21世紀の徒然草

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第98 回「21世紀の徒然草」

2009年10月13日 | Weblog
「チヤフル (Cheerful)」な態度、顔付き:暇げな風貌

 この度、第一回「がん哲学交流会」が開催された。「がん哲学外来」を訪れた人の自発的な会である。スタッフとして「がん医療の隙間を埋める」働きになれば幸いである。興味あることに、「がん哲学外来の場」と「がん哲学交流会の場」では、同じ人間でも、雰囲気、表情が変わる。「多様性の重視」と「多様性の場の提供」の必要性を痛感した。これが「自発的覚醒」の瞬間とも言えよう。

 最近、『がん哲学』の朗読CDの要望が出てきた。驚きである。今年は、三浦綾子の死後10周年とのことである。『塩狩峠』に引き続き『道ありき』の朗読CD制作が進められているとのことである。「ボランティア精神が旺盛」で、「気品のある声」、「優しい心」を兼ね備えた朗読者の出現が楽しみである。既に、「3条件に叶っているかどうかは自信ありませんが、先生の作品の朗読者を捜していらっしゃるなら、私でお役に立てるとうれしいです。」との嬉しい申し出があった。感謝である。

 今日、「がん哲学外来の働きが耐え難い試練に会われている方々の脱出の道となりますように。」との暖かい声援を頂いた。大いなる励ましである。丁度、休日の昨夜、観たTBSの「Jin-仁-」(9:00pm)の源流に流れるテーマは「耐えられないほどの試練は会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます」(コリント人への手紙 第一 10章13節)の様に感じた。

「多くの賜物をお持ちになっている先生をみんなに貸してくださる奥様に心から感謝です。犠牲を払ってくださっているところが多々あるのですよね。なかなか出来る事ではないです。先生のお働きは奥様の理解と協力によって成り立っていることを心から感謝していると、お伝えください。」これも、大いなる慰めの言葉である。まさに、「チヤフル (Cheerful) な態度、顔付きを以て人に接する」という「新渡戸稲造の教育精神」(矢内原忠雄)の実践でもある。 

 この連休は、wifeと川越の蔵通り→時の鐘→成田山→喜多院→中院→クレアモールをゆっくりと、久しぶりに「落ち着いて」遊歩した。「心を廣くもて」、「精神的レベルを高めよう」、「教養を深くしよう」、「眼界を廣くしよう」という、「新渡戸稲造の努力」を静思する今日この頃である。

第97 回「21世紀の徒然草」

2009年10月05日 | Weblog
プロフェショナルの「心得と風貌と胆力」

 第68回日本癌学会学術総会(横浜)に出席した。全体のテーマは「科学の躍動をがん克服へ」であった。まさに「専門家でさえ、日々の努力を怠る時に、専門家とは言えなくなる」日進月歩の癌研究を実感した。

 筆者は、学会のメインテーマそのものである「科学の躍動をがん克服へ」(Exciting science toward cancer control) の特別講演(杉村 隆、飯島澄男、寒川賢治、田中耕一)の司会を仰せつかった。杉村 隆先生(国立がんセンター名誉総長)の演題「がん研究:喜びと悲しみ、満足と失意、計画と偶然、現状と希望」の司会の任は、癌研究者として大変光栄なことであり、且つ大いに緊張もした。ご講演を通して、癌研究者の「心得・風貌・胆力」を改めて、心に深く刻んだ。

「癌研究者の心得」
 世界の動向を見極めつつ、歴史を通して今を見ていく「研究の学術的重要性・妥当性」
 理念を持って現実に向かい、現実の中に理念を問う「研究の独創性・革新性」
 自分のオリジナルで流行を作れ!「研究の波及効果・普遍性」
 杉村 隆先生の恩師:中原和郎(1896-1976:癌研所長、国立がんセンター総長)の「尺取虫運動:自分のオリジナルポイントを固めてから後ろの吸盤を前に動かし、そこで固定して前部の足を前に進める。かくていつも自分のオリジナリティーを失わないですむ」の精神を改めて学んだ。

「癌研究者の風貌」
 自分の研究に自信があって、世の流行り廃りに一喜一憂せず、あくせくしない態度
 軽やかに、そしてものを楽しむ。自らの強みを基盤とする。
 学には限りないことをよく知っていて、新しいことにも、自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力する
 まさに「深くて簡明、重くて軽妙、情熱的で冷静」である。

「癌研究者の胆力」
 段階ごとに辛抱強く、丁寧に仕上げていく。最後に立派に完成する。
 事に当たっては、考え抜いて日本の持つパワーを充分に発揮して大きな仕事をする
 なくてもよいものにしばられるな。Red herringに気をつけよ!

 4人の講演者に共通する姿勢は「潜在的な需要の発掘」と「問題の設定」を提示し、「新鮮なインパクト」を与える気概・気迫であろう。田中耕一氏(ノーベル賞受賞者)のご講演は初めて聴講する機会でもあり、まさに「新鮮なインパクト」であった。