カキぴー

春が来た

「予期せぬとき、予期せぬせぬ形で・・・」 プレゼントの極意

2011年08月05日 | 日記・エッセイ・コラム
話は20年以上も遡るが、ヨーロッパ旅行の最終地パリでの出来事。 僕より一回り年下のH君が、どうしても買って帰りたいワインがあるので付き合って欲しいといわれ、名の知れた専門店の地下深くにある石がむき出しの広大なセラーで、彼が時間をかけて探し出してきたのが1960年代の「シャトー・マルゴー」。 それから暫らくして彼は離婚しその後再婚したが、その相手が実はマルゴーの贈り主で、ビンテージは彼女の誕生年だったことを、二人の間に子供が生まれてから知らされた。 手間ひまかけて拘った1本のワインが、彼女の心を揺り動かしたのは確か。

ワインをプレゼントに使った映画で、記憶に残るシーンがあった。 作品は1981年公開のサスペンスドラマで、僕の好きな監督シドニー・ポラックが手がけたアメリカ映画「スクープ」。 「ポール・ニューマン」が女性記者の家を訪ねるとき持参するのが、心憎いばかりにラッピングされたワイン。 さりげなくグランドピアノの上に置くのだが、ドアを入った時点からあらかじめ計算し尽くされていると思われる行動を、悟られずに振舞う演出が際立った。 酒に関係するビジネスをしてる主人公だから、それなりの物を選んだに違いない、だからこそ立派な木箱などに入れず、ラッピングだけでぶら下げてきたところがグッド・センス。 

「プレゼントの効果は、予期せぬとき・予期せぬ形で貰ったときの衝撃に尽きる」 と言ったのは「伊丹十三」氏だったと思うが、サプライズは確かに物を贈るときの大事なコンセプトの一つ。 プレゼントを予告すれば、相手の女性は心待ちにするものと決めてかかり、早くからのアナウンスメントを常としている男を知っているが、待ち時間が長くなると期待値も高まり、現物との落差が大きくなることもあってか、その見返りは限りなく低かった。 プレゼントが「教養の集大成」とまでは言わないが、ある種の頭脳作業であることは確かで、送り主に下心があれば尚さらのこと策を練らなければ、成功はおぼつくまい。

今年の誕生日に僕が貰ったプレゼントで嬉しかったのは、或る女性からのもので、一品ではなく詰め合わせ。 メインはイタリアの「ボディー・ミスト」と、車のポケットやクローゼットに吊るして香りを楽しむ「アロマ・ドク 」。 とくにミストの方はオーデコロンよりさらに微香性で、幾つかのの香料や果実エキス、ヒアルロン酸などが成分、すっかり気に入って今年の夏は忙しく愛用している。 女房への配慮も忘れず鎌倉の老舗で作る「和生菓子と小鳩豆楽」が入っており、さらに気の利いたメッセージに加え、なぜか紀伊国屋のビーフカレーなどが入っているあたりは、贈り主自身もプレゼントを楽しんでいる感じ。

貧しいがとても仲の良い若夫婦が居て、明日がクリスマスなのにプレゼントを買うお金がない。 二人には誇るべき宝物が二つあった。 妻デラの長い髪の毛と、夫ジムの金時計。 デラは髪の毛を売って時計鎖を買い、ジムは時計を売って髪に飾る櫛を買う。 二人は互いのために宝物を台無しにしてしまうのだが、この短編の作者の「О・ヘンリー」は、「贈り物をするすべての人の中で、この二人が最も賢者だった」 と締めくくっている。 この短編は言うまでもなく 「賢者の贈り物」。 最も賢者だったと言う意味は? さまざまな考え方があるだろうが、「プレゼントの良し悪しは、あとの結果が全て」 と解釈してみると、やはりその極意を、極めてみる必要がありそう。 
    


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1 コメント

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Unknown (crescent)
2011-08-09 22:46:01
こんばんは。
主人は気は優しいのですが、プレゼントやサップライズ!などの
気の利いたところがまったく欠如しています(涙)
何度か結婚記念日にはお花が欲しいとか、あなたの選んだプレゼントが欲しい、と言ったのですが、僕はセンスがないから(確かに…笑)と、いつも一緒にお買い物に行くことになります。
なんとかオシャレなプレゼント方法、ご伝授願えないでしょうか?

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