がじゅまるの樹の下で。

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北斎の描いた琉球偉人

2013年10月10日 | ・和心な本、琉球な本

前記事の続き)

さて、あの葛飾北斎が描いた琉球の初代“王様”舜天の図。

出典はこちら、
江戸時代に出版された滝沢(曲亭)馬琴による大ベストセラー、
「椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)」
挿し絵を担当したのがあの葛飾北斎!

ワタシは学研の現代語訳日本の古典シリーズ20
平岩弓枝(訳)のバージョンで読みました。
学研なので資料や写真も満載で読みやすかったです♪

源為朝が主人公で、
後半は舞台を琉球に移し、
壮大なファンタジーが繰り広げられる物語。

琉球の初代“王様”の舜天は琉球に流れ着いた源為朝の子
という正史にも綴られている伝説を元に
為朝の子、舜天丸(すてまる)が舜天となって
琉球王に就くまでが描かれています。

いやー、物語をちゃんと読んだのは初めてだったのですが、
意外と面白かったです。

世継ぎ争いの中で
仙人はでるわ、怪人はでるは、妖術合戦はあるわで、
とにかくなんでもありの冒険ファンタジー時代劇。

このような壮大なフィクションに加えて、
実際の土地名、グスク、そして実在の人物も出てくるんだから
元ネタと比較できる面白さもある。

例えば、

時代は天孫氏王統の時代。

その25代目の愚かな国王、尚寧(!)

その愚かな王を陰で操る悪どい家臣・利勇(!)
(※正史で天孫氏を滅ぼしたとされている逆臣)

 

そして、忠臣・毛国鼎(!!)

 

でたーーーー!護佐丸!!!
(※毛国鼎(=もうこくてい)は護佐丸の唐名。物語での表記は毛国鼎で一貫しています)

 

そしてそして、その子ども、鶴と亀の二児!!

 

ってことは、

舜天だけではなく、北斎の描いた毛国鼎も
挿し絵として存在するのです。

 

 

 

北斎の描いた毛国鼎(護佐丸)の図、

 

 

 

 

 

 

それがコレだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

鼻の下伸びてまっせ、旦那。

 


~廉夫人(尚寧王の第二夫人)と毛国鼎、仲むつまじく戯れるの図~

 

 

おっと、これは怪人「朦雲(もううん=物語のラスボス)」が
尚寧王を嫉妬に落とし入れるために見せた幻だ(笑)

 

 

忠義一徹の武人と名高い毛国鼎は
「椿説弓張月」についても一点の曇りもない忠臣、
従来の護佐丸像そのものでございました。

じゃあ、北斎の描いたかっこいい毛国鼎がこれ。

 

中城按司毛国鼎の図。

BY葛飾北斎。

槍を抱えて馬に乗る、勇ましい姿です。

そして、例の漏れず、
騙されていると知りつつも
主君を敵に回すことはできないとし、
敵の刃に倒れるのです。

「つぼてある 派なの露のみ まやたごと
けなばや たてろ そもなほれかな」

蕾の花の露を含んだのも、消えてしまえば色も失せるように
我が命も露のように消えていくことよ

―毛国鼎 辞世の句―

 

 

ところで、毛国鼎が出てくるのなら阿麻和利が気になるところですが…

阿麻和利が元ネタの登場人物…

 

います。

 

いますっていうか、
毛国鼎ほどそのまんまじゃないけど、
おそらく阿麻和利が創作のヒントになっているであろうキャラ。

 

その名も阿公(くまきみ)。

 

ざっと調べてみたら阿公には色々解釈はあるようですが、
『読谷村立歴史民俗資料館紀要 第19号』によると

阿公は勝連親方法司の娘で、
つまり、阿麻和利の娘である

と断言されてました。

(ワタシの読んだ訳本では阿高と呼ばれた名家の娘、
巻末の解説では琉球法司・阿高の娘としかなかったのですが)

この阿公(阿君とも?)は巫女の長で老婆。

逆臣・利勇と手を組み、
毛国鼎やその子、鶴・亀をはじめとする正義の主人公たちに
敵対する人物として描かれています。

しかし、最期には

「ほほぅ!?

というようなビックリ設定が明かされて
ただ単なる「敵対する悪女」ではない人物像になっていた点が
非常に興味深かったです

 

というわけで、

江戸時代に書かれた冒険ファンタジー時代劇IN琉球!
『椿説弓張月』(滝沢馬琴著)
一度お試しあれ~

琉球編は後半です。

ここだけ単独で読んでも十分ですよー。

 


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*おまけ*

これは歌川国貞が弓張月振分双六で描いた毛国鼎の図。


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