21世紀の徒然草

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第97 回「21世紀の徒然草」

2009年10月05日 | Weblog
プロフェショナルの「心得と風貌と胆力」

 第68回日本癌学会学術総会(横浜)に出席した。全体のテーマは「科学の躍動をがん克服へ」であった。まさに「専門家でさえ、日々の努力を怠る時に、専門家とは言えなくなる」日進月歩の癌研究を実感した。

 筆者は、学会のメインテーマそのものである「科学の躍動をがん克服へ」(Exciting science toward cancer control) の特別講演(杉村 隆、飯島澄男、寒川賢治、田中耕一)の司会を仰せつかった。杉村 隆先生(国立がんセンター名誉総長)の演題「がん研究:喜びと悲しみ、満足と失意、計画と偶然、現状と希望」の司会の任は、癌研究者として大変光栄なことであり、且つ大いに緊張もした。ご講演を通して、癌研究者の「心得・風貌・胆力」を改めて、心に深く刻んだ。

「癌研究者の心得」
 世界の動向を見極めつつ、歴史を通して今を見ていく「研究の学術的重要性・妥当性」
 理念を持って現実に向かい、現実の中に理念を問う「研究の独創性・革新性」
 自分のオリジナルで流行を作れ!「研究の波及効果・普遍性」
 杉村 隆先生の恩師:中原和郎(1896-1976:癌研所長、国立がんセンター総長)の「尺取虫運動:自分のオリジナルポイントを固めてから後ろの吸盤を前に動かし、そこで固定して前部の足を前に進める。かくていつも自分のオリジナリティーを失わないですむ」の精神を改めて学んだ。

「癌研究者の風貌」
 自分の研究に自信があって、世の流行り廃りに一喜一憂せず、あくせくしない態度
 軽やかに、そしてものを楽しむ。自らの強みを基盤とする。
 学には限りないことをよく知っていて、新しいことにも、自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力する
 まさに「深くて簡明、重くて軽妙、情熱的で冷静」である。

「癌研究者の胆力」
 段階ごとに辛抱強く、丁寧に仕上げていく。最後に立派に完成する。
 事に当たっては、考え抜いて日本の持つパワーを充分に発揮して大きな仕事をする
 なくてもよいものにしばられるな。Red herringに気をつけよ!

 4人の講演者に共通する姿勢は「潜在的な需要の発掘」と「問題の設定」を提示し、「新鮮なインパクト」を与える気概・気迫であろう。田中耕一氏(ノーベル賞受賞者)のご講演は初めて聴講する機会でもあり、まさに「新鮮なインパクト」であった。