がじゅまるの樹の下で。

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新説 阿麻和利(上)

2011年12月15日 | ・和心な本、琉球な本

『新説 阿麻和利(上巻)』
嘉陽安男著(光有社) 1963年発行

なんと、値段がドル記載($1.00)という年代モノ(笑)の小説を手に入れたのは、
古本屋「じのん」にて。
(装丁から見ても古いというのがお分かりいただけるかと…)

 

今日、その上巻を読み終えました。

いかんせん、文体のみならず漢字表記も古いので
「うを~ぅ、読みにくい…」と最初は遅々としていたのですが、
後半に差し掛かってきた今日は、3時間ぶっ通しで読みふけってしまいました。

 

いや~、しかし、色んな面、色んな説からその時代、人物像を見ることの面白さを説いてきたワタシですが、
こりゃまた今までになかった人物像を描いてくれましたな。

…って、ワタシが見聞きしてきた本や説よりも、この本のほうがずっと古いのですけどネ。
ワタシにとっては、古いものほど新しいという心境です

この時代の小説仕立てのものってあまり無いから、
ことさら興味深い。

 

上巻は阿麻和利が阿麻和利になる前の、「加那」時代がメイン。
推定10代後半から物語がスタート。
(上巻ラスト1ページでやっと勝連按司になりよった。30代はじめくらいかな。)

まぁ、とにかく加那の「冴えない男っぷり」ったらもう!(笑)
ぐずぐずで優柔不断でぼーっとしてて、だけど純粋で憎めないやつ。
そして女にはモテるというネ(^^; 
↑たまにいるよねそういう草食系男子(笑)
彼のせいで不幸になった女は数知れず…!?
そんな加那が、数々の人との出会いや出来事、旅を通して
人間として大きくなっていくわけですが…。

(加那)が一座に加わっていると、そこだけあいあいたる和気に包まれるのである。
進んで話をするのではなかった。
無暗な冗談をとばすようなことは勿論しない。
控えめに座中にあるだけで、必要なときに、必要な口を利くのだが、
それは必ず皆を傾聴させた。

 

護佐丸は例に漏れず人間的にも武将としても偉大な人間像。
民草からの人望も厚く、文句なしの按司の中の按司。
子煩悩なところも見せており人間的にも魅力的。
(護佐丸は悪い人物像っていうの滅多に見ないな~。「雲風」(山里永吉著)くらいかな。)

 

尚泰久はなかなか意地悪いヤツ~~~~。
武人っぽいね。なかなか短気だし、先走るし、嫉妬深いし結構俗っぽい。
「仏教に帰依してた」という人物像は今のところ皆無。
なるほど、黒幕・尚泰久説をもってくるか!?

尚泰久の体内を荒々しい血が流れ始めた。
馬のいななき、人の雄叫び、蹄の音、剣戟の響き、
ここしばらく、絶えて思い出すこのなかった物音であった。
父王巴志に従って、三軍を叱咤した武将の血潮が、
今日目覚めて、脈々と高鳴りだしたのである。




尚徳、妹・百登踏揚にも手をあげる暴虐者。
百登踏揚、姫というよりはセレブなお嬢様。

「ちっとも訪ねて来てくれないのだもの、私はこの通り元気だが、お前も達者?」

 

そんでもって、賢雄!
おそらくこちらも10歳そこらの少年「松金」(※童名という設定)からの登場!
金丸や尚泰久に仕える普通の少年です!(妙に新鮮
わ~、普通に礼儀正しくも健気ににしゃべってる~。
(読んでて、ん?もしかしてコレ後の賢雄か!?って思ったらビンゴでした)
特別クールでも無口でもないし、THE武将という感じでもない一般的な少年・青年な感じ。
そして、百登踏揚に対する秘める恋!(よしキタ!(笑))
ちなみに阿麻和利よりはちょっと年下っぽい。

彼の武士としての矜持が、義理知らぬ者に果てることを許さなかった。
道ならぬ恋に悶える彼は、げっそりとやつれてしまった。
誰にも打ち明ける術もない、悲しい恋であった。
諦めよう。御主加那志前の奨める女をめとろう――。

 

そんでもって金丸がイイヤツです!!(笑)
イイヤツっていうか、なんというか、今のところ腹黒いのは尚泰久で
金丸は根っからの忠臣であり才能に溢れ、冷静で真面目だけど、恋に対してはいたって不器用な、
人間的にもなかなかの魅力を放っております(笑)
でも最初は尚泰久に命じられて首里の動向を探ってた間者という一面もありましたが…。
冴えない男「加那」に対して、最初の気付きを与え広い世界へ誘ったのも実は金丸という。

そしてまさかの志魯・布里の乱に参戦!
…って、えっー!そこで!?∑(´Д`;)

 

うむ。この金丸像、どうなっていくのか下巻も楽しみですね!


そして懐機や志魯、布里はもちろん、
尚金福にもセリフがあったのはよかったですね。

出番は少なくてもちゃんと「生身の人間」として捉えることができる気がします♪

 

尚布里が尚泰久の弟とか、
護佐丸が座喜味城から越来城に移ったとか、
中城に移ったのが尚泰久即位後、とか、
中城城のゼロからの築城とか、
阿麻和利が勝連按司になったのが1457年とか(1年前かぃ…)
色々とツッコミ所もありますが(出版当時は分かってなかったとか?)、
まぁ、そういうところはご愛嬌ということで(^^;
(歴史的に分かってる年代や出来事を相対的に考えると
尚徳も百十踏揚の兄じゃなくて弟っていうほうが色々無理ないと思うのです…)

 

というわけで、長くなりましたが中間報告でした!

 

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今日、テンペスト3D、東京で試写会だったみたいね~。
どうだったかな~?反響は…。



4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
じのん (TAKA)
2011-12-16 14:39:34
すごい年代物をみつけましたね。
記載がドルとは、今時珍しい。
その本屋さん(じのん)近くなので知ってますよ。
実は、私の青春時代、よく通っていました。
名前は変わってます。確か(ロマン書房)だったような...
この間、前を通ったがなつかしく思いました。その学生の頃、店の前にも本がたくさん山積みにされて、ただ同然だったような記憶が..
しかし本が目的ではなく、2階に古レコードがあって、LPを探すのが楽しみでした。
LP?今の若者は何のこと?と思うでしょう。
和々さんも世代こそ、私と違うでしょうが、知ってますよね(笑)
当時は、値段も相場もあまり関係なく、レジで
さらに店主に値切り、学生の特権でさらに安くしてもらい、たいへんお世話になりました。
今度は久しぶりに行って、本でも探してみます。
かなり冷え込んでます。
和々さんも風邪をこじらせぬよう気を付けて下さい。

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新説 阿麻和利 (えみ)
2011-12-16 20:58:06
お疲れ様です(*^o^*)

私が図書館で借りて読んだ『新説 阿麻和利』も$1でした

県外出身なので、改めて米軍統治されていたのは最近のことなんだと感じました(>_<)


『新説 阿麻和利』のストーリーも面白いですね
私、これ読んでから、さらに他の本と読み比べてみたくなってます(^_^;)


宮脇書店に『百十踏揚』の文庫本(全4巻)がありましたよ~表紙の絵が幼少~大人になっていて早速買っちゃいました持ち歩けるしぃ( ̄∀ ̄)

今週職場で体調崩して休む人が増えてます和々さんも体調崩さないように気をつけて下さいね(^o^)/
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TAKAさんへ (和々)
2011-12-17 18:14:07
もう約50年前の小説…ということになりますね。
TAKAさん、じのんのお近くなんですね。
2階のレコード部門はもう前に閉めたようですね。
LP…分かりますよ(^皿^;
実際に触ったことはありませんが、高校の時映像資料としてあったのがLPでした。

>和々さんも風邪をこじらせぬよう気を付けて下さい。

ありがとうございます。
喉も咳もくしゃみも口内炎も、だいぶよくなりました(^^
TAKAさんもどうぞ、お気をつけて…☆
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えみさんへ (和々)
2011-12-17 18:17:50
こんにちは、本日下巻も読了しましたよ~。

ツッコミところもありつつも、なかなか興味深い小説でした♪
でもやっぱり理想とする人物像は「百十踏揚」での阿麻和利ですね~(笑)カッコヨスギ(゜∀゜)☆

>県外出身なので、改めて米軍統治されていたのは最近のことなんだと感じました(>_

来年で本土復帰40周年ですね。
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