uparupapapa 日記

ようやく年金をいただける歳に。
でも完全年金生活に移行できるのはもう少し先。

ママチャリ総理大臣~時給1800円~【改】第21話 三郎の影響と、鯖江の異彩を放つ経済政策

2023-12-20 05:06:08 | 日記

 官邸管理人新井三郎の死は、関係各位の胸に深く刻まれた。

 

 単なる職場の仲間としてだけではなく、この国の根深い老人問題として。

 彼を思い起こすとき、常に笑顔で接してくれる柔和な人柄。

 彼から気軽に挨拶してくれるが、決して多弁なお節介ではない。

 聞き上手な好々爺として、誰からも好かれる好印象を持つ存在であった。

 

 だが同時に、彼には現代の老人問題と表裏一体の影をもつ。

 貧困や孤立。

 彼はそこから救われた筈だが、本当に救えたと云えるのか?

 通り一遍の制度の中に組み込めば、それで良しなのか?

 

 彼を知る関係者たちは敢えて言葉にしないけど、心のどこかでそう感じていた。

 

当然その後の高齢者政策に大きな影響を与えたのは間違いない。

 

老齢年金やそれだけでは生活資金が不足する人々に対する給付金。

そもそもその制度を受けられない人々。

彼らに残った受け皿が生活保護だけで良いのか?

しかもその生活保護制度自体、三郎を門前払いしたではないか。

無年金の彼を無下に放り出だす、無慈悲で不完全なセーフティーネット。

 

ネット政変以前の厚生労働省や後ろに控える財務省は、明らかに老人問題をお荷物と考え【ひとでなし】政策を執ってきた。

大体平均的国民は皆、現役時代にコツコツ働き、税金を払い年金もちゃんと掛け続けてきた。

それなのにイザ受け取る段になったら、国は様々な分かりにくい障壁を設け、少しでも払わなくとも良い、詐欺のような制度を構築、狡猾で悪辣な仕組みを運営してきた。

しかもその受け取る年金に対しても税金を払えと言う。

現役時代にちゃんと所得に対し税金を払い、更にその残りから年金を掛けて来た筈なのに、受けとる際更にまた税金を払え?介護保険料も払え?これでは二重取りではないか!

医療費免除や税金免除制度は残るが、対象は少額年金者のみ。

それではそれ以外の一般的(標準的)免除対象者たちは、どれだけ年金を受け取っているのか?

現状、年金生活者と云えば、楽しみをできる限り控え、節約生活をおくる慎ましい印象しかない

これで明るく余裕のある生活が実現出来て言えるのか?

今の現役世代から見て、根金生活者って憧れの対象に見えるのか?

 

誰もがやがて経験する年金世代。皆本能的に漠然と危機感とか不安を抱えている。

 

この国の誰が年金生活制度ってこれで良いと思っている?

 

こと経済問題だけでも年金制度に致命的欠陥あるというのに、高齢者が生き易い生活環境とかインフラが整っているとは決して言えない状況を三郎が体現した。

だからその予想外の出来事に衝撃が走ったのだ。

貧困から救い出し、関係者たちの多くの目で見守り、それでも孤独死した三郎。

制度の狭間に陥り救済されない他の不幸な高齢者の立場は、言わずもがなだろう。

 

 平助はじめ第四代組はこれまで若年世代や子育て世代、就学や進学費用問題に鋭意取り組んできた。

 また非正規社員の地位向上や正規社員との格差を埋める実質所得増にも目を向けて来た。

 それらはもちろん目に見える重要課題であり、取り組むのは当然である。

 が、しかしそれだけでは不十分なのだと思い知らされたのが今回の高齢者問題。

 

 あれから夕日を見つめ、三郎を回想する事が多い平助であった。

 

 

 

 官邸や公邸など、普段過ごす環境はもちろん、ネット上ではリアルタイムで内閣支持率が表示され、公表される。

 ただ、支持率が下がったからと云って、直ちに退陣しなければならない訳ではない。

 元々ネットアンケートが国民の政策意思を決定し、それに即して行政を行うのが平助たちの仕事だから、大元の責任はネットアンケートに参加し、意思決定を下した国民に有る。

 しかも平助たちの任期は一年と定められているし。

 だから基本、公表された支持率に一喜一憂したり、行政執行に影響を受ける事はない。

 戦争など侵略をうける有事の際や、個人的に重大な犯罪行為や背反行為をやらかした時に交代させられる程度の例外を除いて。

 

 だがだからと云って無視もできない。

 あまりに不行状な行為に終始したり、国民の反発を招くような状態なら、当然仕事がやり難くなるだろう。

 特に女性の支持率が低い傾向の平助は尚更気にする。

 その分野でいくら小細工を屈指し、努力してもビジュアル的には無駄な努力である事にまだ気づいていない鈍感な平助。

 だが、職責として国民に満足してもらえるような、女性に対する政策は推進しなければならない。

 その辺は平助個人ではなく、団体戦で取り組み成果を挙げてゆくべきだろう。

 

 とにかくそうした理由から、支持率を横目で睨みながら平助は仕事をしている。

 

 そんな平助の思考を本能的に感じ取るカエデやエリカ、そして鯖江さばえまで当たりが厳しかった。

 支持率ではなく、国民の満足度を上げる仕事をしなさい!

 それが共通するお叱りであった。

 

 

 国民の満足度を上げる政策を実行してゆくにはどうすべきか?

 所得を上げ、年金制度や子育て制度などのインフラを整備し実現してゆくには、国家の財源には限りがある。

 だから旧政権が垂れ流していた無駄遣いを徹底的に排除してきたのは、第三代内閣まで。

 それでも満足いく制度・政策の実現には程遠い。

 だから平助は近海エネルギー開発と『プラン・シェア40』をぶち上げ、推進する事にしたのだ。

 但し、その実現はまだまだ時間がかかる。

 だから現時点では、限られた財源の中で努力するしかない。

 高度な創意工夫を求められる平助内閣であった。

 それ故団体総力戦を一年間続けなければならないのだ。

 

 鯖江さばえが主計局長に抜擢され、手腕を揮う事となったのはそうした理由にある。

 国内市場の活性化、効率化と有効化を同時に実現させるのが鯖江さばえマジック。

 彼女は巧みに動き、それらを成功させた。

「私がやったんだもの、当然よ!」

 そんな顔して平然と一年の任期をまっとうした鯖江さばえ

 クシャミの超能力といい、巧みな市場操作といい、どんだけ異彩な能力を持つ女性なのだろう?この人、化け物か?

 そばで見ていたカエデは改めて畏怖の念を強く持った。

 

 実は鯖江さばえには壮絶な過去がある。

 だが、そのくだりはまたの回にて紹介する事として、こうして平助内閣を救った鯖江さばえの功績。

 どれ程助けられたのか、平助たちは気づいていなかった。

 

 

 ネット政変以降、旧政権で利権を貪っていた議員や官僚たち。

 その後はおとなしく恭順していたのか?

 いいや、そんな事ある筈はなかった。

 常に暗躍し、ネット政権を粉砕するための工作に勤しんでいた。

 

 素人衆に何ができる?

 

 お前たちになんかできる筈はない!

 

 完全に見下し、追い落とそうとしていた。

 だから重箱の隅をつつくように落ち度を探し、見つけたら最後、自分たちの影響力の及ぶマスコミを利用しネガティブキャンペーンを張る。

 実際そうした被害を受ける者たちは多数見られた。

 それらは全て彼らの仕業である。

 だが、そうした企ての攻撃が有ったにも関わらず、国民が一度手にした直接民主制の仕組みを元に戻そうとする動きに賛同する者は少ない。

 とはいっても、経済対策で致命的失敗を犯したら、信用を大きく損なう。

 信用を無くしたら政策遂行は頓挫し、ネット直接民主政権自体が本来の理想を実現できないまま瓦解してしまうおそれすらあった。

 だから失敗は許されないのだ。

 

 経済政策の舵取りを鯖江さばえと相原 権蔵日銀総裁に任せ、何とか経済政策を乗り切れそうな平助内閣。これで一年の任期は安泰か?

 

 だが問題はそれだけではなかった。

 日本を取り巻く国際問題が大きく立ちはだかっていたから。

 

 

 それらに対処するためには語学に堪能な人材が必要なはず?

 なのに底辺の成績しかとれなかった高卒の平助が外交でも活躍?

 どうやって?

 

 それは初の外交の仕事としてインド訪問の外遊(本人は外遊ではないと強く否定している)に赴く際、その準備としてカエデがプレゼントしてくれた即時翻訳機能を持つAI自動翻訳機が活躍したから。

 

 演説は少しのヒンディー語と英語を丸暗記し語りかけ、残りは通訳者の同時通訳に任せた。

だがその後の首脳会談や記者インタビュー、晩餐会など、AI自動翻訳機が大いに活躍する。

これに味を占めた平助は、積極的にAI自動翻訳機を介した外交活動を積極的に行う。

だからカエデには頭が上がらない。(これが無くても頭が上がらない説が常識だが)

 

「私を女王様とお呼び!」

「やだね!」

「私にありがとうは?」

「どういたしまして。」

「どういたしまして。は私が言う言葉でしょ?

平助は【ありがとうございましたカエデ女王様】でしょ?

 日本語知らないの?バカ!」

「女王様モドキのカエデ様、どういたしまして。」

「・・・・バカ・・・・。」

 二人だけの時はいつもおバカな秘密を持つカップルだった。

 

 こういう人材が日本の政治の中枢にいる現実を旧勢力が察知していたら、世の中は炎上していたのだろうか?

 

 素朴な疑問を持つ作者だった。

 

 

 

 

 

   つづく