咆哮

負け犬の遠吠えかも…
最近「負け犬」が流行り言葉になってしまったので「落ち武者の歯軋り」とした方がいいのかも…

『エレニの旅』

2005年06月11日 10時33分27秒 | 映画
鑑賞媒体(OS劇場C.A.P)
*ストーリー説明及びネタバレなし。

映画は第七芸術なんていわれているけど、この作品を見るとその映画の枠までも飛び越えて、「これは第八芸術か!」なんて思ってしまった。
アンゲロプロスの作品群を振返ってみると今更驚くことではないのかも知れないが、私の側がこの人の作品を受け入れられる下地がやっと出来つつあるということなのかも知れない。

この作品の説明を敢てしようとは思わない。しかし、この作品で本当の意味での「カタルシス」という意味が理解出来たかも知れない。この言葉は確かギリシャ語で、ギリシャ悲劇などを見て覚える感覚が語源だと思うのだけれど、私自身は今までこの言葉を自己解釈のかなりいい加減な意味合いで使ってきたし、他者がそれを使っているのを聞いても元々の語源からはかなり外れた使い方をしているというのが殆どだと思うのだけど、それはそれで感覚的に解かればいいと思っていた。
しかし、この作品を鑑賞しながら体験した自分の感覚はまさに「カタルシス(浄化)」としか表現しようのない代物ではないのかという感じがした。
昔からお芝居などで「人は何故悲劇を好んで観たがるのか?」という疑問が心の何処かにあったのだが、無意識にそれを認めていた。
そこでこの作品なんだが、ストーリーだけを追うとまさに悲劇のオンパレードな訳で、つまらないお芝居だと「こんな人の不幸を喜んで観ているなんて、なんと悪趣味なことだろう」と思ってしまいそうなんだが、この作品ほど崇高になるともう言葉ではなく厳粛な思いにさせられ、結局はまさに自分自身が「浄化」されている感覚になり心が洗われてくるのだ。

まさに、ギリシャ悲劇を生んだ国の巨匠作家なんだと、しみじみと感じ入ってしまった。

ちょっと個人的裏話をすると、この作品は日を空けて連続して2回鑑賞した。とは言っても、1回目の鑑賞がスポーツジムを終えて直ぐに劇場に飛び込んだ為、かなりウトウトしてしまったのだ。f^_^;;
しかし、「凄い作品を観ているのだ」という感覚がボヤケタ頭の隅にこびりついていて、終った後、どうしても見直したくて(その日は無理だったので)日を改めて、再度体調を整えて鑑賞し直し、二度目は完全に作品に埋没してしまった。
極端な話をすると一年に膨大な映画が上映されていて、私もかなりの作品を観るのだけれど、こういう作品に出会ってしまうと、「この一年はもうこの作品だけがあれば十分。この作品一本だけ観ていればいいや!。」という気持ちにまでなってしまうのだ。まさにこれは別格の作品であり、映画を超えた作品として私はこの作家の作品をこれからも接して行くのだろうと思う。

早い話、内容なんてどうでもいい。よくある古典的悲劇なんだ(暴言)
要するにアンゲロプロススタイルを堪能すればいいのだ。
この<美>を見ろ!!。
この<美>を見逃すな!!。
この<美>を堪能しろ!!。
この<美>で己を浄化しろ!!。



3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (お茶屋)
2005-12-01 22:16:10
「間借り人の映画日誌」経由で来ました。

以前、拝読したときは、シューテツさん、浄化されていいなあと思いました。



今回拝読して、シューテツさんが、映画に浸っている感じが、よくわかると思いました。「浄化=浸る」というわけではないですが、浄化されるには浸れることが不可欠ですよね。(「オフでの会話の補足(その1)」私もシューテツさんといっしょよ(^o^)。)



シューテツさんにとってカタルシスの本当の意味を知ったのが『エレニの旅』。私にとってビジョンの本当の意味を知ったのが『バクダット・カフェ』。

いや~、映画って本当にためになりますねー。

返信する
報告と御礼です。 (ヤマ)
2005-12-04 11:25:13
シューテツさん、こんにちは。

 11/30づけの拙サイトの更新で、こちらの『エレニの旅』を例の直リンクに拝借しております。で、その報告と御礼に参上したら、先に拙日誌のほうからお茶屋さんが訪ねてくださってますね(喜)。

 ちょうどブログで“映画に浸る”についての話が出ていたところでしたから、いいタイミングになりました(重喜)。僕が言いたかったことは既にお茶屋さんがコメントしてくださってました(笑)。

 ほんとに「まさに、ギリシャ悲劇を生んだ国の巨匠作家」ですよね、彼は。そして、シューテツさんが一言「アンゲロプロススタイル」と言い切った、拙日誌で言えば「ひとたび画面を観れば彼の作品だと既知の者なら誰しも思うはずの強固な作家性」ということにおいても、現役監督で彼の右に出る者はいませんよね。

 ありがとうございました。
返信する
ありがとうございます (管理人)
2005-12-05 02:11:40
ヤマさん、どうも。



『エレニの旅』の直リンクありがとうございます。

しかし、お茶屋さんに言われて気づいた「映画に浸る」関連の話題ということで、実に(個人的に)タイムリーな作品チョイスでしたね。



そういう意味では彼の作品は魔法ですよ。

「浸る」という言葉だと最近観たティム・バートンの「コープス・ブライド」なんかもそうでしたけど、映画というのはまさに魔法の(異世界への)扉ですね。

しかし、全く毛色の違う作品でも同じ言葉使いますもんね。(笑)

返信する