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ブロックバスターが支えた成長

『医薬品業界』より

10年前と現在の業績を比べてみると、おもしろいことがわかる。武田薬品は99年に売り上げ9231億円だったのが、09年には1兆4666億円と、10年でほぼ5割も売り上げを伸ばしている。同じようにエーザイは3025億円が8032億円と2倍半以上の伸びを記録している。

それに対して塩野義製薬は4003億円が2785億円と3割も売り上げを落としている。田辺製薬と三菱ウェルファイドは合併する前と合併後はほとんど売り上げは変わらない。また、第一三共も合併前と売り上げは変わらない。これらは何を意味しているのか。

ブロックバスターの有無である。

ブロックバスターというのは単品で世界売り上げ1000億円を超える医薬品のことで、特許で守られているだけに収益独占となる。もともと医薬品は利益率が高いのに加え、1000億円単位で売りまくれば、利益率5割から7割に達するものもあるから、コ度ブロックバスターを出せれば爆発的に売り上げも利益も上がる。

この10年間、日本の製薬メーカーがそのブロックバスターを続出させた。

武田薬品は、抗潰瘍薬のタケプロン、糖尿病薬のアクトス、高血圧治療薬ブロプレス、前立腺ガン治療薬リューブリンと4つのブロックバスターを輩出した。ピーク時の世界での売り上げがタケプロンが4200億円、アクトスが3300億円、ブロプレスが3000億円とすさまじいものだっただけに、売り上げ1兆5000億円への成長は当然の結果だった。

10年で売り上げを2倍以上にしたエーザイも同じ。アルツ(イマー治療薬のアリセプトが2000億円、抗潰瘍薬パリエットが2500億円とブロックバスター化し、この2品目で売り上げの半分以上を占めたのだから、単純に2倍になるのも当たり前。むろん、両社ともブロックバスターだけに依存していたわけではないが、高成長の原動力となったのは事実。

第一三共の場合はちょっと事情が違う。合併前と現在の数字がほとんど変わらないからブロックバスターが出ていないのかと思われるが、実は合併前の三共では高脂血症薬のメバロチンが売り上げ2000億円級のブロックバスター化していた。03年にピークを迎えたメバロチンは、06年に特許が切れると同時にジェネリックが殺到し、大幅に売り上げを落とした。現在では500億円程度しかない。ということは、ブロックバスターがなくなった差し引き1500億円分を穴埋めして現在の数字になっているわけで、健闘しているというところ。

田辺製薬と三菱ウェルファーマがそれぞれ単独の時と合併した後の数字が変わらないのは、ブロックバスターを出せなかったという事情もあるが、この両社に関してはまず合併ありきで単に数字合わせを優先したためといえる。つまり合併効果はこれからの努力次第ということだ。

同じように塩野義製薬が10年で1000億円もの売り上げ減少を余儀なくされているのは、この間にブロックバスターが出せなかった、どころかほとんど新薬を出せなかったのが理由。抗生物質の老舗大手だったが、それに甘んじて危機感が不足していたのだろう。ただ、同社では現在、高脂血症薬クレストールが4000億円規模のブロックバスター化しており、高収益路線に乗っている。ただ、クレストールは導出品(海外企業に販売を委ねロイヤリティを受け取るもの)だけに、売り上げ面での上乗せが小さいのが惜しいところ。

今後の危機は武田薬品やエーザイの高成長を支えてきたブロックバスターの特許が相次いで切れる2010年問題である。
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