21世紀の徒然草

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第96回「21世紀の徒然草」

2009年09月22日 | Weblog
新しい視点からの社会習慣

 第1回「ips細胞を用いた癌研究について落ち着いて考える会」(京都)は盛会のうちに終えた。「時代の要請」に応えて継続的に第2回も開催される予定である。「新しい視点から俯瞰した次世代の発癌研究」が期待される。「20世紀は癌細胞を創る時代」であった。まさに山極勝三郎(1863-1930)・吉田富三 (1903-1973) を生んだ日本国は「化学発がんの創始国」である。「21世紀は癌細胞のリハビリテーション(リセット)」で再び世界をリードする時代であると予感するのは筆者のみであろうか? 「癌も身の内」(吉田富三)である。

 翌日は「家族性腫瘍の診療とサポート体制を考える」シンポ(大阪)に赴いた。筆者は「病気は単なる個性である」と題して講演した。「遺伝性がん」の現実にとっては困難な提言であろう。しかし、人間は、あらゆる局面において「落ち着いて」「個性・多様性」を尊重する「社会習慣」を養わなければならないと、つくづくと思う今日この頃である。「先生のお話を聞きながら、先生が大先輩たちの言葉を患者さんに紹介されているように、私も先生の言葉を患者さんたちにお話しするようになりたいと心から思いました。患者さんの感想も素晴らしかったですね。」の言葉には大いに励まされた。

 順天堂がんプロフェショナル養成の第2回チーム医療合宿研修会も無事終了した。現代、医療者の「真実な対話」が求められている。これからの医療は患者からの方向性であり、ここにも逆方向性の流れのips細胞のコンセプトが生きる。

 今年も「新渡戸・南原賞」授賞式(学士会館)が行われた。年々、格調も高くなって来ている。「新渡戸稲造・南原繁」の「スケールの大きい、愛情溢れた、深い見識と品性」を兼ね備え、「賢明なる寛容性」を持って「静思から得られた結論」を語る「存在」の再来の時ではなかろうか。「集団生活であったが集団行動ではなかった」(吉田富三)と「多様性を重視」するのは「顕微鏡で癌細胞を見る」病理学者にとって当然の帰結である。「新渡戸稲造・南原繁・吉田富三 外来」(柏市民新聞 2009年9月11日付)のタイトルの記事には筆者も正直驚いた。これも「時の徴」であろうか?

 先週は「Japanese-German Cancer Workshop」でドイツのハンブルグを訪れた。ハンブルグは約20年ぶりである。日の出、日の入りの悠々とした、広々としたElbe川を眺めながら「歴史の動脈」を静思する時であった。