みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

育和の森

2017年05月22日 | 俳句日記

約六十年間、福博の街に威容を誇ってい
た九州電力の本社が、私が地方巡業して
いる間に建て替えられていた。
周囲のビルの谷間も、それまでに増して
緑が目立つようになっていた。
本社ビルと隣のビルとの間に、「育和の
森」という植林された小径があった。

もともと福岡市は、都市の緑化では先進
都市である。
半世紀前の名市長として名高い、進藤一
馬氏が「緑進会議」と言う超党派の緑化
推進団体を起こし、力を入れたからだ。


この件を発議する議会で、エピソードに
残るヤジがあった。
福岡市の中心部であった天神は「福岡の
顔である」と趣旨説明を読み上げると、
すかさず郊外を選挙区とする議員から、
「じゃあ、我々の地域は、ケツか!」と
ヤジが飛んだ。

いささか品位に欠けたヤジだが、言わん
とする処は理解出来る。
要は、我々の地域に対する所見もお待ち
なんでしょうね!と言う、問いかけなの
である。

「じゃあ、働くな!」などとは大違いで
ある。議員、特に党人派の地方議員さんは、人々や地域への親愛があってこその
議席なのである。
だから時折、品格を忘れたヤジも飛ばす
が、これは愛嬌と言ってもいい。

だが「信」ならぬ「愛なくば立たず」。
都会議員出身の議員とは思えないヤジで
あった。

福岡も、ここ二、三日、明らかに夏とな
った。
都心部に緑が豊富にあるのは、市民の健
康の為にも、民生安定上も結構なことで
ある。
九電さんも、考えてくれたもんだ。

しかし、折角の新緑のプロムナード(育
和の森)を通り抜けるには、夏(げ)入りし
た日差しにいちだんと照り返る青葉に、
まなこを顰めながらの苦行があった。

〈行き交うも 顰み目の 夏の小径〉放浪子

5月22日〔月〕快晴
いよいよ東北に帰る準備に入る。
しばらくは、また九州とお別れだ。
人間至る処、青山ありで放浪した身、
慣れてはいる。
とはいえ、狭い日本のこと。
少々、住み飽いた。