【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

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赤字のときの税金対策(繰越欠損金について理解する)

2021-09-17 18:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社が赤字に転落すると法人税は課税されません。そんなことから赤字の会社は税金対策をする必要はないと思われがちです。しかし、赤字ゆえに必要な税金対策(留意事項)もあります。

◆法人税の計算における赤字の扱い(欠損金)

法人税は事業年度の「益金-損金」である「所得」に対して課税されます。益金とはおおむね決算書における収益で、損金とは同じく費用です。「益金-損金」がマイナスであることを欠損(けっそん)といいます。決算書の利益がマイナス、つまり赤字の会社は通常は欠損が生じます。

欠損が生じている会社は所得がないわけですから法人税が課税されません。

◆赤字は翌事業年度以降に繰越せる(繰越欠損金)

決算が赤字(利益がマイナス)の会社はほとんどの場合に欠損が生じています。この欠損は法人税の計算において、翌事業年度以降に繰越して翌事業年度の損金に算入することができます。

第11期の欠損金額が100万円、「第12期だけ」で計算した所得が150万円であるとします。第12期の所得は第11期から繰り越されてきた欠損金額100万円を差し引いた50万円になります。

第11期の欠損金額が200万円であれば、第12期だけの所得である150万円から全額を差し引くことができません。この場合は引ききれない50万円は第13期に繰り越されます。

第11期、第12期とも欠損が生じた場合には、その欠損の合計が第13期に繰り越されます。

◆繰越欠損金と決算書の関係(特に業歴の長い会社は注意!)

繰越欠損金に関して難解なのはこれ、決算書と繰越欠損金(法人税申告書)の関係です。

決算書における累積しての赤字(創業来の各事業年度の赤字と黒字を通算した結果)は貸借対照表、純資産の部で「繰越利益剰余金のマイナス」として表示されます。

この金額は次の理由から法人税の計算における繰越欠損金とは異なります。

〇所得計算と利益計算は異なる
〇繰越欠損金は10年で消滅する

特に業歴の長い会社は、繰越欠損金の一部が「期限切れ」となって消滅していることから、「決算書の繰越利益剰余金のマイナス額>繰越欠損金額」となっていることがあります。

「決算書の累積利益がマイナスなので法人税は課税されない」という考えは危険だということです。

◆繰越欠損金は青色申告独自の制度(期限後申告に注意)

欠損金が繰り越せるのは青色申告で申告している事業年度だけです。青色申告は期限後申告が2事業年度連続して続けば取消しになります。業績不振の会社は節税対策が不要であることから決算申告に対する注意力が散漫になり、経理業務も滞って申告も遅れがちです。くれぐれも期限後申告による青色の取消しにはご注意ください。

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★別表7(1)
繰越欠損金は法人税申告書の別表7(1)に発生年度ごとに記載され、利益が出た年度に古いものから順に損金算入していきます。なお、損金算入されなかった欠損金は、平成30年4月以降に生じたものは10年間、それ以前のものは5年から7年で消滅します。

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