鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

「北海道の海鳥4 アビ類」発刊のお知らせ

2016-12-31 15:58:42 | 海鳥


 半年以上の長きにわたって放置してしまいましたが、「北海道の海鳥4 アビ類」の発行を機に再開します。今後ともよろしくお願い申し上げます。


 太平洋、オホーツク海、日本海と3つの海に囲まれた北海道には四季折々、世界中から様々な海鳥が飛来します。それらに親しむ一助になればと2013年に刊行を始めた「北海道の海鳥」シリーズも4作目。今年はアビ類です。主に越冬地の日本では地味な冬羽を遠くの海上に見ることが多く、決して人気の高い仲間とは言えませんが、極北でのシャーマニズムと結び付いた神秘的な夏羽や圧倒的な存在感に魅せられたコアなファンが少なくないのも確かです。そして北海道は国内で最も多くのアビ類を、夏羽も含めて観察できる土地。沿岸性が強く、漁港や河口から観察できるのもアビ類の魅力です。「船はちょっと…」と尻込みしているそこのアナタ、まずは本書を手に海岸からアビ類を観察して海鳥の世界にどっぷりハマってみませんか。

 総論では進化、形態、生態、人間との関係などに多くのページを割きました。現在の日本では知名度の低いアビ類も沿岸の漁民には古くから親しまれ、その習性を利用した漁法が栄えるなど共生関係にありました。そんな文化史的な側面も盛り込んでいます。

 各論では日本で記録のある(=世界の)5種すべてについて、各種あたり13~20枚と豊富な写真と最新の知見も取り入れた解説で紹介しています。神経質な鳥なので高画質の写真ばかりではありませんが、角度や気象条件によって変わる野外での見え方、季節、個体により異なる羽色の変異に重きを置いてセレクトしました。

 本書がアビ類、ひいては海鳥ファンを一人でも多く増やすことに貢献できたなら、これに勝る喜びはありません。

著者:千嶋淳 ISBNコード:978-4-9909290-0-8
判型/総ページ数: B5判/44ページ オールカラー 定価: 1,400円(本体)+税
発売年月日: 2016年11月1日
発行:道東鳥類研究所


(総論ページ)


(各論ページ)


*まずは11月5、6日に千葉県我孫子市で開催されるジャパンバードフェスティバル(JBF)にて販売します。私の個人ブースだけでなく、六本脚さんのブースでも取り扱いいただける予定です。その後はweb上や取り扱いいただける店舗での販売となります。それらの詳細は追って掲載します。
(10月31日追記:JBFではHobby's Worldさんのブースでも取り扱いいただける予定です。どうぞよろしくお願いいたします。)

(11月29日追記)

現在、以下のwebサイトや店舗で購入できます。

道東鳥類研究所ネットショップ
② 「北海道の海鳥シリーズ」Facebookページ
Hobby's World様
Amazon様
エコネットワーク様
⑥ (公財)日本野鳥の会様
⑦帯広百年記念館様
昆虫文献 六本脚様
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「北海道の海鳥」シリーズFacebookページならびにネットショップ開設のお知らせ

2016-12-30 20:26:08 | 海鳥
 4冊目の発行に合わせて「北海道の海鳥」シリーズのFacebookページを開設しました。新刊に関する情報はもちろん既刊の出版後に得られた知見の補遺やボツになった写真、こぼれ話などを紹介してゆきたいと思いますので、既刊をお求めの方含めよろしくお願いいたします。また、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が出版・販売事業を中止したため閉鎖されていた同会のネットショップに代わり、Yahoo上に道東鳥類研究所(我が家の屋号)ネットショップも開設しました。「北海道の海鳥」シリーズはHobby's World様、六本脚様、エコ・ネットワーク様などでもお求めいただけます。皆様の利用しやすい手段で手にとっていただければ幸いです。

「北海道の海鳥」シリーズFacebookページ 

道東鳥類研究所ネットショップ 
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十勝の自然95 フッキソウ

2016-12-05 10:09:05 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
フッキソウ 2015年11月 北海道十勝郡浦幌町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年11月23 日放送)


 まだ昼前というのに、谷間を低くから射る陽光が黄金色に染める一面のススキの穂は、まるで夕方のようです。山あいのわずかな平地に残る草原は、数十年前まで炭鉱とそこで働く人たちの生活が確かにここにあった名残り。不思議な感傷にとらわれながら山奥へ車を走らせていると、枯れ葉を敷き詰めた林の地上に緑色の絨毯のような一角がありました。高さ20cm程度の植物ですが、厚みのある葉は陽の光に照らされて、11月には似つかわしくない艶のある深い緑色をしています。フッキソウの群落です。

 フッキソウは一年を通じて緑色の葉を茂らせることから、繁栄のシンボルとして漢字で「富む」、「貴い」、「草」と書き、吉事、良き門出などの花言葉を持ちます。ところが、多くの図鑑にフッキソウは「ツゲ科の常緑小低木」と説明されています。地を這うような、「草」そのものの外見でありながら「木」とはこれいかに?草と木の区別は厳密なものではないのですが、一般に草は冬に地上部が枯れ、多年草でも地下茎として過ごします。また、木には樹皮の内側に形成層と呼ばれる組織があり、この部分が成長することで年輪になります。フッキソウは実を付けたまま地上で冬を越し、根に近い部分は木質化して年輪らしきものも認められることから「木」になるのです。

 熟すと白くて光沢のある果実にはアルカロイド系の毒が含まれるとされ、食用にはしませんが、アイヌは茎や葉を、婦人科系の病気の薬として煎じて飲みました。また、葉を煎じて便秘や胃痛の薬としたり、風邪の時にキハダの皮と一緒に鍋で煮立て、その湯気を吸い込んだりしたそうです。

 春先、雪の中からいち早く姿を現し、林床を緑に彩ったフッキソウは4月から5月に白っぽい花を咲かせますが、花びらを持たないそれは、エゾエンゴサク、キバナノアマナなどスプリング・エフェメラル(春の妖精)と呼ばれる鮮やかな春植物が咲き競う中ではあまり目立ちません。


(2015年11月22日   千嶋 淳)
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十勝の自然93 冬を待つ水辺

2016-12-01 19:51:13 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
晩秋の湧洞沼 2015年11月 北海道中川郡豊頃町)

(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年11月17日放送)


 麗らかな陽光に誘(いざな)われるように、豊頃町の海岸部にある湧洞沼へ繰り出しました。防寒具を着込むと汗ばむほどの陽気でしたが、収穫を終えた畑や葉を散らした木々の茶色が、白く染め抜かれた日高山脈まで続く風景は、たしかに初冬のものです。

 早春、ミズバショウの花が地表を白く彩ったハンノキ林(りん)も、夏の風が瑞々しいヨシの穂先を震わせた湿原も、今は周囲と一体となってじっと、長い冬の訪れを待つばかり。空の青を映した鏡のような水面には三々五々、水鳥が群がっています。カモの仲間に混じって、クイナの一種オオバンの姿も目立ちます。不器用な潜水を繰り返しては餌の水草をくわえて浮上しますが、近くで待ち構えているヒドリガモに奪われてしまうことも少なくありません。

 寂寥の中に赤く萎れたハマナスの実が点在する草原をかき分け、細波(さざなみ)打ち寄せる湖岸に出ると、数百m沖合に水鳥の大群がひしめき合っていました。魚が好物のカモ類、カワアイサが約1000羽、ごく狭い範囲に密集し、しきりと潜水を繰り返します。それを取り囲んで数百羽のユリカモメが乱舞し、水中へ飛び込みます。水面下にはワカサギか何か、小魚の群れがいるのでしょう。突然の闖入(ちんにゅう)者に驚いた水鳥たちが飛び立つ羽音や飛沫が、長閑な静寂を破ります。

 沼と太平洋を隔てる砂丘に広がる草原へ出る頃には適度な風が吹き始め、猛禽類のノスリがあちらこちらでフワフワと舞い、ネズミを探していました。つい先日までアキアジ釣りの竿が林立した浜は閑散とし、シシャモ漁で賑わった海上は強いうねりを伴い、クロガモやカモメなど、沼とはまた違う海鳥たちが波間を舞っています。冬を待つ湧洞沼の水辺は、思いのほか生命の賑わいに満ちていました。

 それも束の間。沼への道が通行止めとなる12月には水面も固く凍(しば)れ、鳥たちもさらに南へ渡ることでしょう。


(2015年11月16日   千嶋 淳)
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十勝の自然92 ホシハジロ

2016-11-29 22:27:48 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
ホシハジロのオス 背後はオオバン 2015年11月 北海道中川郡豊頃町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年11月16日放送)


 国際的な野鳥保護団体「バードライフ・インターナショナル」が作成する絶滅のおそれのある鳥のリスト、レッドリストに今年、カモの仲間のホシハジロが新たに加わり、驚かされました。ホシハジロは、オスでは赤茶色の頭、黒い胸に灰色の体がよく目立つ中型のカモで、潜水して水草やその種子を食べます。ヨーロッパからアジアまで、ユーラシア大陸に広く分布し、日本でも普通の冬鳥として都市公園の池などで見ることができます。

 ところが、ヨーロッパではこの20年あまりで個体数が30~49%も減ってしまったことから、新たに絶滅危惧種に指定されたのです。激減の決定的な理由はよくわかっていませんが、狩猟や水面のレクリエーション利用、湖沼の富栄養化などにくわえ、地域によっては外来種のミンクによる捕食も影響を与えています。ヨーロッパほどではないものの、日本や韓国を含むアジアの個体群も減少傾向にあります。

 たしかに、十勝では春と秋を中心に十勝川やその周辺の湖沼で割と普通で、15年以上前の湧洞沼では秋に1万羽を超える大群が水面を埋め尽くさんばかりでしたが、最近では多くても数百羽程度のまばらな群れしか見られなくなりました。市街地にありながら少数が子育てしていた釧路市春採湖での繁殖も、20年近く途絶えたままです。これらも世界的な減少傾向の反映かもしれません。

 それなのに日本では依然として狩猟鳥のまま、銃口が向けられています。同様に減少著しく近年、国際自然保護連合のレッドリストにノミネートされたクロガモも、日本では未だに狩猟鳥です。日本のレッドリストは、国内繁殖数が少ない種や昔から希少な鳥は網羅していますが、これら2種のカモのように、最近になって危惧されるようになったものの整備が進んでいません。種の保全を目指すのであれば世界的な傾向に目を向け、それらをすみやかに国内での保護に反映すべきです。


(2015年11月15日   千嶋 淳)
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