自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

「誠実な言葉」と「ごまかしの言葉」~個人と組織

2015-01-03 23:32:56 | 自然と人為
ある民放の旅番組でその土地の名産を試食し、「全然!」と声を発したタレントがいた。古い世代では全然は否定的に使われ、「全然美味しくない」なら耳に馴染む。ここは名産の試食なので全く美味しいという意味で使用したのであろうが、言葉が正逆反対の意味に使われるまで来たのかと驚いた。

犬とは言葉は通じないが心は通じる。言葉は変化するが心を相手に伝える人類の大切な手段だ。NHKは日本語を守る仕事をしていると思っている。ことに解説員は「誠実な言葉」で事柄を解説する仕事だと思っていたがたが、受け取り方によっては正逆反対の意味を持つ「ごまかしの言葉」も使うことをNHK解説スタジアム「政治・暮らし・世界 どうなる2015」で知った。

第一部「どうなる経済再生」に参加した解説者の担当部門はNHK解説委員室によれば次のようになり、席順で示しておいた。(印刷用はこちらを!スマホで読みにくい人のテスト用)

 司会者 西川吉郎・解説委員長(国際政治)
画面左 司会者から見て右側
関口博之・解説副委員長(経済政策・企業経営)
合瀬宏毅(食料・農林水産)
道傳愛子(東南アジア・途上国開発の課題)
後藤千恵(福祉・地方自治・社会保障)
村田英明(社会保障・医療・労働問題)
二宮徹災害・復興・建設)
画面右 司会者から見て左側
城本勝・解説副委員長(政治全般)
百瀬好道(欧州政治・経済)
寒川由美子(事件・事故・社会)
安達宜正(政治・選挙)
太田真嗣(政治全般)
藤野優子(社会保障)

また、発言順とパネルで示された「アベノミクス」に対する発言者の
評価パターンは次のようになる。



この意見分布で、トップバッターに指名された太田氏はやや良いにマークしながら、日が差しているところはまだ一部だけで、全体としてはまだまだ寒く消費が伸びないとし、副解説委員長の2名は、城本氏はやや良い部分を△にして、洒落なのか小さな抵抗なのか分からないが「小ワザ」だとし、最後に指名された関口氏は薄日は差してきているが来年が大切だとしている。これを受けて、西川解説委員長が「来年に大いに期待したいということですね」と締めくくっている。これがNHKの組織として決められたシナリオであろう。

このシナリオを意識してか、晴れにマークした④村田氏は雨にもマークして、2極分化だと言う。古来、経済は世を(おさ)め、民を(すく)うと名付けられたものでもあり、この番組は多くの国民に向けられた番組のはずなので、国民の大多数にとって晴れなのか雨なのかに答えなければ、2極文化は「誠実な言葉」のように見せかけた「ごまかしの言葉」に過ぎない。また、災害・復興・建設担当の⑨二宮氏は、曇から雨には「こうなってはならない」と×を付けている。いろんな表現があるものだ。

「アベノミクス」の評価を最も高くした⑦合瀬氏は、「こうなってもらわないと困る」と言う。合瀬氏は「食料・農林水産」を担当しているが、どのような見識に基づいて解説しているのであろうか。これでは「食料・農林水産」ではなく、誰かさんに気を遣うおしゃまな小学生並の見解ではないか。農政審議会の委員をしていた当時、口蹄疫対策の隠蔽・捏造をNHKが追求しなかった罪も大きいので、この解説委員に対する私の評価は厳しい。

⑤道傳氏は海外の論調を引用しながら、今回の選挙の目的は「経済」ではなく安保外交の「政治」を狙いとしたものとズバリ指摘するが、経済的には「曇ちょっと雨」としている。それなら、もっと雨よりのところにマークすべきではなかろうか。また、⑧後藤氏は「今、苦しい生活をしている人達にとっては残念ながら冷たい雨が続く」としながら、生活困窮者の支援と介護保険の新しい制度では、行政ではなく地域の取り組みを重視することが太陽(チャンス)になるとしている。理解しにくい論調だ。いずれもNHKの「空気」に配慮したということなのか?

③安達氏と⑩百瀬氏は経済的見識から、⑪寒川氏は経済成長よりも安定した暮らし求めるべきだとし、三者とも雨よりの評価をしている。それぞれの解説委員が何を重視して発言すべきかは、個人の見解と組織の方針を配慮してのことなのであろうが、私はこの三者の発言が「アベノミクス」の評価に対して最も「誠実な言葉」であり、ことに「経済成長政策」そのものに疑問を呈した⑪寒川氏の発言を高く評価したい。

このように解説者の発言の大勢をみると、個人的には「アベノミクス」に対する評価は明らかに低いが、NHKの職員としてシナリオに従った評価をしたと言うことであろう。来年のことを言うと鬼が笑うし、先のことは希望をもって発言するのが日本の風習であり、組織の方針にそれなりの配慮をした解説委員を批判するつもりはないが、厳しい状況が国民に迫って来ると危惧されているこの時期に、NHKという組織が国民の支配層に近い生活感覚と目線で番組を制作することは、『気がつけば貧困、そして戦争』という事態を招いてしまいはせぬかと心配している。国は国民の基本的人権を、組織は個人の尊厳を守ることが基本ではなかろうか。

2015-1-5 表部分更新  2015-1-6 スマホ用、印刷用を追加

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