思っておりましたが静岡大学に保存されているもので一般にはオープンになっていない物のようです(2007/02/28追記:訂正。文献ありました→静岡大学農学部研究報告 No.36,P51(1986))。ただこの実験を行った一人である有馬孝礼氏(静岡大助教授→東大教授→現在は宮崎県木材利用技術センター所長)が建築ジャーナル2001.3月号で実験に関する詳細を述べていますのでその一部を記載したいと思います。
・試験系1
【使用ケージ】
木製(桧,厚み18 mm)
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)
亜鉛鉄板製(厚み0.4 mm)
※上面には金属製のふたあり
【実験方法】
3種類のケージ(各10個)を鉄骨造の畜舎に設置した高さ78 cmの木製実験台(木厚25 mm)においた。温度,湿度は自然のままとし,床には巣作りに必要な最小限のスギ屑を敷いた。ここにマウスのつがいを入れ子どもを産ませ,仔マウスがどのように成長し,行動するか,また発達状態を調べた。上記実験を3回(温暖期,暑熱期,寒冷期)の計3回行った。
【結果】
生存率に関して,寒冷期(平均気温20℃)では仔マウスはほぼ全滅した。暑熱期(平均気温30℃)ではケージによる差は認められなかった。温暖期(平均気温25℃)ではケージによる差が大きく,生後20日では木製ケージで約90%,金属製ケージで約50%,コンクリート製ケージで10%弱の生存率となった。ケージの材質により熱伝導率が異なり体温が奪われていることが原因と考えられる(HIRA注:最も熱伝導率が高いのは金属ケージですが厚みが0.4 mmしかなくその下が木製実験台であったことより熱の奪われやすさはコンクリートケージより低かったと考察されています)。また暑熱期では生存率に差はなかったものの臓器重量でみると体重の増え方は大きく異なっており,コンクリートケージでは気温30℃(HIRA注:夜間はもっと低いと思われます)でも熱が奪われていることを示した。
・試験系2
【使用ケージ】
木製(桧,厚み18 mm)
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)+ 床に合板(厚さ2.4 mm)を敷いたもの
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)+ 床に合板(厚さ2.4 mm)を敷き,さらにウレタン塗装(吸湿性を抑えるため)したもの
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)+ 床に塩化ビニル製フロアを敷いたもの
【実験方法】
(HIRA注:記載はないですが試験系1に準じた方法で実施したと思われます)
【結果】
生存率に関して,コンクリート製ケージになんらかの床を敷いた物は木製ケージと同様に90%以上の生存率を示した。また臓器重量でみると合板敷きでは木製ケージと差がなかったが塗装合板敷き及び塩化ビニル敷きでは低く,仔マウスの発達には吸湿性も影響していることが観察された。(HIRA注:臓器重量データが載っており確かにわずかに低いですが有意差はついていません。科学的には有意な差はなかったと言うべきところです)
【HIRAの感想】
上記の試験系1に対して試験系2はあまり有名ではないかもしれません。試験系1の結果(の一部)がセンセーショナルであるのに対し試験系2はある意味当たり前の種明かし的な結果だからです。
もしHIRAが裸にされて木で囲まれた部屋かコンクリートで囲まれた部屋のどちらかを選べと言われたら木の部屋を選びます。躊躇なく。肌に直接触れる部分は暖かそうな物がいいとDNAが知っています。無理矢理コンクリートの部屋に入れられたらさぞストレスがたまるでしょう。でも実際には服を着てフローリングや畳の上で生活する訳です。構造材に何を使おうがちゃんと内装があれば問題ないのは明らかです。もし試験系1の結果を例にとって「鉄筋コンクリート造の家は体に悪いですよ,早死にしますよ」などという営業がいたらその人はカタリか勉強不足の人と思いましょう。いずれにしても信用しない方がいいです。
残念ながらこのような営業はまだ続いているようです。この間も県内大手の地域ビルダー(木造)の施主様レポートに「‥鉄筋コンクリートの動物試験データを見せられ‥」とかあってガクッときました_| ̄|○。
「静岡大学で行われたマウスを用いた飼育実験で,木・鉄・コンクリート製の3種類の箱でのマウスの子どもの生存率は、木箱で育ったマウスは約90%,鉄箱は約50%,コンクリート箱では10%弱であった。」
このあとに鉄筋コンクリート住宅がいかに健康に悪く,建てるならなら木造住宅という流れが続きます。
この実験については上記結果だけが一人歩きしその詳細な内容があまり知られていません。HIRAもなんとかしてこのオリジナルの報告書を入手したいと思っておりましたが静岡大学に保存されているもので一般にはオープンになっていない物のようです(2007/02/28追記:訂正。文献ありました→静岡大学農学部研究報告 No.36,P51(1986))。ただこの実験を行った一人である有馬孝礼氏(静岡大助教授→東大教授→現在は宮崎県木材利用技術センター所長)が建築ジャーナル2001.3月号で実験に関する詳細を述べていますのでその一部を記載したいと思います。
・試験系1
【使用ケージ】
木製(桧,厚み18 mm)
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)
亜鉛鉄板製(厚み0.4 mm)
※上面には金属製のふたあり
【実験方法】
3種類のケージ(各10個)を鉄骨造の畜舎に設置した高さ78 cmの木製実験台(木厚25 mm)においた。温度,湿度は自然のままとし,床には巣作りに必要な最小限のスギ屑を敷いた。ここにマウスのつがいを入れ子どもを産ませ,仔マウスがどのように成長し,行動するか,また発達状態を調べた。上記実験を3回(温暖期,暑熱期,寒冷期)の計3回行った。
【結果】
生存率に関して,寒冷期(平均気温20℃)では仔マウスはほぼ全滅した。暑熱期(平均気温30℃)ではケージによる差は認められなかった。温暖期(平均気温25℃)ではケージによる差が大きく,生後20日では木製ケージで約90%,金属製ケージで約50%,コンクリート製ケージで10%弱の生存率となった。ケージの材質により熱伝導率が異なり体温が奪われていることが原因と考えられる(HIRA注:最も熱伝導率が高いのは金属ケージですが厚みが0.4 mmしかなくその下が木製実験台であったことより熱の奪われやすさはコンクリートケージより低かったと考察されています)。また暑熱期では生存率に差はなかったものの臓器重量でみると体重の増え方は大きく異なっており,コンクリートケージでは気温30℃(HIRA注:夜間はもっと低いと思われます)でも熱が奪われていることを示した。
・試験系2
【使用ケージ】
木製(桧,厚み18 mm)
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)+ 床に合板(厚さ2.4 mm)を敷いたもの
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)+ 床に合板(厚さ2.4 mm)を敷き,さらにウレタン塗装(吸湿性を抑えるため)したもの
コンクリート製(鉄筋入り,厚み31 mm)+ 床に塩化ビニル製フロアを敷いたもの
【実験方法】
(HIRA注:記載はないですが試験系1に準じた方法で実施したと思われます)
【結果】
生存率に関して,コンクリート製ケージになんらかの床を敷いた物は木製ケージと同様に90%以上の生存率を示した。また臓器重量でみると合板敷きでは木製ケージと差がなかったが塗装合板敷き及び塩化ビニル敷きでは低く,仔マウスの発達には吸湿性も影響していることが観察された。(HIRA注:臓器重量データが載っており確かにわずかに低いですが有意差はついていません。科学的には有意な差はなかったと言うべきところです)
【HIRAの感想】
上記の試験系1に対して試験系2はあまり有名ではないかもしれません。試験系1の結果(の一部)がセンセーショナルであるのに対し試験系2はある意味当たり前の種明かし的な結果だからです。
もしHIRAが裸にされて木で囲まれた部屋かコンクリートで囲まれた部屋のどちらかを選べと言われたら木の部屋を選びます。躊躇なく。肌に直接触れる部分は暖かそうな物がいいとDNAが知っています。無理矢理コンクリートの部屋に入れられたらさぞストレスがたまるでしょう。でも実際には服を着てフローリングや畳の上で生活する訳です。構造材に何を使おうがちゃんと内装があれば問題ないのは明らかです。もし試験系1の結果を例にとって「鉄筋コンクリート造の家は体に悪いですよ,早死にしますよ」などという営業がいたらその人はカタリか勉強不足の人と思いましょう。いずれにしても信用しない方がいいです。
残念ながらこのような営業はまだ続いているようです。この間も県内大手の地域ビルダー(木造)の施主様レポートに「‥鉄筋コンクリートの動物試験データを見せられ‥」とかあってガクッときました_| ̄|○。