21世紀の徒然草

新しいブログ「がん哲学ノート」もぜひご覧ください。http://www.tobebook.net/blog/

第91回「21世紀の徒然草」

2009年06月16日 | Weblog
人生の 2 hit

 先週は、親友の工藤正俊先生(近畿大学医学部教授)が会長を務められた、第45回日本肝臓学会総会、第3回国際肝がんシンポジウムに参加した。日進月歩の肝がんの研究・診断・治療について学んだ。日々勉強である。特に分子標的治療については、時代の趨勢である。若き日に(25年前)学んだ New YorkのAlbert Einstein 医科大学の同僚とも再会した。
 肝がんについては、山極勝三郎 (1863-1930)の「Hepatoma」の命名、吉田富三 (1903-1973) の「肝がん創成」(1932) と日本国は世界的な貢献がある。来年の第99回日本病理学会総会では、「病理学」の100年を振り返って「歴史的な肝がん」のシンポジウムを企画する予定である。
 20世紀は「がんを作る」時代であった。21世紀は「がんを遅らせる」研究で再び、日本国は世界をリードする時であろう。「がんとの共存」の時代における「天寿がんの実現」でもある。まさに「温故創新」である。
 また、京都大学医学部では「遺伝カウンセラー・コーデイネーターユニット」の主催で「がん哲学&がん哲学外来—深くて簡明。重くて軽妙、情熱的で冷静−」と題して、学術講演の機会が与えられた。鴨川のほとりの風情は独特な情緒を感ずる。落ち着いて「哲学」するには、相応しい場所である。若き日(35年前)、京都で「人生の邂逅」が与えられた。これが、今の筆者の「新渡戸稲造・南原繁」に繋がるとは、人生不思議である。
 今週は、筆者が理事長を務める、第15回日本家族性腫瘍学会が開催された。「遺伝性のがん」について特化した、ユニークな学会である。「遺伝とがん」は、人間にとって、ますます重要なテーマとなることであろう。筆者は「発がんの 2 hit」を提唱 (1971)の「がんの遺伝学の父」と呼ばれる、Knudson 博士 (1922-) (Philadelphia) に師事し、はや20年の歳月が流れた。まさに筆者にとっての「人生の 2 hit」であった。
 昨年、札幌での講演をまとめた小冊子「『がん哲学』に学ぶ―クラーク精神の継承:新渡戸稲造・南原繁―」が秋山財団のブックレットとして送られて来た。注付きの、非常にコンパクトにまとめられた力作で大いに感激した。