ひろひろの生活日記(LIFE Of HIROHIRO)

パソコン講習とソフト開発をしています。自作小説も掲載しています。ネット情報発信基地(上野博隆)Hirotaka Ueno

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」16話、カードゲーム。親密作戦「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0019

2023年12月18日 10時47分36秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」16話、カードゲーム。親密作戦「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0019

19、カードゲーム。親密作戦

「デミュク殿は、カードの経験はどのくらいですか?」
「初めてです。でも、幸運のコインを持っていますから」
「じゃあ。私がカードを切りますね」
「マルミニ殿。お願いします」
マルミニは、カードをテーブルの上に置いてデミュクに見せた。
「よろしいですか?」
「はい」
妖魔デムフェールは、テーブルに置かれたカードに近づき、
そして、一番上のカードをノックした。
(いらっしゃい。行儀のいい子)
するとカードから扉が現れ、デムフェールは、カードの中に入っていった。
デミュクには、その様子が見えていて不思議な気分になった。
(これがイカサマか?妖精の力?)
マルミニは、何も気づかづカードを手にして混ぜ始める。
デムフェールの姿は見えないが、
デミュクには、デムュフェールが、カードを凝視(ぎょうし)していることが伝わってきた。
そして、デミュクの意識の中にデムュフェールの意識があふれてきた。
マルミニは、カードを左右(さゆう)の手に半分づつ分け、
ブリッジをつくり、交互になるようにシャッフルした。
カードは、規則正しく1枚づつ交互に重なった。
今度は、右手にもち、数枚に抜(ぬ)き取っては、左手に移していく。
それを数回繰り返した。
凝視(ぎょうし)していたデムュフェールには、すべてのカードの位置が分かった。
マルミニは、1枚づつデミュクに交互にカードを配りだす。
デミュクは、カードを手にする前に自分のカードの中身が分ていた。
カードを監視しているデムュフェールの意識とつながっていたからである。
相手のマルミニのカードの中身も分かった。
(デミュク様のカードはエースのツーペヤです。
相手のカードは、キングのツーペヤですかね)
デムュフェールの声が心に聞こえてくる。
(フォーカードにしとくか)
デミュクは答えた。
(そうするのが得策ですね)
デムュフェールが答える。
デミュクは、エースのツーペア以外カードを裏返したまま投げ出した。
代わりに3枚のカードを引く。
エースのカードが2枚回ってきた。
マルミニも3枚カードを替えた。
デムュフェールがウィンクするのが伝わった。
マルミニは、銅貨を3枚ベットした。
勝てる自信があるのかもしれない。
「女将(おかみ)、金貨を銅貨に替えてもらえるか」
デミュクは、女将に金貨を銅貨に替えてもらった。
「デミュクさん。がんばんなよ」
デミュクは、同じく銅貨を3枚テーブルの中央に出しコールした。
マルミニは、カードを表替えした。
キングのツーペアと3のスリーカードのフルハウスになっていた。
デミュクもカードを表がえして見せた。
エースのフォーカードである。
「デミュクさん。お強いですね」
「何、ラッキー幸運を得ているだけです」
そして、銅貨がなくなるまでマルミニはカードを続けた。
マルミニは、1ども勝つことはなかった。
「マルミニさん。私は、カードで負けないと思います。
私が幸運の金貨を持っているからです。
それをあなたにお譲(ゆず)りしましょう」
デミュクは、古い金貨をテーブルに置いた。
「マルミニさん。試してみませんか」
マルミニは、躊躇(ちゅうちょ)なくその金貨を手に取った。
マルミニは、思うようにデミュクに勝った。
賭けたお金を取り戻した。
デムュフェールには、マルミニが出したいカードと相手に勝つためのカードが分かっていた。
遠慮なく勝たしてあげた。
「ありがとうございます。
幸運の金貨の力が分かりました。
デミュクさんには何か望みがあるのでしょう?」
デミュクにマルミニは笑いかけた。
「今度、お屋敷にお招きいただけると嬉しいです。
その時に少し商売(しょうばい)の話など聞いていただけると嬉しい。
これで私は、カードは卒業です。
あははは」
「分かりました」
マルミニは、幸運の金貨をもって嬉しそうに賭博場(とばくじょう)に向かった。

つづく。次回(初めての商談)

#失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #マルミニ

 

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」15話、領主の息子マルミニ②「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0018

2023年08月10日 18時42分17秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」15話、領主の息子マルミニ②「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0018

18、領主の息子マルミニ②。

「女将(おかみ)さん。お願いがるのだけど」
マルミニのお酒を取りに女将が料理場に戻ろうとするのをデミュクは呼び止めた。
「なんだい?」
女将は、急ぐ足を止めデミュク方にやってきた。
「そのお酒の代金を私たちに払わせてください。
よろしいですか?
私たちからマルミニ殿にお酒をお願いします」
そして、お酒の瓶(ビン)をもってマルミニの元へ。
「向こうの旦那(だんな)の奢(おご)りだよ」
マルミニは、少しほほを緩(ゆ)めデミュクの方を向いて会釈(えしゃく)した。
デミュクたちも会釈した。
「一緒に飲んでもよろしいですか?」
デミュクは、声をかけた。
「もちろんです」
マルミニは、喜んだ。
話の相手になるのがこの酒場では女将だけなのである。
本当は、女性なら尚(なお)いいが、
男性は男性で、気が合うなら、女性より営利がある。
「すみません。寛(くつろ)いでいるところを」
デミュクは、愛想よく言った。
「いえ。どうせ一人じゃ退屈ですから。
 あははは」
「領主殿の息子のマルミニ殿ですよね。
自己紹介が遅れました。
海の向こうから来た。
商(あきな)いをしているデミュクと言います。
これは、執事のシュシャンです」
「ははぁん。それが目当てですか?
領主と言っても何もない街ですよ」
「いえいえ。
まずは、お近づきに一杯」
デミュクは、酔いのせいか普段と違い雄弁(ゆうべん)になっていた。
知られないように、妖精のフェリィーフェールを呼びかけた。
心の中で念じる。
(フェリィーフェール。カードはできるかい?)
昔は、カードと言えばポーカーに決まっていたのである。
暫(しばら)くして声が返ってきた。
(デミュクさまですか?
私はできませんが、
いいものがおります。
デムフェールです)
(それは、妖精かい?)
(悪魔族の妖精です。
カードばっかりしているものです。
いかさまも出来ますよ)
(それは、好都合)
(宿(やど)るには、何か物が必要です)
(金貨でいいかい?)
(ええぇぇ。上出来です)
デミュクは、悪魔の世界の金貨を一枚、手に握った。
フェリィーフェールは、重みのある金貨を握るデミュクの手を触(さわ)り唱えた。
(デムフェール オン ハディス マイ コンダン アラブディス)
「ポォン」
デムフェールが現れた。
とにかく黒い肌の露出度の高いビキニにシースルーのベールの服を羽織っていた。
角(つの)が二本頭からにょきっと生えている。
デミュクは、不思議な感じがした。
(デムフェール。
率直(すなお)に言う。
お願いがあるのだけど。
いかさまをしてくれ)
(ご主人様。
そう、急ぎなさいますな。
それには、
まず、私と契約をお願いします)
(どうすればいい)
(金貨にあなた様の血を垂らしてくださいませ)
マルミニは、おごりと聞いて、楽しそうにお酒を飲んでいた。
「もう一杯。よろしいですか?」
「どうぞ、何杯でも」
デミュクは、ナイフをだし、指に傷をつけ血を金貨につけた。
デムフェールは、その手のひらの金貨の血を舐めた。
(我、この血の主(あるじと)従者の契約を結ぶ)
デムフェールは、黒く輝いた。
(これで、完了です。
デミュクさま)
(それでは、始めよう)
デミュクは、愉快(ゆかい)そうに言う。
「マルミニ殿。少しカードでもしてみませんか?」
デミュクは、親密作戦を開始した。

つづく。次回(カードゲーム。親密作戦)

#失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #マルミニ

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」14話、領主の息子マルミニ「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0017

2023年05月09日 16時31分00秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」14話、領主の息子マルミニ①「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0017

17、領主の息子マルミニ①。

 

デミュクと執事シュシャンは、食事処の2階で休んでいた。
日も少し暮れだし、
これからの事を考えている間に、いつの間にか2人は寝ていた。
ふと気が付くと、下が#賑__にぎ__#やかなので『はっと』して2人は起き上がる。
もう、夜もふけって辺りは真っ暗になっていた。
丸い光を放つ月が見える。
「お腹がすいたね」
「下で何かを食べますか?」
「そうしよう」
2人は、夕食を食べに1階に降りていくことにした。
1階のフロァーに、#女将__おかみ__#が忙しく動いている。
デミュクは、女将を呼び止めた。
「女将さん。
忙しいところすみません。
領主の息子マルミニさんは、来ましたか?」
「まだだね。
夜中。夜中。
まだ、早いよ。
ちょうどいい。
そうそう。
夕食でも食べておゆき」
「えぇ。いただきます」
「奥の席に座るといいよ。
フロァー全体を見渡せるからね」
「ありがとう」
2人は、奥の4人掛けの席に向かい合って座った。
「何を食べますか?」
執事シュシャンは、デミュクに問いかける。
デミュクは、メニューを手に取り開いた。
「パンでも食べてみますか?」
シュシャンは#冗談交__じょうだんま__#じり言った。
悪魔は、普通は悪魔の世界にある特別な食べ物以外の食事をしない。
「ところでシュシャン。
人の食事をしていると体の組織が変化したりするのかな?」
デミュクは、ある意味、人間になりたいと思い始めていた。
悪魔の王家のしがらみから抜け出し、
追われる身を捨て自由になりたかったからである。
「私は、妖精の一族なのでよくわかりません。
ただ、私の経験では、心は、体に影響を与え、
体は、心に影響を与えます。
いい方向に向くと良い。
そうですとも」
執事シュシャンは、自身にも暗示をかけた。
デミュクは、ふと頭に将来のことを思い浮かべる。
「パンを食べてみますか?
そしておかずはシチューにしましょう。
何か肉が入ったものを食べましょう」
執事シュシャンは、迷いを吹っ切るようにデミュクに話す。
「そう言えば、海に近いって言ってましたね。
そうそうシチューに魚を入れてもらいましょう」
執事シュシャンは、陽気に言う。
「#女将__おかみ__#。シチューに何か魚を入れて、それとパンをお願いします」
デミュクは、大きな声を出した。
別に、怒っているわけではない。
ただ、これから起こることの決意の表れである。
「ぐっう。
アオジャミのシチュー」
女将は、デミュクに負けないくらい大きな声を出した。
手を出し、デミュクに#合図__あいず__#する。
少し待って女将がパンとシチューを運んで来た。
シチューは、よく出るのかもしれない。
直ぐに運ばれてきた。
「ありがとう」
デミュクは、笑顔をみせた。
「そんな顔を見せると#惚__ほ__#れちまうじゃないか。
#旦那__だんな__#さん」
女将は、少し#嬉__うれ__#しくなった。
デミュクは、パンをちぎりシチューにつけて口に運んだ。
(味がしない)
執事シュシャンも口に運んだ。
「なかなかな#美味__おい__#しいですよ」
「俺には、味がしないんだよ」
「そうですか。そうですよね」
シュシャンは、悪魔の味覚は違うことを思い出した。
「シュシャンは、悪魔の食べ物をどう思ってたの?」
「いつも、妖精の家に帰って食事していましたので、
すみません。
わかりません」
「なるほどね」
デミュクは、やっと気づいた。
シュシャンは、悪魔ではないのである。
「妖精の家には、畑があるのですか?」
「内緒です。
すみません」
デミュクは、今まで執事のことなど考えたことがなかった。
しかし、今は自分が特別であったことを思い知らせれつつある。
出てきたシチューは、#赤黒__あかぐろ__#かった。
ホワイトシチューではなかったのである。
パンは#硬__かた__#いがシチューにつけるにはちょうどいい。
「なぜ、悪魔に味覚はないのだろう」
デミュクは、ふとそのことに興味を持った。
#注釈__ちゅうしゃく__#すると悪魔に味覚が無い訳ではない。
インクの味と言うか舌が特別なのである。
太陽と月の光が違うからである。
悪魔が味に欲望を#注__そそ__#ぎ神の#真似__まね__#をしないようにである。
食欲と性欲は関連性があるという人もいる。
創造主は、そのことが地位の欲望に#繋__つな__#がると考えた。
だが人の心とは、そんなに単純ではない。
この場合、悪魔だが。
地位に欲望を持つ者は現れる。
『#世在民__せざいみん__#。#世在王__せざいおう__#』である。
世の中には民がいて、王が#在__あ__#るものである。
「それは、神の祝福ですよ。
きっと」
執事シュシャンは、本気でそう考えていた。
シュシャンの主人は悪魔のデミュクである。
それは、動かせない事実である。
デミュクは、一心に食べる努力をした。
しかし、4分の1を食べたところで音をあげた。
魚。たぶん、『アオジャミ』と言ったと思う。
皮が青かった。
やっぱり、味がしなかった。
魚のぶつ切りがふんだんに入っていた。
執事シュシャンは、その残りを残さず平らげた。
「#女将__おかみ__#。お酒を」
お酒は、なぜか酔えた。
その部分は、あまり人間の脳のつくりと変わらないかもしれない。

真夜中近くになり、ついに待ち人が来た。
「#旦那__だんな__#。領主の息子マルミニだよ」
女将は、小声でデミュクに告げた。
デミュクは、急に目が覚めた。
そして、意思の力で酔いを#振__ふ__#り切った。
「女将。酒だ。
今日は、勝負に負けた。
やめだ。やめだ。
酒をくれ」
マルミニが大声を出しながら入ってきた。


つづく。次回(領主の息子マルミニ②)

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」13話、デミュクの両替は上手くいったの?まだまだ、情報収集はつづくの?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0016

2022年12月21日 06時23分41秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」13話、デミュクの両替は上手くいったの?まだまだ、情報収集はつづくの?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0016

16、デミュクの両替は上手くいったの?まだまだ、情報収集はつづくの?

デミュクと執事シュシャンは、女将が両替から帰ってくるのを待った。
執事シュシャンは、その空いた時間、ここの土地について語り始めた。
「私が調べたところ、
 デミュク様。この土地は、南に川が流れていたことから、
 『サウゼ・リバデンド』と言います」
「河があるのですか?土地は、痩(や)せてるのに」
「あったのは昔ですよ。その河も今は干上(ひあ)がっています」
「ほぉ。
 シュシャンに会った喜びで、
 すっかり、街の名前を聞くのを忘れてたよ。
 そうか、この土地は、サウゼ・リバデンドと言うのか」
執事シュシャンは、主人デミュクの役にたったと嬉しそうに話を続ける。
「この土地は、北から来た貴族が土民(どみん)から奪(うば)い取って統治した街です。
 その時、抵抗(ていこう)した土民の長(おさ)は、
 祈りの儀式を行って悪魔を呼び出しかけた。
 しかし、長(おさ)の力が足りずに、
 北の貴族を滅ぼすのは失敗したとかだそうですが、
 その時以来、河(かわ)が枯(か)れているそうです。
 悪魔を呼び出す儀式で、この土地と我々の世界は繋(つな)がったのかもしれません」
「それでですか」
「イリスさんの褐色の肌は、土民の名残かもしれません」
「でも、イリスは、神を信じていますよ」
「それは、北の地方の信仰をこの土地に広めたからです。
 信仰は、力を持ちます。
 土民を従わすのに一役(いちやく)をかっています」
そこに女将が両替から帰ってきた。
「20枚のミュウデラ金貨が60枚の金貨になったよ。
 だんな、純度が3倍あったよ」
デミュクは、金貨を受け取り文字を読んだ。
(ロンバルト。王国の名前か?)
冠(かんむり)を被り、口髭(くちひげ)を蓄(たくわ)えた王様の横顔が描かれている。

「お礼は、どのくらい払えばいいの?」
「金貨を3枚てとこだよ。
 それより、たくさん食(く)って飲(の)んでおくれ」
両替は、上手く行ったようである。

「それなら女将(おかみ)さん。何か、お酒はありますか?」
「あると言っても人参酒(にんじんしゅ)だけどね。
 それでいいかい?」
「それを頼(たの)みます」
女将さんは、古びた瓶(かめ)に入(はい)ったお酒を持ってきた。
「客もいないし、たんと飲んでおくれ」
「もしよかったら女将さんも飲まれますか?」

女将は、デミュクの隣に椅子を持ってきて座った。
粘土を焼いたコップを三つ持っていた。
それをデミュクらに配った。
そして、瓶(かめ)から柄杓(ひしゃく)で酒を汲(く)んで入れた。
デミュクは、恐る恐る一口含(ふく)む。
舌がアルコールでしびれる感覚を受ける。
「ごくっ」と飲み込んだ。
何にか気分が少しほぐれる気がした。
「女将さん。野菜炒めを食べてみて、
 これを振りかけたんだ」
デミュクは、コンジョの小瓶を見せた。
「確かに黒い粒がちらほら見えるね」
女将は、一口食べた。
「これは、刺激的だね。だんな、これは良いよ」
女将は、更に一口食べ、お酒を飲んだ。
「お酒に合うね。
 これは、あんたの国で育ているものなのかい?」
「はい。コンジョです。私の国で育てています」
「ふぅぅん。でも育てるのは難しいのだろ」
「確かに難しいです。でも、水をそんなに必要としないし、
 気候もこの土地にあっていると思います」
「是非(ぜひ)とも、この土地でこの食べ物を育ておくれんかね」
女将は、これでこの土地が繁盛(はんじょう)するかと思うと心がうきうきした。
「今、それを考えていて、
 領主へ私たちを紹介して頂けくことはできませんか?」
「領主の息子なら、カードゲームの後、夜中に飲みに来るよ」
「だんな、待ってみるかい?」
「待たせていただけますか?」
「まだ、時間もあるし二階で休むといいよ」
女将は、デミュクと執事シュシャンをここで休むように促(うなが)した。
「女将さん。領主の名前は?」
「エンバレーン領主マルコスさま、
 息子は、マルミニおぼちゃんだよ」
デミュクと執事シュシャンは、食事を終え、2階の部屋へと階段を上がった。

つづく。次回(領主の息子マルミニ)

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」12話、新しい悪魔の王。アデレイリは何と言い開く?古の指輪はどこ?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0015

2022年10月27日 22時35分00秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」12話、新しい悪魔の王。アデレイリは何と言い開く?古の指輪はどこ?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0015

15、新しい悪魔の王。アデレイリは何と言い開く?古の指輪はどこ?

妖精フェリィ-フェルは、新悪魔の王アデレイリに『天(てん)の神インデリオスが会いたいから天雷(てんらい)の間に来るように言っている』と伝えた。

「よかろう。分かった。会う」
アデレイリは、素っ気なく返事した。
(天界も俺を王と認めたか)
少し嬉しげである。
「そうお伝えします。それでは、アデレイリ様」
「ポン」
妖精フェリィ-フェルは消えた。

アデレイリは、ゆっくり、噛(か)み締めるように天雷の間に向かった。
(神が王に告げると言う部屋か?)

天雷の間は、丸い天井。宇宙に浮かぶ炎の太陽。その中に宙に浮く平面な台地。その大地には城がある。宙に浮く平面大地は平面宇宙と呼ぶ。それを中心に夜空と星に変わり。そして、端に行くと青い空と雲の風景になる。

アデレイリは、部屋に入り、不満げに立っている。
「悪魔の王は神には従わん」
ボソッと呟(つぶや)いた。

暫(しばら)くして、宙(ちゅう)に天の神インデリオスの姿が現れた。
少し沈黙(ちんもく)しアデレイリの様子を見て口を開いた。
「アデレイリよ。ご苦労。
 なんだ。不貞腐(ふてくさ)れるな。
 これも悪魔の世界を治(おさ)めるために必要な会見(かいけん)だ」

(呼び捨てか!)
新悪魔の王アデレイリは、一層不貞腐れた。
「スゥーーーゥ」
天の神インデリオスの隣にベールを被り白い一枚の布で体を覆った女性が現れた。
「紹介する。悪魔の神ゴワーデルだ」

「お初にお目に掛かる。新王アデレイリ」
悪魔の神ゴワーデルは、丁寧(ていねい)に言った。

「何ようだ!」
アデレイリは、王になったので恐れるものはないと安心しきっていて、つい旺盛(おうせい)に言ってしまった。
少し後悔したようにも見える。

神ゴワーデルは、どすのある声で、
「言葉に気をつけろ。
 お前を跡形(あとかた)もなく消すことも出来るのだぞ。
 慎重に話せ」
と言い放った。
その声は、低く、アデレイリの体に響(ひび)いた。
「え!もしや。あの時の声の主でしょうか?申し訳ございません」
アデレイリは、急に神妙(しんみょう)になった。
「ご要件は 何ようでございますか?」
アデレイリは、今度は丁寧に発言したつもりである。

「お前を悪魔の新王に認めるに当たって2、3質問がある。正直に答えてくれると嬉しいのだが、どうかな?」
天の神インデリオスは、アデレイリに敬意(けいい)を払って言った。


「まず。なぜ、王を殺した?権力を欲(ほっ)したのか?
 悪魔同士で何を支配をし合うつもりか?」
まず、インデリオスは、今回の行いについて少し正(ただ)したかった。

「人間を支配できればいい」
アデレイリは、素直に答えた。
インデリオスには、ぶっきらぼうに聞こえた。
だが、怒った様子を見せずに続けた。
「ところで、支配とは?
 それで、平和を目指せると思うのか?
 支配して、人間の社会をどうする?」
悪魔の王は、ある意味、人間の欲望の管理者である。
『支配』とは、何を意味するのか、どう思っているのか、インデリオスは、その真意(しんい)を聞きたかった。

「悪魔は自由なのでは、自由な支配を望んでいるだけでございます」
アデレイリは、思っていることを正直に、
露(あら)わに自身も神の支配を受けないと、
対等を維持しようと話す。

「それは、王にならないと実現できなかったのか?
 司祭だろう。ルールをつくれば良かったのではないか?」
インデリオスは、それでは、悪魔の王を殺す理由にはならないとばかりに言った。

「祭(まつ)りごとを司(つかさど)っても、
 悪魔の民衆の人望を集めたとしても、
 王の権威には勝てない。
 王に支配される駒だ。
 結局、自然の流れ。
 契約には勝てない。
 結局、王の権威には勝てない。
 それが、俺が出した結論だ。
 それが、神が定めたルールではないのか?」
アデレイリは、反論する。
「確かに王の地位は、いろいろな意味で優遇(ゆうぐう)されている」
インデリオスも認めた。そして、一言。
「どこで知った。王の優遇を?」

「司祭なので自(おの)ずと知ることになりました」
(そうだ。俺は、神の存在、王の力に気づいたんだ)
アデレイリは、冷静になり、自分の立場を理解し出した。

「そう。王は人の欲望のエネルギーの集積地点である」
インデリオスは、またも、明(あ)かした。

「それを我(わ)がものにしたまでだ。
 私の望みは、富(と)める悪魔の世界にする。
 それだけだ。
 人からの欲望のエネルギーに満ち溢(あふ)れた悪魔の世界。
 只(ただ)、それを望む」
アデレイリは、熱く語った。
続いて、確かめるように天の神インデリオスに問(と)いかけた。
「欲望のない人間など無意味ではございませんか?」

「欲望は、争いを生む。
 平和を望むゆえの悪魔の役割ではないか」
インデリオスは、諭(さと)すように言った。
続けて、
「争いを生み過(す)ぎれば、星は滅ぶぞ。
 それでは、お前の生きる糧(かて)が無くなるぞ」

(そうか。悪魔とは、人間に平和を成すものなのか?)
アデレイリは、自分に言い聞かせるように問いかけた。
本当は、アデレイリは、貧しい悪魔の子の出身で世の中の格差をいやと言うほど見て来たのである。
(犠牲を払ってきたのは、悪魔の世界だ)
「それでも、信じる道を進みます」
インデリオスは、暫く考えて、
「そうか。分かった。
 では、新王アデレイリよ。
 悪魔の世界を好きに治(おさ)めるが良い。
 欲望のエネルギーを得るのはたやすいが、
 自身の欲望に負けるなよ」
と言い捨てた。
アデレイリには、彼なりの理由があったのだと、インデリオスは、少し安心した。

「もう一つ尋ねたいことが有る。
 今回の事とは別の話だが、悪魔に伝わる古の指輪を知っているか?」
インデリオスは、あたかも何気ないことを訪ねている素振りをした。

「私は、貧民(ひんみん)から司祭になりました。
 それ故(ゆえ)に古(いにしえ)の事は存じ上げません」
アデレイリも興味がない素振りをした。

「では、これで謁見(えっけん)は終了する」
悪魔の神ゴワーデルが話の終わりを告げた。
2人の姿は消えた。

(古の指輪とは、どう言うものなのだ?)
悪魔の新王アデレイリは、すぐさま城の書庫をあさりに行った。

アデレイリには、理想があった。
悪魔の世界も貧富(ひんぷ)の格差に苦しめられていたのだ。
天の神インデリオスは、悪魔の新王アデレイリを少し理解した。

つづく。 次回(デミュクの両替は上手くいったの?まだまだ、情報収集はつづくの?)
※食事処のデミュクと執事シュシャンと女将の話に戻ります。


#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」11話、神仏の王。インデリオス。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0014

2022年04月06日 20時45分19秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」11話、神仏の王。インデリオス。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0014

14、神仏の王。インデリオス。

話は、少し場面が変わります。(予告とは違うところに話は進みます)
悪魔の王が変わった報告をしに悪魔の神ゴワーデルが、
東の神殿にいる神仏の王インデリオスのもとを訪(おとず)れていた。


「インデリオスさま。
 悪魔の司祭であったアデレイリを新しい王として認めに成りますか?」
なんとなく悪魔の世界で反逆が起こったことは察していた。
「ゴワーデルは、どう考える?」
インデリオスは、冷静に尋ね返す。
「うぅ。所詮(しょせん)、悪魔ですからね」
ゴワーデルは、どう答えればいいか迷ったが、
悪魔であるとしか言いようがない。
欲望多き者である。
だが、平和が保たれていた。
それは、光の神と言う敵がいたからかもしれない。

嘗(かつ)て光りの神イリノイスがいた時代。
銀河の支配をめぐり、闇と光の争いが続いた。

宇宙は、広大で無辺である。

闇の者もいろいろな星に生まれ来た。
その中に人の心の闇を操(あやつ)る者も出現した。
悪魔は、そんな類(たぐい)の者であった。
宇宙は、バランスにより支配されている。
光と闇との戦いも慈愛の導き手の力によって収(おさ)まった。
光の種族も闇の種族もそれぞれの分をわきまえ、争いを止(や)めた。
次の時代が訪れた。
仏への申し入れで光の長インデリオスが神仏の王(全宇宙の王)となった。
今や東の宇宙の神殿に住んでいる。
北の宇宙は虫の王・ゴゥギルルが治める欲望の宇宙。
南の宇宙は獣の王・アルオが治める慈愛の宇宙。
西の宇宙は科学の王・シャクリアが治める理性の宇宙。
欲望と権力の中心にある銀河は、南の宇宙に位置する。
やはり、争いの中心は地球にある。
宇宙は、安定して、平和であるように見えた。
しかし、闇と光の戦いは根強い。
神、仏、虫、獣、科学を治めると言っても、
身は人界(人の命)を具(ぐ)す。(そなえる)
五濁(ごじょく)の人の体であると言う事です。

インデリオスは、指を鳴らし、妖精を呼んだ。
「フェリィ-フェル」
「ポン」
妖精が姿を現した。

「悪魔の前の王は、死んだのか?」
インデリオスは、妖精に尋(たず)ねた。
「はい。司祭アデレイリに殺されました」
妖精は、インデリオスが全宇宙の王であることもあり、
包み隠さず答えた。
「欲望の契約は、どうしたのだ」
「執務のザイジリオンにより、契約を移行したのものと思われます。
 欲望のエネルギーは、アデレイリに流れ込んでいます」
インデリオスは、驚いた。
執務のザイジリオンが、簡単に裏切るとは思えなかったからだ。
そして、更に尋ねる。
「執務も裏切ったという事か?」
「いえ。呪いの魔術を受けたものと考えられます」
「では、契約を移行した後、
 執務は、どうなったのだ?
 今も生きているのか?」
「辛(かろ)うじて」
「フェリィ-フェル。妖精よ。己(おの)が身は大丈夫なのか?」
「中立で御座います故(ゆえ)。大丈夫で御座います。
 これも古(いにしえ)の理(ことわり)です」
「殺そうとしたらどうする?」
インデリオスは、妖精を信じるにたるか、疑問に思う事を尋ねた。
「姿を消すまでで御座います」
「それなら良いが、おまえは、嘘をつくことはあるのか?」
「それは、時と場合によります」
「それでは、
 いま一度聞く、今の話に嘘(うそ)は?」
「御座いません。はい」

「それでは、
 悪魔の新しき王・アデレイリに『天雷の間』で待つように。
 天の神が話がしたいと。
 そう伝えよ」
「はい。分かりました」
そう妖精は返事すると
「ポン」
と消えた。
妖精は、名前を持たない。
名前を持てるのは、妖精の女王だけである。
妖精は、女性が王になり星を治める。
そして、今はまだ妖精に女王は居(お)らず。
名前を持っ者は今いない。

※フェリィ-フェルは、妖精の総称です。
インデリオスは、会話を訪問者に向けた。
「悪魔の神ゴワーデル。
 そなたは、闇に伝わる古(いにしえ)からある指輪を知っているか?」
「以前に聞いたことがります。
 命の源(みなもと)からなると聞きます。
 生と死を司(つかさど)るとも聞き及んでいます」
悪魔の神ゴワーデルは、ありったけの記憶を思い返した。
「誰が持っているか知っているか?」
インデリオスは、更に尋ねる。
「悪魔の王家に伝わるとだけ、
 聞き及んでいます。
 実際に有るかは、存じ上げません」
「やはりな。分かった。
 下がれ」
(もし、野心を持つアデレイリに渡れば何をしでかすか分からんな)
「早く手を打たねばならないかもしれない」

神仏の王。インデリオスは、また指を鳴らし妖精を呼んだ。
「フェリィ-フェル」
「ポン」
妖精が姿を現した。
(同じ妖精なのか?それは、問題ない)筆者の声。

「伝言は伝えたか?」
「はい」
「返事は何と?」
「『分かった』と言ってました」
「やつを監視せよ。
 出来るか?」
「はい」
「それではお願いする。
 何かあったら逐一(ちくいち)知らせるように」
「はい。では、ご命令に従い」
「ポン」
妖精は、消えた。

つづく。 次回(新しい悪魔の王。アデレイリは何と言い開く?古の指輪はどこ?)

※五濁(ごじょく):五つの濁(にご)り。

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス #アルオ #インデリオス

 

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」10話、食事処の女将、まず情報収集だ。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0013

2022年03月11日 19時25分49秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」10話、食事処の女将、まず情報収集だ。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0013

13、食事処の女将、まず情報収集だ。


イリスの土地は、まだ、取水(しゅすい)に恵まれている。
山に汲(く)みに行けばいい。
だが、畑で育つのは、痩(や)せたニャージャンとジャングだけである。
土地が痩(や)せていて何か悪いのか?
※ニャージャン:人参(にんじん)を小説の中で改名しました。
※ジャング:ジャガイモを改名しました。

デミュクと執事シュシャンは、食事処(しょくじどころ)に入る。
食事処は、入口に戸がなく布が斜めに掛(か)けてあるだけで、
周りも白い壁で囲まれているだけである。
布を手で払(はら)い中に入る。
少し埃(ほこり)っぽい。
中には、机が6席ある。
誰も客らしき人はいない。
机は木の丸太を半分に切り使用している。
木のテーブルに木のチェアー(椅子)。
木を切ってそのまま作った粗末(そまつ)なものである。
木の皮が逆(さ)かばっているが、
茶色の年輪は味のある模様になっている。

奥の厨房(ちゅうぼう)に近いテーブルに着いた。

女将(おかみ)さんが、寄ってくる。
「何になさいますか?」
「何か野菜を使った料理は有りますか?」
デミュクは、愛想(あいそ)よく口端をあげ、笑顔で尋(たず)ねた。
「野菜ねぇ。あることはありますよ。
 野菜が趣味なのかい?
 若者は肉を食(く)わなきゃ。
 卵料理があるよ。
 値ははるがね」
女将は、嫌味(いやみ)を込めて言った。
「卵も良いが。
 野菜料理は、何か不都合があるのですか?」
デミュクも引かない。
それは、野菜の育ちぐあいから、土地の肥沃度(ひよくど)を知りたいからである。
「実はね。土地が瘦(や)せているのさ。
 兄さんは、何をしにこの土地にいらしたのかい?」
「女将さんは、愛想がいいね。
 福々しい顔だ。性格も美人だね」
執事シュシャンが、愛想よく言った。
「ちょっと、領主に相談があってだよ」
デミュクは、正直に答える
「領主にかい?」
女将(おかみ)は、念を入れて尋ねる。
そして、機嫌(きげん)が良くなったのか返事も気にせずにつづける。
「領主は、年老(としお)いて寝たきり、
 息子が居るのだけどね。
 博打(ばくち)にしか興味ないよ。
 道楽者さ。
 税金ばかり高く取り上がって、
 これは、内緒だよ」
「お肉と野菜の料理を何かお願いします」
デミュクは、女将の顔を立てて肉料理も注文することにした。
「2人まえづつかい?」
「一皿づつでお願いします。
 それと、2人で分けれるようにしていただけますか。
 小食なもので、すみません」
「金貨2枚だよ」
女将は、見慣れない顔なので前払いしてもらいたくて値段を先に言った。
デミュクは、金貨1枚を鞄(かばん)から出して見せる。
「どこの国の金貨かね?」
女将の目が輝いた。
「ミュウデラ。
 海の向こうだよ」
デミュクは、またも半分(はんぶん)正直に地名を言う。
「聞いたことがないね。
 どうやってここの土地に来たんだね?」
お約束の言葉と言おうか、女将の口をついて出た。
旅人は珍(めずら)しくないと言えばそうである。
「………」
デミュクは、言葉が出なかった。
(なんて言えば、疑われずに済むんだ?)
考えたが言葉が浮かばない。
「あのう。魚料理は、ありますか?」
話を変えることにした。
「まあ、そんなことは、どうでもいいよ。
 あるよ。
 海も近いからね。
 それは別として、
 両替に行ってこようか?
 その方が早い」
金貨1枚をデミュクの手から取って、
「確かに金貨だね。
 重さと手触りで分かるよ」
女将は機嫌よく言った。
つづけて言う。
「両替は、何枚すればいいのかい?」
「とりあえず、20枚を換金してもらえますか?」
デミュクは、鞄から金貨を取り出し渡した。
海が近いと聞いてほっとしていた。
海の向こうから来たと言った手前があるが、
実際は、山奥から来たので、
どうやって説明したらいいか考えあぐねたからである。
ほっと、胸を撫(な)でおろした。
土地勘がないのは難点である。

「何か野菜と卵で炒めものをつくってお出ししな」
女将は、厨房に言い渡すと外に換金しに出て行った。
暫(しばら)く、沈黙があった。
「お待ちどうさま。ランウゥチャン。
 野菜と卵を炒(いた)めたものでさ」
厨房から料理人が料理を運んできた。
デミュクは、悪魔である。
料理を美味(おい)しいとは思わない。
味と感触(かんしょく)を無視して食べている。
料理は、皿に大盛に盛られていた。
「私が食べます」
執事シュシャンがデミュクの腹の具合を察(さ)して言った。
「いいよ。慣れないと」
デミュクも若干、食事に慣れて、
いくらかは食べれるようになった。
栄養を吸収しているかは疑問である。
だが、体は環境に合わせて変化するものです。

野菜は、水分がなく固く黄色に枯(か)れている。
(ほうれん草かな?チンゲン菜の一種かな?)
(炒(いた)めるのに何の油を使っているのだろうか?)
油が少し保水しているように思えた。
「何の油でしょうか?オリーブルユ?」
デミュクは、執事シュシャンに尋ねてみる。
「やっぱり、水不足で農作物が育ちにくいようですね。
 あ!オイルは、良い感じですね。
 何の油でしょう」
執事シュシャンは、乾いた農地の事で頭が一杯であった。
「取水工事を持ち掛けるのが、まずは良い手段でしょうか?」
デミュクは、商談をしたことがない。
何から話しかけた方が良いのか分からなかった。
「野菜にコンジョを振りかけてみますか?」
※胡椒をコンジョと改名しました。
デミュクは、気分転換にコンジョをかけた。
「合うね。アクセントになります」
執事シュシャンも食べた。
「コンジョから売り込むのも良い手かもしれませんね。
 味への執着は、
 一つの人間が神へと望(のぞ)む欲望ですからね」
執事シュシャンも無い知恵を絞りアドバイスする。
「コンジョなら痩(や)せた土地でも育ちますね。
 この土地で育てて見ないと分からない点はありますが、
 肥料も売り込みましょう。
 海が近いと聞きました。
 貿易都市なのでしょうか?」
デミュクは、口をついて、いろんなことが頭に浮かんで言葉が出て来た。
「都市とは、まだいいがたいですね。
 それはそうと商人についても情報を得る必要がありますな」
執事シュシャンは、主(あるじ)に人間についてこれまで相談されたことがない。
続けて話す。
「この後(あと)、港を見に行きましょうか。
 何かと話の辻褄(つじつま)を合わせるためにも必要かと思います。
 商談ですが、
 あまり多くを望むのは良くありません。
 領主とは内容を絞り交渉しましょう」
「取水工事は、時間と労力とお金がかかりますね」
デミュクは、自身が人間界で何がしたいのか不安になった。
(人を助けたいのか?
 支配したいのか?
 イリス?)
(支配するためだよ。悪魔なのだから)
(本当にそうか?)
(争いから逃げて来たのでは?)
(平和は安らぎだ)
(愛に生きるのも…)
(うぅぅ)
(悪魔なのにか?)
デミュクの脳裏に何かが浮かんだ。
「自給自足は、大切です。
 土地は、農地の方が多いようですしね」
執事シュシャンは、その不安と関係なく何か根本的な道理について話そうとした。
「農地しか活用方法がないからではないでしょうか」
デミュクも頭を整理しようと考えてみた。
でも、結局、良く分からない。
「お酒はありますかね?」
デミュクは、息抜きしたくなった。
(デミュクは、お酒を飲んだことがあったっけ?)筆者の声。
「帰ってきたら、女将に尋ねてみましょう」
執事シュシャンも、少し頭を休めたいと思った。
2人は、黙って女将が帰ってくるのを待った。


つづく。 次回(両替は上手く?まだまだ、情報収集はつづく。)

 

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」9話、街、領主、商談?領主は、偉い人なの?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0012

2022年01月20日 14時04分13秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」9話、街、領主、商談?領主は、偉い人なの?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0012


0012_街、領主、商談?領主は、偉い人なの?


デミュクと執事シュシャンは、朝食をお呼(よ)ばれすることになった。
デミュクは、胡椒(こしょう)を胸ポケットから出した。
人参(にんじん)スープにさりげなく振りかける。
執事シュシャンにも勧める。

シュシャンは、胡椒(こしょう)を振りかけて一口飲んだ。
「美味(おい)しゅうございます。デミュクさま」
「シュ。シュ。シュシャン」
不器用に名前を呼んで笑顔になった。
「この胡椒を売りに行くぞ。
 シュシャン」
「はい。分かりました」
シュシャンも笑顔になった。
悪魔には、食べ物は必要ない。
でも、デミュクは、人間の真似(まね)をする必要がある。
悪魔の世界で追われているデミュクは、
これから、人間の世界でずっと暮らさねばならない。
人間の世界で悪魔とばれては生きるすべはない。
デミュクは、ポテトを「ゴクン」と飲み込んだ。
食事は、終わった。
デミュクと執事シュシャンは、イリスに礼を言う。
イリスは、食器を片付けながら背中で答えて、
何も言わなかった。
別れが寂(さび)しいのであろうか。

2人も、敢(あ)えて特に何も言わずに町に向かって出発した。
(また、会える。俺は生きている)

まだ、日が昇って間もない。
昼頃には、町に着くだろう。
この辺は、肥沃(ひよく)な土地とは言い難(がた)い。

見渡す限り畑が広がっているが、豊かに作物が育っている様子はない。
葉は茶けて地面は乾(かわ)ききり、ぼろ砂である。
デミュクは、この村に恩を受けた。
(借りは、いつか返す)
少し小高い丘を登った。
日が昇る向こう。遠くに家が立ち並んでいるのが見える。
「町が見えます」
シュシャンは、言った。
「もう直ぐだな」
デミュクは、不安であった。
(俺は、人間界でも上手くやれる。
 必ず生きていける)
自分にそう言い聞かせた。
やっと、町に着いた。
町に人影はない。
野菜を売っている店がある。
(人参だろうか?葉物はなにだろう?
 人間の主食と聞いた小麦とかはないのか?)
軒(のき)に野菜を並べ、その奥に椅子(いす)に座って首を傾(かた)げて眠っている。
野菜は、少し茶けている。
「あまり裕福(ゆうふく)な土地ではなさそだな。
 町には声がない」
デミュクは、シュシャンに話しかけた。
「その様ですね。
 どうしますか?」
「むろん、それはチャンスだ」
「はい。
 私もそのように思います」
領地の状況が悪いのは、
領主は何か改善する策(さく)を求めていると考えられる。
だから商いを持ち掛けるチャンスであると2人は考えたのである。
隣に食事処がある。
看板に「食事出来ます」と書いて食べ物の絵が飾(かざ)られている。
「シュシャン。入ってみるか?」
「そうですね。
 この町の状況を確かめてみましょう。
 領主についても詳しく知りたいですね」
「じゃ。入るぞ」
2人は、食事処に入った。


つづく。 次回(食事処の女将、まず情報収集だ。)題名は変更があるかもです。

 


#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」8話、悪魔の執事は義理難い?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0011

2021年12月24日 08時40分05秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)


第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」8話、悪魔の執事は義理難い?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0011


0011_悪魔の執事は義理難い?

デミュクが朝起きるとイリスは、既に起きていた。
まだ、太陽が顔を出してない。
辺りは、暗い。
イリスは、太陽の出る方向に向かって、
足を正座し、両手を握り合わせて、
何かを呟(つぶや)いていた。
「天におわします神様。
 デミュクさんを守護してください。
 私は、一層努力します。
 神の元へ使えます。
 デミュクさんをお守りください」
デミュクは、体を起こし起き上がるのをやめた。
寝ている体制で薄目を開けて
イリスに起きていると悟(さと)られないように見ていた。
気配を感じたのかイリスは、少し恥ずかしがり、
祈りを終え、納屋から出て行った。
朝の食事を用意するためである。
暫(しばら)くして、東の空が赤くなる。
日が昇(のぼ)り始めた。
「すみません。デミュクを知りませんか?」
執事のシュシャンがイリスの家を尋ねて来た。
シュシャンは、そこに来るまでに数件の家を訪ねて回った。
探している振(ふ)りをするためである。
デミュクのいる場所は、既に分かっていた。
イリスは、驚いて飛び出て来た。
「デミュクさんを知っています。
 ここに居ます。
 あなたは、デミュクさんの家の方ですか?」
「はい。
 執事のシュシャンと申します。
 デミュクは?」
「ここに居ます。
 少しお待ちください」
イリスは、納屋に走って行った。
「デミュクさん。
 執事のシュシャンさんが、
 あなたを探しておいでになりました」
デミュクは、嬉しそうに納屋から出て来た。
デミュクには、分かっていたことだが、
実際に会えるとなると一層嬉しくなるものだと思った。
(予定通り。
 フェリィーフェルにも感謝しないといけない)
デミュクは、はやる気持ちを押え毅然(きぜん)さを維持した。
逆に執事のシュシャンは、感情を露(あら)わにして喜(よろこ)び駆け込んで来た。
「デミュクさま。ご無事で何よりです。
 行方が分からず、心配しておりました」
シュシャンの本音である。
司祭リュウジェが国を乗っ取ってから、
追われて行方(ゆくえ)が不明だったのは事実です。
しかし、悪魔の執事がそれほど感情があるとは思わなかった。
やっぱり、だれしも家族を大事に思う。
それは、生命の摂理である。
執事シュシャンは、服を用意していた。
それとビジネス鞄(かばん)を持ってきている。
服は、折り目が正しく整っていた。
その時代に相応(そうおう)な貴族が着る服装と言うより、
現代のスーツに近かった。
悪魔は、派手なビラビラの襟(えり)より、
普通の装飾のない襟を好んだ。
それだけのことである。
未来を知っていたわけではない。
デミュクは、それを両腕で持つと
「パン」と宙(ちゅう)で弾(はじ)いた。
おまじないなのか?
服に妖精が着(つ)く。
物にも命が宿るのである。
それは、魔法の魅力(みりょく)を帯びるための儀式。
そして、靴(くつ)を磨(みが)いた。
昨日の作業の疲れとは別に、
ピカピカに光った。
イリスは、その姿に惚(ほ)れ惚(ぼ)れした。
準備は完了した。
「シュシャンも来れるのかい?」
「はい」
「それでは、街に繰り出そう」
「少しお待ちください」
イリスは、慌ててはやるデミュクをとめた。
「お食事を!大したものではありませんが」
「じゃ。いただきましょうか?
 執事の分はありますか?」
「ありますとも」
デミュクと執事は食事をお呼ばれすることにした。
と言ってもポテトと人参のスープである。

 

つづく。 次回(街、領主、商談?領主は、偉い人なの?)こんどこそ、でも題名は変更があるかもです。

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」7話、着ていく服は?使い魔は生きてるの?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0010

2021年12月07日 06時08分14秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」7話、着ていく服は?使い魔は生きてるの?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0010


0010_着ていく服は?使い魔は生きてるの?

デミュクは、夕食を終わり、納屋(なや)に戻ってきた。
イリスは、デミュクに自分のベットで就寝(しゅうしん)するように勧(すす)めたが、
デミュクは、断固(だんこ)と断(ことわ)った。
イリスの家は、個別の部屋に分かれていると言うより、
仕切(しき)りしかない。
まだ、お爺さんに気兼(きが)ねがあるからでる。

イリスは、デミュクについて納屋に入って来た。
(仕方ない子だな)とお爺さんもデミュクも諦(あきら)めた。
お爺さんは、デミュクと心を親(した)しくして、
「ごめんよ。デミュクさん」とすまなそうに謝(あやま)った。
イリスは、せめてもと自分のベッドのシーツを取り、
納屋の藁(わら)の上にそのシーツを被(かぶ)せた。
「これでご容赦(ようしゃ)ください」
そう言うと食事の後片づけをしに納屋から出て行った。
デミュクは、ゆっくり明日のことを考えた。
自分に自問(じもん)する。
(明日に着ていく服をどうするべきか?)
(お金は必要か?)
(領主は、会ってくれるだろうか?)
(持ち物は?)
(使い魔は呼べるか?)
(魔法は使えるか?)
(妖精は呼べるのか?)
デミュクの脳裏(のうり)に様々な疑問(ぎもん)が湧(わ)いてくる。
取り敢えず、魔の妖精(ようせい)を呼びだしてみる。
両手のひらを胸のところで合わせる。
そして、力を込め上に向け開く。
両手のひらの上に異次元(いじげん)から妖精を呼びだす。
「異次元界から現れよ。
 つなぎたまえ。我が主よ。
 フェリィーフェル オン ハンディズ マイ ゴンダド」

『ポォン』

背中に細長い楕円(だえん)の透明な羽が2つ。
服は、黒青(こくせい)の薄手のキャミワンピースを着た。
クルクルカールの紫の髪をし唇の青い目が細く尖(とが)った。
素肌(すはだ)の手足を服から出した手のひらサイズの女の子が現れた。
妖精をこの世界でも呼び出すことが出来たのである。
デミュクの周りだけ、この世界に魔力の影響を与えていたからであるからかもしれない。
「呼び出してごめん。
 フェリィーフェル。
 出てきてそうそうだが、
 お使いは頼(たの)めるかい?」
「略奪者(りゃくだつしゃ)のリュウジェは、どうしてる?」
「わからないわ。
 城に近づくと捕らわれるから、
 近づけないの」
妖精は、使い魔(しま)と違(ちが)い力(ちから)がない、多少の魔法を使えるが身の丈(たけ)のぐらいの威力(いりょく)しかない。
「家の使い魔(シマ)は、どうしてるか分かる?」
「見てこようか?」
妖精にとって偵察(ていさつ)やメッセンジャーはお安い御用(ごよう)である。
「お願いする」
デミュクは、妖精に育った地のミュウデラの様子を見て来るように申し渡した。
なぜ、使い魔の執事シマに直接依頼(いらい)しないかと言うと迂闊(うかつ)に呼び出すと場所がばれるからである。
その点、妖精はどこにでも現れて使いをしてくれる。
組織や人に縛(しば)られない気まぐれものである。
フェリィーフェルは、デミュクと友達でもあった。

暫(しばら)くしてフェリィーフェルが帰ってくる前に、
イリスが、納屋に戻ってきた。

「デミュクさん。どうかしたのですか?」
イリスは、来てそうそう声を発した。
デミュクは、そわそわしていた。
(妖精が帰ってきたら、
 イリスに見つかったら、
 どうすれば良いのか?)
デミュクは、思案した。
そんなこととは、梅雨(つゆ)も知らないイリスは、楽しそうである。
「あ!デミュクさん。明日、街に行くそうですが、
 着ていく服は、どうするのですか?」
「盗賊(とうぞく)に襲(おそ)われた時、
 荷物を放り出して来たので、
 お金も何もない。
 思案(しあん)しているところです。
 明日、とにかく街に行ってみます」
「そうですか。
 私がもう少し裕福(ゆうふく)なら、
 何とか出来るのですが、
 見ての通りのみなりです。
 力になれずにすみません」
「泊(と)めて頂けるだけで十分です。
 何とかなるでしょ。
 呉服屋(ごふくや)に行ってみます」
「今日は、もう寝ますか?」
「そうですね」
デミュクは、横になり目を瞑(つぶ)った。
イリスも、少し離れたところで横になった。
(今日は、昨日の続きは無いのかしら)

お腹の辺りがキュンとなった。
イリスは、いつになく緊張(きんちょう)している。

女性は、子宮で考えると言うがこう言うことなのでしょうか?

(違っていたらすみません)筆者の声。
初めて営(いとな)んだ次の日は、よそよそしくなるものである。
デミュクは、昨日の出来事は忘れられないが悟(さと)られないようにしていた。
それは、これから起こすことのためにマイナスになりかねないからである。
2人は、寝入(ねい)った。

「ツンツン」
真夜中にデミュクの頬(ほほ)をつつく者がいる。
デミュクは、少し眠(ねむ)りから出て薄目を開けて見た。
妖精である。
横には、イリスがくっいて眠っている。
「外で話そう」
デミュクは、そう妖精に言った。
起こさないように納屋から出るのは大変であった。
背中を掴(つか)んでいるイリスの手をそっと取りシーツの上に置いた。
(どうやら起こさなくて済んだみたいだ)
忍び足で納屋から出る。

「使い魔の執事シュシャンさんと連絡が取れました」
(そんな名前だったのか!)
デミュクは、使い魔の執事のシマとは、子供の時から養育を受けた仲だが、今初めて使い魔の名前を知った。
ずーと『シマ シマ』と呼んでいた。
「デミュクさんの城を預かって守っていました。
 おとがめは、無かったみたいです。
 無事ですよ」
「明日、朝早く抜け出して来るそうです」

「どうやって?
 ここに来るの?」
デミュクは、心配した。
「私が案内します。
 デミュクさんが使った通り道で来れそうです」
妖精は、自慢(じまん)げに言った。
「その時、鞄(かばん)と服を持って行きます。
 そう言ってました」
妖精は、続けて行った。
「生きているんだね執事は?」
デミュクは、念押しした。
「はい。生きています」
妖精は、はっきり大丈夫と言わんばかり答えた。
「略奪者(りゃくだつしゃ)のリュウジェはどう?」
デミュクは、本題にはいる。
「何か忙しいみたいです」
妖精は、あっけなく答えた。
「俺を探しいたか?」
デミュクが一番尋(たず)ねたいことである。
「それどころじゃないようです」
妖精は、(それが知りたかったのね)と理解した。
(リュウジェは、執務(しつむ)で忙しいのだろうか?
 それとも貴族を掌握(しょうあく)出来てないのか?
 まあいい。
 俺をかまう暇がないのは助かる)
デミュクは、そう思い、納屋に戻った。
イリスが起きていた。
「少し夜空の星々を見て考え事をしていました。
 心配なく」
「そうですか」
そう言うとまた、離れて眠りについた。

イリスは、本当に寝ているのか?

実はイリスは、目を瞑(つぶ)っているが心の中で、

(明日、デミュクさんが無事に街に行き用事が何事もなく成功しますように)と祈っていた。
そうとも知らずデミュクも眠った。
その夜は、何もなかった。

イリスは、意識の中で夜通し祈った。
(次に朝起きたらまたくっいているのかな?)読者の疑問(ぎもん)。
(やり逃げ?)少し筆者はこれからのストーリーが心配であった。


つづく。 次回(街、領主、商談?領主は、偉い人なの?)こんどこそ、でも題名は変更があるかもです。

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

コメント
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