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「ギムリー・グライダー」 エア・カナダ143便を救った「ラムエア・タービン」

2012年02月10日 | 航空機
「ギムリー・グライダー」とは、民間航空史に残る極めて稀有な事故を起こした旅客機の通称。 1983年7月23日、エア・カナダ143便(ボーイング767-200・乗客乗員69名)はケベック州・モントリオールから、オタワ経由でアルバータ州・エドモントンへ向けて飛行中、高度41000フィート(約12000m)上空で燃料切れを起こした。 エンジン停止後はまさにグライダーの如く滑空し、マニトバ州ギムリーにあったカナダ空軍基地の滑走路跡に無事着陸した。 燃料の量を計測する機器の故障や、ヤード・ポンド法とメートル法の混同によるヒューマンエラーが事故の主因。

B767ー200は1981年に就航した中型双発旅客機、グラスコックピットを装備した「ハイテク機」と呼ばれ、自動着陸を含むオートパイロット機能を持つ。 当機の給油は「燃料搭載情報システム」(FQIS)を使用して行うが、事故当時のFQISは異常を示しており、タンク内の燃料量は燃料計測棒による直接測定を行っている。 事故の直接の原因となる過失はモントリオールからエドモントンまでのフライトに必要な給油量の計算時に起こった。 当時のエア・カナダではヤード・ポンド法からメートル法への移行中で、しかも事故機がメートル法を用いる最初の機体であったことが事故の背景にある。

必要な燃料量のを算出するまでは正しかったが、モントリオールでの燃料残量をリットルからキログラムに換算する際、誤ってリットルとポンドの換算係数を使用してしまった。 その結果として22300kg必要な燃料が実際には10115kgしか搭載されず、到底足りる量ではなかったが、給油後事故機の航法装置には燃料搭裁量として22300kgがインプットされてしまった。 経由地のオタワを発ってオンタリオ州・レッドレーク上空を飛行中、コクピットの警報装置が4回警告音を発し、間もなく2回目の燃料圧力警告が鳴ったため、機長はカナダマニトバ州・ウィニペグの空港へのダイバード(目的地変更)を決断する。

しかしそれから数秒後に左エンジンが停止、続いて右エンジンも長い警告音を発して停止し、コクピットは一瞬の静寂に包まれるが、この時点での高度は28000フィート(8534m)でかなり降下していた。 全エンジンの停止は多くの計器、通信機器、操縦に必要な油圧システムなどが止まり操縦不能になることを意味し、さらにAPU(補助動力源)も燃料がなくては動かせない。 そこで登場したのが「ラムエア・タービン」、これは大型の航空機に装備される風車型の非常用動力源で、全エンジンとAPUが停止すると自動的に機外に飛び出し、機体に当たる気流で風車を回転させ油圧ポンプと発電機を稼動させるなど、飛行に必要な最低限の動力を供給する装置。 これが69名の生命を救うことになる。 

ピアソン機長は最良の効率が得られる220ノット(407km/h)で機体を滑空させ、副操縦士クインタルがウイニべグまで到達できるかどうかを試算したが、辿り着ける可能性はゼロであることがはっきりする。 そこで彼は以前に勤務したことのあるカナダ空軍のギムリー基地に着陸するしかないと判断し、機長の了解を得る。 やがて滑走路が視界に入ってきたが高度がかなり高すぎる、機長は空気抵抗を増し高度を下げるため、小型機で行うフォワードスリップ(機体を斜めにして降下する方法)の手法を使って、何とか着陸に成功する。 前輪が固定されてなかったため、前傾姿勢での胴体着陸となリ軽傷者が出たものの、61名全員が助かる。 それにしても近代技術の粋を集めたハイテク機が、昔ながらの風車式動力装置に救われたところに、何か教訓めいたものを感じてしまう事故。    


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-05-06 15:50:40
もう助からないゾ

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