自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

NHK解説スタジアム「政治・暮らし・世界 どうなる2015」

2015-01-01 16:28:22 | 自然と人為
NHK解説スタジアムスペシャル「政治・暮らし・世界 どうなる2015」は、NHK解説委員による自由討論となっている。しかし、政府の政策をストレートに批判はしないNHKの枠組みの中での討論であろう。深夜の4時間の番組なので、全てを書き起こすには時間が足りないが、第1部の冒頭部分、「『アベノミクス』でこれからの経済や暮らしが良くなるのか」で各委員は何を言わんとしているのか、「パネルで示される各自の考え方のパターン」と言葉の使い方について、この正月にでもゆっくり味わっていただきたい。なお、「アベノミクス」については、
地方をどう創生するのか~アベノミクスと日本経済の未来①も参考にして頂ければ幸いです。


     「政治・暮らし・世界 どうなる2015」

司会「今月、衆議院選挙が行われまして、第3次安倍政権がスタートしました。この結果、いわゆる「アベノミクス」が継続することになりました。「アベノミクス」でこれからの経済や暮らしが良くなるのか、委員の皆様がどう見ているのか聞いてみたいと思います。お手元のパターンの用意は出来ていますか?では、一斉に出してください。ハイ、このような結果です。まあ、一番良い方から一番良くないところまであるようですね。だったら真ん中から聞いて見ましょう。太田さん、やや良いと言うことなんですが、これはどういう意味でしょうか?」

太田「ハイ、安倍内閣として経済最優先で取り組んできて、雲の合間からようやく青空が見えてきたというところだと思います。ただ、日が差しているところはまだ一部だけで、奥の所がまだ日が陰っていて体感として気温が上がっていない。全体としては温度は上がっていると言われてもまだまだ寒い。ですから消費が伸びないというのが今の現状ではないかと思います。ですから来年の課題は青空をいかに広げていって多くの人に日が当たるようにするか、これが課題になると思います。」

司会「なるほど、まだ滑り出したばっかりということですね。藤野さんはちょっと悪いということなんですが。」

藤野「そうですね。これは家計という点から見て、ここに○を付けさせていただいたのですが、来年は一段と社会保障の給付抑制、それから負担増が続く、一段と進むことになるんですね。そうしますと家計を預かる女性の立場から考えますと、財布の紐を緩めて消費を増やそうと、とてもとてもこの先の将来不安を考えると、思い切って消費を増やそうなんてことは考えられないんじゃないかなと。私は社会保障担当ですから、安倍政権の社会保障政策を見ていますが、ちょっとやっぱり安倍政権は私の印象だと社会保障改革にあまり熱心ではないという印象がありまして、ここ(社会保障改革)を、将来不安を解消していくために、ここ(社会保障改革)に力を入れていけるかどうかというところが大事な鍵になってくると思います。」

司会「なるほど、安達さんどうですか。安達さんも相当ネガティブな方に振れていますが。」

安達「そうですね。数値的にはね、良い数値が出てくるのではないかとは思うんですね。ただ成長戦略が来年は問われる年になると思いますが、安倍内閣の成長戦略はどうしても企業優先的なところが強い。これは仕方がない部分もあるんですが、今日の法人税減税などに見られるようにどうしても企業優先になっていますから、中間層だとか低所得者層、国内消費が6割をGDPで占めているわけですから、ここのところをちゃんと刺激できるかどうかということがうまくいかないと、やっぱり曇り空かなと思います。」

司会「村田さんは両方、両極端に丸が付いている。これは(笑い)、どういうことですかね。」

村田「そうですね。これは良くなると実感できる人と、そうでない人、この2局化が進むんじゃないかと、私は考えますね。と言いますのは、雇用は改善してきてはいるんですけども、これは賃金が低い非正規雇用が増えているためなんですね。一方で正社員は減っています。そうした中で、正社員と非正規労働者の所得格差が広がっている訳なんですね。この非正規労働者の増加に歯止めをかけて、働く人全体の賃金の底上げを実現しなければ、経済も暮らしも良くは感じられないのではないかと、そのように思います。」

司会「なるほど、道傳さんいかがですか?」

道傳「そんなにいろいろ丸を付けて良いとは知らなかったんですけど、(笑い)曇ちょっと雨ということで。そもそも選挙では「消費税の先送りの信を問う」という理屈に納得して有権者は投票に行ったとのかと言うと、そうではないように思うんですね。海外の有識者も「消費税先送り」という争点を作り出すようにして選挙を実施したというとこに無理を感じるとも語っています。イギリスのエコノミスト誌の年末の特集号では、結局は、これは安保外交などのアゼンダを貫徹する足がかりなんではないかなというような懐疑的な見方も示しているんですね。先送りしても経済の回復がなければなんにもならなくて、肝心の経済、暮らしはどうなるのか、今回こうして稼いだ時間の中で何をするのかが問われると思います。」

司会「なるほど、経済よりも政治が狙いだったのではないかと。そういう意味で、城本さん。そこへ印を付けているのは?」

城本「ハイ、えーと、まあ、選挙で、えー、まあ信任されたんだと、「この道を真っ直ぐに行く」というネ、この自信。えー、頑張るでしょう、安倍さん、ネ。で、このアベノミクスというのは、私は期待先行型だという風に思っているんですけども。つまり目標を掲げてね、「きっと良くなるからみんな頑張ろうよ」ということで、その効果は非情にあると思うんですね。えーまあ景気は気からなんて言いますけどもね。で、そういう意味で言うとまあ選挙も勝ったしですネ、この晴れに向かってこう行っているんですが、ただ中身、もう今まで皆さんも言ったようにですね、ちょっとこのままの道だと上手くいかないのではないかなという気がしますので、それはちょっと三角にしておいたと。まあ、ちょっとした小ワザですけどもね(笑い)。」

司会「合瀬さんはかなり良いということですか?」

合瀬「というか、私はいやこうなってもらわないと困るということですね。」
司会「なるほど、同じですね、そこは。」

合瀬「まあ、安倍政権としては大企業をまず潤わせて、それを地方企業とか雇用に結びつける。そのために円安にした訳ですね。円安にして大企業はものすごく儲かった。これからは地方企業とか雇用とかが儲かってもらう番なんですよね。それを安倍政権としては約束したのだから、その大企業からお金を中小企業とかになんとか回してもらわないと責任を果たしたことにならない。これは絶対やってもらわないといけないということの丸ですね。」

司会「なるほど。後藤さんは一番隅っこの方に丸が付いているのですか。太陽もあるようですネ。」

後藤「村田さんが言われるように国民の暮らしにとって良い人もいるとは思うのですが、今、苦しい生活をしている人達にとっては残念ながら冷たい雨が続く。でもここに小さな太陽、これは期待の太陽です。今、土砂降りの雨だからこそ、もしかしたらこの危機をチャンスに変える変革の芽が出てくるのではないか、その期待なのですね。実は来年の4月、その変革のキッカケになるかも知れない動きがあります。それは生活困窮者の支援そして介護保険、二つの新しい制度が始まります。両方に共通しているのは、行政にできることの限界を認めて、地域の取り組みを重視する。地域でやってくださいという本当もう私としてはすごく大きな大変革だと思うのですね。これをチャンスに地域の力を高めて安心の社会を広げることができれば、この晴れマークが出ます。だけどそれができなければ逆に大きなセーフネットの穴があいて、土砂降りの雨が続いてしまう。結構、地域によって取り組みが違ってくると思うので、場所によって晴れている所、雨の所、天気が違ってくるということにもなるかも知れない。」

司会「なるほど。被災地の取材を続けている二宮さん。」

二宮「ハイ、私は復興を取材する立場からこのようにしてみました。被災地の復興は、今年、道路ですとか港の公共事業ですとか大型建設は比較的順調に進みました。しかしその分、建築価格が上がって、被災者の自力での再建に影響が出て来ています。建築費の高騰などが復興のブレーキにならないか、これから風化がもっと進まないかということを考えると、来年がもっと心配です。そういう意味で被災者の暮らしに雨を降らせてはいけないという意味で、ここからバツにしました。」

司会「なるほど。百瀬さんは、いかがですか?」

百瀬「ハイ、私も経済統計上は明るい数字というのがボツボツ出てくるとは思いますが、景気はおそらく力強さについては欠けると思います。IMF予測を見ても、今日経済対策が出たようなのですが、それ以前の予測ですと1%いかないということで、今年並みの成長であろうという予測なのです。私がこういう厳しい評価をしている理由は2つありまして、1つは「アベノミクス」は今のところ政策がカンフル剤的なところで、日本経済の体力そのものを強くしようとするところまでは行っていない、その方向性もなかなか見えないというのが一つ。2つ目は円安の効果がかなり厳しく出てくるんじゃないかと思う。来年はアメリカが利上げに動きますから、多分、円安傾向が強まるでしょうから、円安は皆様が指摘したように、特に経済的に立場の弱い人を直撃します。しかも円安を行き過ぎたということで方向転換するときに、金融緩和をやっている限りそれを止める手立てがない。ここがやっぱり一番心配ですね。」

司会「うん、なるほど。寒川さんも同じところに印を付けていますね。」

寒川「そうですね。どの政権であっても、超高齢化と人口減少が続く日本で、長期的に経済成長が続くということは私が考えるとありえないと思う。経済成長を前提とした考え方をそもそも改めるときに来ていると思う。国全体のGDPを拡大するということよりも、むしろ一人あたりのGDPを維持して、今の生活をいかに維持していくかという発想がこれから大事ではないか。そのための努力はもちろん大事で、生産性をそれで上げることができれば暮らしの安定化にもつながるのではないかと思います。」

司会「ハイ、最後になりましたが、関口さんはちょっと良い方へ。」

関口「ああそうですね。薄日かなと思っています。で、僕はだけど一貫してそうなのだけど、別に「アベノミクス」にすごい大きな期待を持って見てはいないので、むしろお膳立てをするのが政府の役目、「アベノミクス」の役目で、主役はやっぱり民間企業なのです。民間企業はここまでずっと元気がなかったけど、ここまで来るとさすがにデフレ脱却が視野に入ってくれば、少し前向きに動いて成長のチャンスをつかまないといけないという機運になってきている。そこを出るのが来年ではないかと思うので、設備投資しかり、人材確保のための賃上げ等々も含めて、前向きの歯車が回りだすのではないかなと言うふうに見ています。」

司会「なるほど、来年に大いに期待したいということですね。」

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NHK解説委員は「アベノミクス」を評価していないんではないかと受け取りましたが、皆さんはどう受け取りましたか?

安倍内閣が「アベノミクス」をチラつかせて、「この道を行く」ことが選挙で評価されたと一方で責任回避をしながら、もう一方で憲法改正への道に照準を合わせている不誠実な政治のあり方を許していて良いのでしょうか。

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