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春が来た

作家・渡辺淳一氏の逝去と、前立腺がんの神秘

2014年05月18日 | 国際・政治
先月の末、渡辺氏の訃報に接し、やはり僕の予想した病気が間違ってなかったと確認するとともに、同病を患う一人としてやはり落ち込んだ気分に浸った。 氏は自らの病を公表してない、にもかかわらず僕が病名を早い時点で想定できたのは、時折テレビでみる顔面の著しい浮腫み。 この症状は、男性ホルモンの分泌や働きを抑えることで、前立腺がんの増殖を抑制するホルモン療法特有の副作用だからだ。 常に女性を意識してきた氏にとって、かなり辛かったはず。

去年の秋、おそらく最後の作品ではないかと思う「愛ふたたび」を読んで、氏の病名にいっそうの確信を持っに至った。 突然に男性機能を失った高齢の整形科医が絶望と苦悩のどん底で、「別な形で」恋人を満足させられることを知り、愛と自信を取り戻していくというのが本の内容。 そして氏の人相を変えてしまった治療薬のもう一つの深刻な副作用は「薬物による去勢」。 この二つを繋げれば、主人公の医師が渡辺氏本人であることを疑う余地はまったくなくなった。

前立腺がんは進行が遅く、生存率・治癒率が高いといわれるが、個人差も大きい。 僕に例をとれば、病院のミスで癌を見落とし、すでに手遅れで摘出手術は諦め、ホルモン療法を始めたのが18年前の1996年。 PSA値が正常範囲まで下がり、根治したかと喜んだが、数値は徐々に再上昇を始めた。(薬に耐性ができて効かなくなる、この治療法の宿命) 2007年当時最新の放射線治療「IMRT」を東北医大で受け、PSA値は正常に戻る。 しかし2年後から再上昇。

その後5年間の経過観察を経て数値が上限まで達し、骨シンチ・MRI・PETなどの検査で「転移」のないことを
確認して、今年の4月からホルモン療法を再開。 ただし今回の治療法は数値が下限に達したら中止し、何か月か後に上限に達したら再開する「間欠療法」を採用した。 7年間休んでいた薬は劇的に効き、1カ月で1/4まで減少したが安心してない。 ここまで翻弄されると、最後はこの病気で死ねるのだろうかという疑問さえも抱くこの頃だ。

ざっと濃縮して僕の経緯を記したが、経過観察中にも「放射線ホルミシス」や「ざくろエキス」なでを試したりしてそれなりに時間稼ぎもした。 それにしても前立腺がんは分からないことが多すぎ、気まぐれでミステリアス。 医師でもあり、女性扱いに長けていた渡辺氏は、こいつとどう付き合って逝ったのだろう?。 2年前に亡くなった同じ病気仲間の米長邦雄棋聖は、最後まで男の欲望とプライドを優先して寿命を犠牲にしたと聞くが、この辺のドラマを氏にはぜひ本にして残して欲しかった。  



   



 



  

 



 


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