All Photos by Chishima,J.
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漁船からの廃棄物に群がるコアホウドリやクロアシアホウドリ、セグロカモメ 以下すべて 2013年10月 北海道十勝沖)
季節がら日中は風の吹くことが予想されたため、午前5時半、うす曇りの東の水平線上に顔を出した赤い太陽を拝みながら出港しました。暗いのと多少波があるのとで鳥はやや見づらく、またオオミズナギドリやカモメ類がぱらぱら飛んで行く程度です。「どこかにたくさんの海鳥がいないものか…」、その想いは雲もほぼ消えて青い海の美しかった水深360mの沖合で叶いました。1隻の底引き網漁船が操業しており、そこからこぼれ落ちたり廃棄される魚を求めて、多数のコアホウドリやクロアシアホウドリ、セグロカモメをはじめとしたカモメ類が群がっていました。餌の魚が見つかると何羽もの鳥が集まり、競い合って食べる様子や特にコアホウドリが賑やかに鳴くのを至近距離で、じっくり観察できました。満腹になったアホウドリ類は水浴びや羽づくろいを経て、力強い助走とともにどこかへ飛んで行き、その多彩な行動は見ていて飽きることがありません。無人島や孤島で繁殖し、それ以外の生涯の大半を海洋で過ごすアホウドリ類でさえ、漁船からの廃棄物という人間由来の餌に大きく依存していることがよくわかる一幕でした。
ほかにはオオセグロカモメの幼鳥が大きなサバを捕えて、苦戦しながら呑みこむ姿や沖合30km以上の海上を飛んでいたタヒバリの小群などが印象的でした。トウゾクカモメも散見され、また今年特に出会う機会の多いオオトウゾクカモメも複数羽を近距離で観察できました。昨年の同時期に確認されたミナミオナガミズナギドリやシロエリオオハムは観察されず、オオミズナギドリの多さと合わせて季節の進行がやや遅れ気味な印象でした。それでもカモ類やカモメ類の種類が増え、1羽だけですがウミスズメも観察されるなど、海上の鳥類相は着実に次の季節に向かいつつあることも感じさせてくれました。
下船後は番屋で今が旬のアキアジ(サケ)のチャンチャン焼きや三平汁、マツカワのお刺身などを頂きながら歓談し、解散後は有志で十勝川下流域に立ち寄り、最近飛来したばかりのハクガンを観察してから帰途につきました。参加、協力いただいた皆様に感謝します。
サバ(マサバ?)を頬張るオオセグロカモメの幼鳥
確認種:マガモ属sp. シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ ハジロカイツブリ コアホウドリ クロアシアホウドリ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ アカアシミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ キアシシギ ハイイロヒレアシシギ ミツユビカモメ ユリカモメ ウミネコ カモメ ワシカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ ウミスズメ トビ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ タヒバリ 海獣類:イシイルカ
オオミズナギドリ
*十勝沖調査は、
NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、
漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。
(2013年10月8日 千嶋 淳)